淫美な虜囚

ヤミイ

文字の大きさ
上 下
13 / 653

12 調教①

しおりを挟む
 天野翔の発表に、再び居間に集められた一同はどよめいた。
 
 特に天野家側の弁護士には寝耳に水だったようで、

「その程度で本当によいのですか? 泰輔さまにはなんとご報告を?」

 そう翔に詰め寄る始末だった。

「父には僕からちゃんと話しておく。だって考えてもみたまえ。巧君はまだ16歳なんだよ。そんな将来のある彼に、1億以上の賠償金を背負わせて、君は人間として平気なのかい?」

 翔にそうやりこめられると、さしもの弁護士もひと言もなかった。

 翔の語る言葉は正論であり、実際に被害に遭った彼の祖父を除けば、誰にも反論できない種類のものだったからである。

「ということで、巧君には罪滅ぼしに、うちの会社で働いてもらうことにします。もちろん、大学を出るまではアルバイトということでかまいません。しばらくは、僕の秘書代わりとして、祖父の身の回りの世話などをやりながら、仕事について学んでもらおうと思っています。まだ大企業とまではいきませんが、うちの会社は今伸び盛りです。株価の上昇はもとより、海外からの引きもたくさんあります。巧君が社会人になる頃には、きっと彼も正社員として胸を張れるような会社に成長していると思います」

 立て板に水の翔の弁舌に、僕の両親などはすっかり涙ぐんでいるほどだった。

 けれど、僕の心は晴れなかった。

 綺麗ごとを並べ立ててはいるが、翔の本心は別にある。

 彼はこの僕を、自分だけの”玩具”にしようと目論んでいるのだ。

 ”性奴隷”という、この令和の時代、およそあり得ない存在に…。

 だが、この場から逃げ出したいという思いと、それに反比例する妙に甘酸っぱい期待感に、僕は混乱するばかりだった。

 はっきりいって、奴隷として自由を奪われるのは嫌だ。

 でも、あの時のあの痺れるような快感…。

 あれをもう一度味わいたいという気持ちも否定できなかった。

 濡れた翔の亀頭が、僕の包皮の口を塞ぎ、中へ…。

 そして…その後、翔の滑らかな下腹に付着した白いミルクを、この舌で…。


 翔に疑いの目を向けていた人物が、僕以外にもうひとりいるとわかったのは、会が解散になった直後だった。

 翔と弁護士の乗る黒塗りの外車が遠ざかっていくのを玄関口で見送りながら、ふいに隣に佇んでいた佐代子姉さんが耳打ちしてきたのである。

「巧、さっき、彼と何をやってたの? ずいぶん長い間、ふたりきりで居間にこもってたけど」

「な、何って、は、話し合いに決まってるじゃないか」

 僕は水彩画のように姉の線の細い美しい顔を眺め、どぎまぎしながら答えた。

 姉は「何話してたの?」ではなく、「何やってたの?」といきなり訊いてきたのだ。

 僕らがなんらかの行為に及んでいたことにまるで気づいているような、そんな口ぶりだったのである。

「そう…それならいいけど。何か困ったことがあったら、姉さんに必ず相談してね」

 佐代子姉さんが僕を見た。

 妙に沈んだ瞳の色をしていた。

「全部丸く収まったじゃないか、どうしてそんなことを言うのさ?」

 訊き返すと、どきりとするような返事が返ってきた。

「どうしてって…。巧、あなた、匂うから」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完全犯罪

みかげなち
BL
目が覚めたら知らない部屋で全裸で拘束されていた蒼葉。 蒼葉を監禁した旭は「好きだよ」と言って毎日蒼葉を犯す。 蒼葉はもちろん、旭のことなど知らない。

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

泉界のアリア【昔語り】~御子は冥王に淫らに愛される~

佐宗
BL
冥界が舞台のダークファンタジーBL。 父王と王子のシリアスな近親ものです。 こちらは王子の少年期~本編の前までを描いた『泉界のアリア』の過去編(外伝)です。 作中時系列はこちらが先になります。 ※番外編とした書いたものなので、やや唐突に物語が始まりますがこちらからもお読みいただけます。 (世界観の詳細は『泉界のアリア(本編)』にあります) 本編↓ https://www.alphapolis.co.jp/novel/701847579/150406490 ――――― ~ことのはじまり~  かつて、異端とみなされ天上界からただひとり黄泉に堕とされた闇の神(のちの冥王)。  同族のいない地底世界で千年ものあいだ孤独に打ちひしがれていた彼は、あるとき天から降りてきたひとりの女神の献身的な愛により我が子ナシェルを得るのだが、女神は闇の瘴気に冒されて、ほどなく消滅してしまった。  愛する女神を喪い、ふたたび味わう孤独と絶望は、冥王をナシェルへの“異常な愛と執着”に奔らせたのだった。  孤独な冥王の元に遺された“唯一の同属神”として、ナシェルは美しく淫らに成長してゆく。  しかし成熟とともに、次第に王の庇護と束縛に抗いはじめて……? ――――― 本編第一部(成神編)よりも500年ぐらい前からスタートします。 四本の短・中編で構成されています。 執筆時期はバラバラですが、一連の流れが分かるよう主人公の成長順(少年期~青年期まで)に並べました。 最初は健気ショタ受けから始まります。シリアスで無理やり多めです。 メインカプはもちろんですが乳兄弟(魔族)との関係にも焦点を当てています。 ※※第四章のラストに諸事情でNL表現があります。本編につながる転機となる重要な話ですので掲載しています。第四章は単なる父子ものではありませんので男女の絡みが苦手な方は注意してください。 なお、この過去編の結末が『本編』の冒頭の状況へと繋がっております。こちらの作品のみでは父子の物語は『完結』しませんのでご注意ください。 表紙画:syuka様

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

転生皇太子は、虐待され生命力を奪われた聖女を救い溺愛する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

いつまででも甘えたい

香月ミツほ
BL
 総受けの主人公が転移した異世界の辺境の砦で可愛がられるお話です。過去のトラウマで断れない性格になってしまってためらいながらも流されまくりの愛されまくり。 自動書記(笑)で書いてますので内容を真面目に受け取らないで下さい。ビッチ注意。 主人公の1人称が「私」「おれ」「僕」とコロコロ変わるので読みにくいかも知れませんが不安定さの現れですのでご理解下さい。  1話2000字程度、26話完結とエピローグ、後日談前後編で29話。エピローグは死別シーンが含まれます。 リクエストいただいたのでパストの初体験編とショタ攻め編それぞれ5話です。

処理中です...