淫美な虜囚

308 共有される裸体⑫

　快感は時として、それを与えてくれる対象に疑似的な愛情を抱かせる。

　たとえそれが初対面の相手であっても、だ。

　少なくとも、今の僕はそうだった。
　
　抱き合った裸体の間で陽の竿に押し潰され、扁平になった僕の”男の根”。

　そこから湧き上がる得も言われぬ疼きが、陽という青年をひどく魅力的に見せていた。

　さっきまでは、どこといって特徴のない、平凡な外観の若者という印象しかなかったにもかかわらず、である。

　それは、陽のほうも同じだったのかもしれない。

　両手で僕の頬を挟むと、

「好き…」

　小声でいきなりそうささやいてきたのだ。

　胸が高鳴り、僕は陽の背中に回した腕に力を籠めた。

　思えば、翔や姉さんには、言われたことのない言葉だった。

　考えてみれば、当然だ。

　あのふたりは、僕のことを、賠償金の代わりに買われた性奴隷としか思っていないのだからー。

　位置を調節して、乳首と乳首を触れ合わせた。

　乳頭同士が正面から当たるようにしておいて、ぎゅっと胸で押し潰す。

　更に上半身で円を描くと、トキントキンに尖った乳首同士が互いを弾き合い、

　－ｱｱｱｯー

　－ｱｱﾝｯー

　僕らは同時に仔犬のように鳴き、次の瞬間には、その勢いで互いに唇を押しつけ合っていた。

　－ｽｷ…ー

　陽がうわ言のように言い、僕の上唇を舐めてくる。

　-ﾊﾌｳ…ー

　気持ち良さに、僕は本能的に腰を振る。

　ｸｲ､ｸｲ､ｸｲ…。

　こりこりこり…。

　下腹と下腹の間で密着し合った硬い筋肉の”支柱”同士をこすり合わせたのだ。

　その時になって初めて、僕は陽が僕や翔と同じく、陰毛を剃っていることに気づいた。

　道理で気持ちがいいはずだった。

　まっすぐ勃った二本の肉竿の密着し合う部位の表面積が最大になるよう、上下左右に下半身を動かすと、

　－ﾁ､ﾁﾝﾁﾝ…ー

　陽が甘い声で啼いて、僕の唇を舌で割ってきた。

　その舌に吸いつこうとしたけれど、相手のほうが一枚上手だった。

　自分の舌で僕の舌を誘い出しておいて、陽がやおら唇を窄めて来たのである。

　ﾆｭﾙｯ。

　－ｱﾝｯ､ｱｱﾝｯー

　吸い出されたのは、僕の舌のほうだった。