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2 来訪者
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それから先のことはあまりよく覚えていない。
パトカーと救急車のサイレンの音。
点滅する赤いライト。
パトカーに乗せられ、連れていかれた警察署での事情聴収。
夢うつつのうちに、ただ慌ただしく時間だけが過ぎていった。
「おまえというやつは…」
「まったく、なんてことを・・・」
駆けつけた両親は険しい顔で僕を難詰し、そんな中、姉だけが心配そうに僕に寄り添ってくれていた。
少年院送りになるのではないか。
前科がついてこれで僕の人生は終わるのだろうか。
正直、被害者の老人の容態より、僕はそんな自己保身ばかり考えていたように思う。
今振り返ってみれば、それが、やつー翔につけこまれる要因だったのかもしれない。
きっと、そうだ。
翔は初対面のあの時から、僕のどうしようもないクズっぷりを見抜いていたのだ。
結局、僕に課せられた罪は、『一時停止違反』『前方不注意』、それだけだった。
刑事事件としては、罰金五万から十万程度の軽微な違反である。
だが、もちろん、民事的には損害賠償の問題が残った。
事故後、家にやってきた父の知り合いという弁護士の話では、相手方には、ざっと見積もっても、治療費・通院交通費・付添看護費・入院雑費・入通院慰謝料・休業損害・物損等の費用請求の権利が発生し、更に歩行者に後遺障害が残った場合には、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益・家屋改造費、車両改造費、義手等の装身具費用などの追加費用が生じる可能性があるとのことだった。
「なんせ、被害者は、天野製薬の会長、天野泰三氏ですからねえ。天野製薬といえば、認知症予防の新薬開発で注目を集めている成長企業でしょう。へたをすると、賠償金は何千万、いや、ひょっとすると、億の単位になるかもしれません」
母の出した渋茶の湯飲みで手のひらを温めながら、気の毒そうな表情で弁護士の先生は言ったものである。
「そんな、無茶な…。億だなんて、とてもうちには…」
父は頭を抱えた。
母と姉、僕の3人も青ざめるしかなかった。
単なるサラリーマンの一家庭に過ぎない僕の家に、そんな大金が払えるはずがない。
たとえ家を売り払って賠償に充てたところで、多額の借金が残るだけだろう。
そんな時だった。
示談交渉をしたいという名目で、あいつ、天野翔が僕の家にやってきたのは。
パトカーと救急車のサイレンの音。
点滅する赤いライト。
パトカーに乗せられ、連れていかれた警察署での事情聴収。
夢うつつのうちに、ただ慌ただしく時間だけが過ぎていった。
「おまえというやつは…」
「まったく、なんてことを・・・」
駆けつけた両親は険しい顔で僕を難詰し、そんな中、姉だけが心配そうに僕に寄り添ってくれていた。
少年院送りになるのではないか。
前科がついてこれで僕の人生は終わるのだろうか。
正直、被害者の老人の容態より、僕はそんな自己保身ばかり考えていたように思う。
今振り返ってみれば、それが、やつー翔につけこまれる要因だったのかもしれない。
きっと、そうだ。
翔は初対面のあの時から、僕のどうしようもないクズっぷりを見抜いていたのだ。
結局、僕に課せられた罪は、『一時停止違反』『前方不注意』、それだけだった。
刑事事件としては、罰金五万から十万程度の軽微な違反である。
だが、もちろん、民事的には損害賠償の問題が残った。
事故後、家にやってきた父の知り合いという弁護士の話では、相手方には、ざっと見積もっても、治療費・通院交通費・付添看護費・入院雑費・入通院慰謝料・休業損害・物損等の費用請求の権利が発生し、更に歩行者に後遺障害が残った場合には、後遺障害慰謝料・後遺障害逸失利益・家屋改造費、車両改造費、義手等の装身具費用などの追加費用が生じる可能性があるとのことだった。
「なんせ、被害者は、天野製薬の会長、天野泰三氏ですからねえ。天野製薬といえば、認知症予防の新薬開発で注目を集めている成長企業でしょう。へたをすると、賠償金は何千万、いや、ひょっとすると、億の単位になるかもしれません」
母の出した渋茶の湯飲みで手のひらを温めながら、気の毒そうな表情で弁護士の先生は言ったものである。
「そんな、無茶な…。億だなんて、とてもうちには…」
父は頭を抱えた。
母と姉、僕の3人も青ざめるしかなかった。
単なるサラリーマンの一家庭に過ぎない僕の家に、そんな大金が払えるはずがない。
たとえ家を売り払って賠償に充てたところで、多額の借金が残るだけだろう。
そんな時だった。
示談交渉をしたいという名目で、あいつ、天野翔が僕の家にやってきたのは。
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