5 / 41
第一章【プロローグ:旅立ち】
第一章6【家族】
しおりを挟む
あたりは騒然としていた。こんな村の中で子供たちが魔法を放ったのだから当たり前だ。だがキョウ達が去った後も村人達は留まっていた。彼らは問題の渦中にあった黒い瞳《め》を持った少年を見つめていた。
彼らも既にこの村に長く住むシュウの事は把握している。だからといって、彼らがシュウの事を無視できるかどうかというとそうではない。本来であれば被害者であるはずのシュウは、周囲から今もなお軽蔑的な視線を感じる。
「ほら、早くフード被りなよ」
「わかってるよ」
少しでも周りからの視線から逃げようとしてフードを被りなおすが、村人達は未だに囁き続けているおり、
「はぁ、私が今からここで、叫んでやろうかしら。シュウは悪くないって」
「いい、余計なことはしないでくれ」
「はぁ!余計って何よ!私はシュウのためにしてあげようと」
「……頼むよ」
僅かに声を荒げるミラだったが、少し冷静になってくれたようだ。だがこのままでは動き辛いのも事実だ。さて、一体どうしたものか、
「皆の衆!何があった!!!」
突然大きな声が響き渡り、辺りが騒然となる。すると向こうから土煙を上げて、誰かが走ってきた。
大きな男だ、身長が高く、自分が会話するなら彼を見上げないといけないだろう。歳はある程度いっているが、肉体は凄まじく鍛えられており、いまも身体から闘志が溢れている。
「あ、村長」
村人の一人に声をかけられた男、村長は騒音を聞きつけ、ここに走ってきたそうだ。現在は村人に何があったのかを聞いている。村人と村長の目線から、彼らが自分の事について話していることは、容易に想像できた。
どうやら話し終えたらしい村長が村人にお礼を言うと、こちらに歩いてくる。これから何を言われるのか、覚悟しなければならないなと身構えるが、彼はこちらに背を向け、村人達の方へと振りむき、
「事情は全て把握した!!!後はワシが引き継ぐ!!!皆の衆は解散するがよい!!!」
そう叫んだのであった。
「災難だったな、少年少女よ」
「少年少女って。俺にはシュウって名前があるし、こいつにはミラって名前がある。」
「かっかっか!!!そうであった。歳を取るとつい忘れっぽくなってしまってのう!!!」
相変わらずの声の大きさだ。父さんから聞いたが、村長は昔、かなりの実力の冒険者だったらしいが、こうして実際に話していると納得がいく。
恐らく冒険者としては10年以上前に引退しているだろうが、いまでも並の冒険者達が束になってもかなわないだろう。
「それで村長、俺に対して何か罰はありますか?」
「ちょっと!?待って下さい、村長!シュウは何もしてません。あの馬鹿2人に一方的に絡まれただけで━━」
「あー、分かっておる。お主の瞳《め》が原因じゃろ?まあ、気にするでない。あの悪ガキどもの親には強めに言っておくわい。かっかっか!!!じゃあワシはまだ村の巡回が残っているのでな!」
それだけ言い残し、笑いながら村長は去っていった。あの村長こそが自分がこの村にいられる理由だ。
確かに自分の両親は家名を持っているため多少の融通は利くが、限度はある。そんな自分が両親も含めてこのエスト村で暮らせられるのは、あの村長のおかげであり、
「村長って、本当にシュウに対しての偏見とかが無いのね」
「うん、俺が生まれた時、父さんと母さんが俺について相談しに行ったらしいんだ。そしたら、あの村長『災いが来るなら、是非ともお手合わせ願いたいのう。カッカッカ!!!』って笑い飛ばしたらしいんだよね」
「すっごい簡単に想像できるわね、それは」
シュウとミラは笑い合いながら家に帰るのだった。
* * * * *
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。ってシュウ!どうしたのその傷は!」
「まぁ、ちょっとね、って痛っ!急に触らないでよ!」
シュウ達が家に帰宅すると、既に母親のリサが夕飯の用意をしていたが、彼女はシュウの顔を見るとすぐさま駆け寄り、傷を確認するために身体中を触り始めた。
「もう、なんでシュウはいつも傷だらけで帰ってくるのよー。あ、ミラちゃん、買い物ありがとう。買ってきた食べ物はキッチンの上においてくれる?」
「はーい。あ、リサおばさーん、この食べ物は、って何してるんですか!」
「ちょっ、待って!痛いって!勝手に服を脱がさないでよ!ミラもいるんだし!1人で脱げるから!」
「別に気にしなくていいじゃない。昔は2人で一緒にお風呂にも入ってたんだし」
「それは、昔の話だろ!って痛い痛い痛い!!!!!」
「ほらー勝手に動くから、余計に痛くなるのよー」
「誰のせいだと思ってるんだよ!」
「ただいま!!!皆の大好きなお父さんが帰って来たぞぉぉぉ!!!!おっ、ミラちゃん、いらっしゃい。リサとシュウはなに遊んでるんだ?お父さんも混ぜてくれよー」
「父さんには!これが遊んでるように!見えるのかよ!」
「わ、わ、私!ちょっと家に帰ってお母さん呼んできますね!!!」
マイペースな母さん、元気な父さん、幼馴染のミラ、ここにはいないけどミラの母親のフランおばさん。
相変わらず、ここは賑やかな家だなと勇翔に笑いかけられたような気がした。
「あっ、ちょっと待って!下は!下は駄目!ちょっ、やめてー!!!」
彼らも既にこの村に長く住むシュウの事は把握している。だからといって、彼らがシュウの事を無視できるかどうかというとそうではない。本来であれば被害者であるはずのシュウは、周囲から今もなお軽蔑的な視線を感じる。
「ほら、早くフード被りなよ」
「わかってるよ」
少しでも周りからの視線から逃げようとしてフードを被りなおすが、村人達は未だに囁き続けているおり、
「はぁ、私が今からここで、叫んでやろうかしら。シュウは悪くないって」
「いい、余計なことはしないでくれ」
「はぁ!余計って何よ!私はシュウのためにしてあげようと」
「……頼むよ」
僅かに声を荒げるミラだったが、少し冷静になってくれたようだ。だがこのままでは動き辛いのも事実だ。さて、一体どうしたものか、
「皆の衆!何があった!!!」
突然大きな声が響き渡り、辺りが騒然となる。すると向こうから土煙を上げて、誰かが走ってきた。
大きな男だ、身長が高く、自分が会話するなら彼を見上げないといけないだろう。歳はある程度いっているが、肉体は凄まじく鍛えられており、いまも身体から闘志が溢れている。
「あ、村長」
村人の一人に声をかけられた男、村長は騒音を聞きつけ、ここに走ってきたそうだ。現在は村人に何があったのかを聞いている。村人と村長の目線から、彼らが自分の事について話していることは、容易に想像できた。
どうやら話し終えたらしい村長が村人にお礼を言うと、こちらに歩いてくる。これから何を言われるのか、覚悟しなければならないなと身構えるが、彼はこちらに背を向け、村人達の方へと振りむき、
「事情は全て把握した!!!後はワシが引き継ぐ!!!皆の衆は解散するがよい!!!」
そう叫んだのであった。
「災難だったな、少年少女よ」
「少年少女って。俺にはシュウって名前があるし、こいつにはミラって名前がある。」
「かっかっか!!!そうであった。歳を取るとつい忘れっぽくなってしまってのう!!!」
相変わらずの声の大きさだ。父さんから聞いたが、村長は昔、かなりの実力の冒険者だったらしいが、こうして実際に話していると納得がいく。
恐らく冒険者としては10年以上前に引退しているだろうが、いまでも並の冒険者達が束になってもかなわないだろう。
「それで村長、俺に対して何か罰はありますか?」
「ちょっと!?待って下さい、村長!シュウは何もしてません。あの馬鹿2人に一方的に絡まれただけで━━」
「あー、分かっておる。お主の瞳《め》が原因じゃろ?まあ、気にするでない。あの悪ガキどもの親には強めに言っておくわい。かっかっか!!!じゃあワシはまだ村の巡回が残っているのでな!」
それだけ言い残し、笑いながら村長は去っていった。あの村長こそが自分がこの村にいられる理由だ。
確かに自分の両親は家名を持っているため多少の融通は利くが、限度はある。そんな自分が両親も含めてこのエスト村で暮らせられるのは、あの村長のおかげであり、
「村長って、本当にシュウに対しての偏見とかが無いのね」
「うん、俺が生まれた時、父さんと母さんが俺について相談しに行ったらしいんだ。そしたら、あの村長『災いが来るなら、是非ともお手合わせ願いたいのう。カッカッカ!!!』って笑い飛ばしたらしいんだよね」
「すっごい簡単に想像できるわね、それは」
シュウとミラは笑い合いながら家に帰るのだった。
* * * * *
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。ってシュウ!どうしたのその傷は!」
「まぁ、ちょっとね、って痛っ!急に触らないでよ!」
シュウ達が家に帰宅すると、既に母親のリサが夕飯の用意をしていたが、彼女はシュウの顔を見るとすぐさま駆け寄り、傷を確認するために身体中を触り始めた。
「もう、なんでシュウはいつも傷だらけで帰ってくるのよー。あ、ミラちゃん、買い物ありがとう。買ってきた食べ物はキッチンの上においてくれる?」
「はーい。あ、リサおばさーん、この食べ物は、って何してるんですか!」
「ちょっ、待って!痛いって!勝手に服を脱がさないでよ!ミラもいるんだし!1人で脱げるから!」
「別に気にしなくていいじゃない。昔は2人で一緒にお風呂にも入ってたんだし」
「それは、昔の話だろ!って痛い痛い痛い!!!!!」
「ほらー勝手に動くから、余計に痛くなるのよー」
「誰のせいだと思ってるんだよ!」
「ただいま!!!皆の大好きなお父さんが帰って来たぞぉぉぉ!!!!おっ、ミラちゃん、いらっしゃい。リサとシュウはなに遊んでるんだ?お父さんも混ぜてくれよー」
「父さんには!これが遊んでるように!見えるのかよ!」
「わ、わ、私!ちょっと家に帰ってお母さん呼んできますね!!!」
マイペースな母さん、元気な父さん、幼馴染のミラ、ここにはいないけどミラの母親のフランおばさん。
相変わらず、ここは賑やかな家だなと勇翔に笑いかけられたような気がした。
「あっ、ちょっと待って!下は!下は駄目!ちょっ、やめてー!!!」
0
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる