淫美な虜囚

589 弄ばれる肉人形⑤

　荒縄で四肢を背中でひとくくりに緊縛され、畳の上に転がされた、生身のラブドール、翔。

　あちこちに鞭の跡の残る肌は、すっかり汗ばみ、黄金色に光っている。

　ある意味その姿は芸術作品だ。

　翔は、もとより絶世の美青年で、スタイルもいい。

　ルッキズムの頂点を極める、誰しもが憧れる外観を有している。

　その美しい男が、全裸に剥かれ、世にも卑猥な格好に拘束されて、興奮状態の男性器をさらけ出している。

　完全に人生の勝ち組に見えた翔が、今はどん底に落とされ、凌辱の限りを尽くされているのだから、僕としても、人生で初めてといっていいほど、エキサイトせざるを得ないのだ。

　そしてこの地下世界の王者ともいえる獄卒は、そんな僕の邪心を読み取ったかのように、まったくもって、容赦がない。

　緊縛しただけでは飽き足らず、柔らかい髪の毛をつかんで翔の顔を仰向かせると、その口にゴルフボールくらいのサイズの黒い球体を噛ませたのである。

　どうやら球体はゴムでできているらしく、左右にベルトがついている。

　獄卒は翔の口にボールを押し込んだままベルトを後頭部で留め、そこに四肢を縛った縄の余りを引っ掛けた。

　縄が搾られると、翔の顔が首ごと上向き、更には上半身の反りが大きくなる。

「なるほど、口枷ボールか。これは本格的なSMプレイになりそうですね」

「でも、ここは地下の密室でしょう？　大声を出されてもなんの支障もないはずなのに、どうして口枷を？」

「口枷は何も悲鳴を押し殺すためだけにあるのではありませんよ。あれを咥えさせられること自体が、M男にとってはなによりの屈辱、つまり”ごちそう”になるわけですし、しかも、
+ああして背後の縄の結び目と連結することで、裸身をより過激な逆エビ状態に保つことができるのです。あのまま吊り上げれば、翔さまはペニスを真下に向け、乳首を正面に突き出すという、世にもふしだらな格好を取らされる。それこそ、観客全員が、今の翔さまに望む体位ではありませんか？」

　陽の説明に、僕の喉がごくりと鳴った。

　早く、見たい。

　あの体位のまま、天井から縄で吊るされる、猥褻きわまりない、無抵抗な翔の痴態を…。