小界奇談～ちょっと怖い物語～（100話完結）

岩の上の人

学校の周辺で不審者が出たとかで気をつけるようにと言われたばかりの時でした。

通学路の途中に大きい岩が地面に埋まっている所があって、そこに男の人が座っていたんです。

帽子をかぶってマフラーにマスク、手袋をしているので年齢はよくわからないけれど、着ている服と背格好から男の人だと思うんですけど、少し服もよれていて、あまりきれいな感じではなくて。

なんでそこに座っているのか分からないのでちょっと気持ち悪さを感じたんです。

ちょっと緊張しながら前を通ったんです。

何事も無く通り過ぎて、そのまま帰りました。

次の日は登校時にはいなかったけれど、下校の時にまたいたんです。

でも、昨日は何も無かったし、友達と一緒だから大丈夫！と思って前を通り過ぎる事にした。

遠目で昨日と同じ服だと気づいたんです。

近づいたので友達越しにチラッとその人を見て気が付いたんです。

どこにも肌がないんです。

帽子とマスクの間、マスクとマフラーの隙間などは空洞だったんです。

なのにマスクが動いてるから呼吸をしているのは分かる。

もう、怖くなりました。

でも、一緒に帰ってる子は何も言わないでしゃべってるし。

とりあえず通り過ぎてかなり距離ができてから、さっきの人の話をしたんですけど、そんな人いなかったって言うんです。

そこでまた怖くなって。
なんで自分だけ見えてるんだろうって思いました。

またその次の日、やっぱり登校の時はいなくて、帰りはできるだけ離れて友達にくっついて岩のそばまで行くとあの人がいないんです。

友達も｢誰もいないじゃん｣なんて言っていて。

たしかに今日はあの人はいなかった。

けれど、

その岩の横にカップのお酒と山に盛られたお塩が置かれてたんです。

きっと自分と同じように見えていた人がいたんだと思う。


しばらく経ちますが岩の前を通る時は今も少し緊張してしまいます。