淫美な虜囚

ヤミイ

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562 淫蕩の拷問部屋⑥

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 扉の向こうに現れたのは、広大な和室である。
 畳敷きの空間が、ずっと奥まで広がっているのだ。
 正面が白い壁で、左右が屏風絵を施した襖になっている。
 それにしても、この妖しい雰囲気はなんだろう?
 光度を落とした照明は全体的に赤っぽく、部屋の隅までは届いていない。
「なんだか、気味が悪いわね」
 僕の股間を右手で握りしめ、左手で自分の肩を抱いて、姉さんがつぶやいた。
「それに、なに、あの絵」
 その言葉の意味は僕にもすぐに分かった。
 左右の襖に描かれている襖絵のことである。
 妙に肌色の多いその二輻の絵の図柄は、どうやら春画のようなのだ。
 しかも、これから始まるショーの内容を暗示するかのように、絡み合っている人物は、男同士ときている。
 モデルは歌舞伎役者だろうか。
 左側の絵では、着物の前をはだけたふたりの男が抱き合い、接吻しながら剥き出しの性器を押しつけ合うという、いわゆる兜合わせの構図である。
 ふたりの手は互いの胸元に滑り込み、乳首を弄り合っているようだ。
 右側の襖絵は更に過激で、広げた着物の上に筋骨隆々とした男がふたり重なり合い、お互いの股間に顔を埋めている。
「男と男のシックスナインの春画なんて・・・。こんなの見るの、初めてだわ」
「まあ、中学や高校の美術の教科書には載せられないでしょうね」
 目を丸くする姉さんに、陽がくすっと笑いかけた時、
「ようこそ。選ばれた皆さま」
 どこからか、あの司会者の声が聴こえてきた。
「これから始まる秘密ショーは、リアルタイムですべての会員様に配信される予定です。ただし、実際に現場に立ち会い、時にはショー自体に参加することも可能な資格を有するのは、先ほどのイベントの優勝チームだけ。チームの四人の方々には、そのための準備もしていただきました」
「私たちも参加できるんだって」
 姉さんの指の力が強くなり、僕はただでさえ勃起した陰茎を搾り上げられて小さく声を漏らしてしまう。
「ショーはいくつものパートに分かれていて、そのたびに場所を変えていきます。内容はどんどん過激になり、最後には、皆さまの聖なる生贄である翔さまは命を落とすやもしれません。もっとも、仮にそうなっても、これはあくまで会員制の秘密ショーなので、そのことが外部に漏れる心配はないわけなのですが」
 鼓動が高まった。
 いくつものパートに分かれたショー。
 だんだん過激になるその中身。
 最後には快楽の中で命を落とす翔・・・。
 楽しみだった。
 しかも、僕らもそこに、参加できるのだ。
「それでは、始めましょう。まずは第一部。お待たせしました。さあ、翔さまの登場です」
 司会者の言葉が終わると同時に、左手の襖が音もなく開き始めた。
「え? やだ・・・」
 その瞬間、姉さんが、息を呑むのがわかった。

 
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