123 / 195
第二部
すれ違う心Ⅲ
しおりを挟む
空が夕焼けに染まり始める頃、四阿で夕食を楽しみました。いつもよりも早い時間ではありますが、遅くならないように時間を合わせて下さったのでしょう。レイ様とおしゃべりしながら、ゆっくりと食べ進めても時間は来てしまうもの。
あとはデザートを残すのみとなりました。
目の前に紅茶とブルーベリーのタルトが置かれました。
これを食べてしまうと終わってしまうのね。香りのよい紅茶にナパージュされたブルーベリーたっぷりのタルト。おいしそうだけれど、これで最後かと思うと手が止まってしまう。
「どうしたの? もうお腹いっぱい?」
じっと動かない私に不思議そうに聞かれました。レイ様には私の気持ちはわからないでしょう。
見つめる瞳にドキドキしていることも少し低音の柔らかい声に聞き惚れていることも、子供のような好奇心をのぞかせる時も、私に向ける優しい笑顔も、レイ様の何もかもが好きな事をレイ様は知らないでしょう。
「とてもきれいなケーキだったので、つい見入ってしまいました」
嘘ではありません。宮のお抱えパティシエだけあって見事なお菓子です。シェフもそうですが、できれば弟子入りしたいくらいです。
「ローラが褒めていると知ったらパティシエも喜ぶよ」
「シェフの皆さんにもお礼を伝えて頂けたら、とても美味しい料理の数々でしたから。胃に負担をかけないようなメニューを考えて下さったのでしょう? ありがとうございました」
素材選びもそうですが、私の料理には極力油を抜いて消化に良い調理方法でした。できるなら、厨房に行ってお礼を述べたいくらいですが、それはいくらなんでも図々しいお願いでしょう。最後かもしれないと思うとすべてを目に焼き付けておきたい気持ちになります。
「そこまでわかるんだね。料理人冥利に尽きるだろうな。シェフ達も感激すると思う」
「喜んでくださると嬉しいわ」
最後の晩餐。笑顔で終わりたい。瞳が涙で滲むのを抑えました。
「そういえば、俺にお菓子を作ってくれる約束がまだだったよね?」
ブルーベリータルトの甘酸っぱい美味しさを堪能していた時です。思い出したように尋ねられてびっくりしました。まだ有効だったのですか?
約束した日から数週間経っていますから、もうないものと忘れていらっしゃるだろうと思っていました。
「そうですが……」
「ローラの体調が万全になってからでいいんだ。作って欲しい。どう?」
「……」
「ダメ?」
小首をかしげて上目遣いでこちらの出方を窺うような表情にきゅんと胸が締めつけられる。時折見せる弱気な態度にときめいてしまう。
「ダメではないですけれど、私でいいのですか?」
つい、聞いてしまいます。これ以上、そばにいてもいいのかしら? レイ様にご迷惑ではないのかしら?
自分から身を引くのも大事な事。ふと浮かんできた言葉に心が凍ります。
「ローラがいいんだ。ローラが作ったお菓子が食べたい」
レイ様は優しい方だから、そういってくださるのね。
「ありがとうございます。いつか機会があれば……」
ちょっと言葉を濁してみたら、伝わるかしら。
「うん。楽しみにしてる。まずは体の回復優先でいいからね」
私はこくんと頷きました。
伝わらなかったみたい。でも、私の体調を慮って下さるレイ様。優しすぎるわ。
このまま、体調不良のせいにしてうやむやにしてしまうのもいいのかもしれない。なんて狡いことを考えてしまう。レイ様だって会わなくなれば、私のことなどすぐに忘れてしまうでしょう。
「おいで」
いつの間にか隣に座っていたレイ様が手を広げていました。
「おいで」
広げられた胸の中に吸い込まれそうになりましたが、思いとどまりました。今までだったら何も考えず飛び込んでいたかもしれません。なぜそんなことが出来たのか、自分の行動の無謀さに羞恥心がこみ上げてきました。
「いつもなら、来てくれるのにどうしたの?」
様子がおかしいと頭を捻るレイ様と自覚した思いに戸惑う私。
業を煮やしたのかレイ様は自分から近づくと私を抱きしめました。シトラスの香りに包まれて腕の中に閉じ込められて、そんな行為に喜ぶ私がいる。振りほどけない私がいる。
「こうしていないと逃げられそうだから。話があると言っていたよね。覚えてる?」
あの時は手をしっかりと握られていたわ。逃げないようにって。
「はい」
鼓膜を震わす声が心の奥を刺激して切なく疼きます。
「逃げませんよ。大丈夫です。ですから……」
離してください。とは言えませんでした。
レイ様の温もりが大好きだから。レイ様の腕の中はこんなにも心地よいものだと知っているから。今だけだからと狡い気持ちを隠して。
「ローラの逃げませんは信用できない」
「それは……」
逃げたのは一度だけで、この前は逃げようとは思ったけれど、我慢したわ。
「ふっ」
レイ様が微かに吹き出したのがわかりました。耳元で息がかかるのは心臓に悪いわ。こそばゆさに身を捩ってしまいます。
「ほら、そんなに動いたら抱きしめられないよ。じっとしてて」
クスクスと笑いが漏れて甘い声が降ってきます。耳元で囁かれると何かがせりあがってくるような未知の感覚が私を襲いました。でもそれは嫌な感覚ではなくて、むしろ心地よいような気がして、不思議な気持ちになります。
「うん。いい子だね」
言う通りにピタリと動きを止めた私をご褒美とばかりに頭を何度か撫でるレイ様。小さい子供のような扱いにホッとするような寂しいような……
そろそろ夕闇が近づいてきました。刻々と時間は過ぎていきます。
「ローラ」
甘美な雰囲気に酔っていた私の耳元でシリアスな声に現実に引き戻されました。
「俺はローラが好きだ。愛している。だから、俺と結婚してほしい」
「……」
い、今。何を言われたのか。
好き? 結婚? 微かに耳を掠めていった言葉。
すぐには理解できなくて……
「ローラ?」
返事もできなくて固まってしまった私から身を離したレイ様。ゆっくりと交わる視線。
「あの……よく、聞こえなくて……」
きっと、聞き間違い。そんなこと、結婚って……
「もう一度言うから、よく聞いてて」
私は頷くと聞き逃してはいけないとレイ様をジッと見つめました。
「俺はローラ、君を愛している。俺と結婚してくれないか。俺の妃になった欲しいんだ」
私の手を取るとレイ様の顔が近づいてきて、指先にチュッと口づけを落とされました。冷たくなった指先がほんのりと熱を帯びます。
聞き間違えではなかったのね。
愛している。結婚。現実味のない言葉。
突然のプロポーズにどう返事をしたらいいのか。レイ様への思いと結婚はイコールなのか、軽々しく受けていいものなのか。瞬時に駆け巡る色々な思考。
私の返事を待つレイ様の不安そうに揺れる瞳から目を逸らして俯きました。
傷物令嬢……分不相応……
みっともない……
次々に浮かんでくるのは、ビビアン様の言葉の数々。
『レイニー殿下もお気の毒ね。ガーデンパーティーで知り合ったばかりに、こんな地味で冴えない令嬢の相手をしなければならないなんて。いい加減、うんざりしていらっしゃるのではないかしらねぇ』
『解放して差し上げたらいかがかしら』
わかっている。わかっているわ。自分のことなど痛いほどわかっている。
「返事を聞かせてほしい」
レイ様の真摯な眼差し。快活に笑う表情。私を呼ぶ声。抱きしめられた時の温もり。
私に与えられたすべてのものが愛おしい。
「申し訳ありません。お受けできません」
自分の思いを断ち切るようにきっぱりと答えました。
レイ様の瞳が驚愕に見開かれて失望に染まっていく。悲哀に満ちた顔に心が痛む。
レイ様にはもっと相応しい方がいるわ。私でなくてもいい、私なんかよりもっと相応しい方がいる。気の迷いよ。レイ様は勘違いしていらっしゃるのよ、きっと。だから、すぐに目が覚めるわ。私のようなつまらない娘よりもお似合いの令嬢がすぐに見つかるわ。
「なぜ? ローラは俺の事をどう思っている? 正直に答えて」
掴まれた肩に力がこもります。今、目を逸らしてはいけない。
「お優しい方だと思っております」
「それだけ?」
私はこれ以上は言葉を紡げず、こくりと頷きました。心は泣いているのに、こんなに冷静に返事ができるのはどうしてなのでしょう。
血の気を失った冷たい指先を握りしめて気丈にふるまわなければ。泣いてはいけない。
「そろそろ、離して頂いてもよろしいでしょうか」
自分でも驚くぐらいの冷淡な声音。
青褪めた悲愴な表情のレイ様を見るのはつらい。何が正解なのかはわからない、本当にこれでよかったのかなんてわからない。けれど、一度口にした言葉は取り消せない。
肩を掴んでいた手から力が抜けて、あっさりとレイ様から解放されました。なくなった温もりに寂しさを覚える自分がおかしくて、私から手を離したのに。
「今まで優しくして頂いてありがとうございました」
悲しみを湛えた瞳で呆然と私を見上げるレイ様に、これ以上はないくらいのカーテシーをしてその場を去りました。
あとはデザートを残すのみとなりました。
目の前に紅茶とブルーベリーのタルトが置かれました。
これを食べてしまうと終わってしまうのね。香りのよい紅茶にナパージュされたブルーベリーたっぷりのタルト。おいしそうだけれど、これで最後かと思うと手が止まってしまう。
「どうしたの? もうお腹いっぱい?」
じっと動かない私に不思議そうに聞かれました。レイ様には私の気持ちはわからないでしょう。
見つめる瞳にドキドキしていることも少し低音の柔らかい声に聞き惚れていることも、子供のような好奇心をのぞかせる時も、私に向ける優しい笑顔も、レイ様の何もかもが好きな事をレイ様は知らないでしょう。
「とてもきれいなケーキだったので、つい見入ってしまいました」
嘘ではありません。宮のお抱えパティシエだけあって見事なお菓子です。シェフもそうですが、できれば弟子入りしたいくらいです。
「ローラが褒めていると知ったらパティシエも喜ぶよ」
「シェフの皆さんにもお礼を伝えて頂けたら、とても美味しい料理の数々でしたから。胃に負担をかけないようなメニューを考えて下さったのでしょう? ありがとうございました」
素材選びもそうですが、私の料理には極力油を抜いて消化に良い調理方法でした。できるなら、厨房に行ってお礼を述べたいくらいですが、それはいくらなんでも図々しいお願いでしょう。最後かもしれないと思うとすべてを目に焼き付けておきたい気持ちになります。
「そこまでわかるんだね。料理人冥利に尽きるだろうな。シェフ達も感激すると思う」
「喜んでくださると嬉しいわ」
最後の晩餐。笑顔で終わりたい。瞳が涙で滲むのを抑えました。
「そういえば、俺にお菓子を作ってくれる約束がまだだったよね?」
ブルーベリータルトの甘酸っぱい美味しさを堪能していた時です。思い出したように尋ねられてびっくりしました。まだ有効だったのですか?
約束した日から数週間経っていますから、もうないものと忘れていらっしゃるだろうと思っていました。
「そうですが……」
「ローラの体調が万全になってからでいいんだ。作って欲しい。どう?」
「……」
「ダメ?」
小首をかしげて上目遣いでこちらの出方を窺うような表情にきゅんと胸が締めつけられる。時折見せる弱気な態度にときめいてしまう。
「ダメではないですけれど、私でいいのですか?」
つい、聞いてしまいます。これ以上、そばにいてもいいのかしら? レイ様にご迷惑ではないのかしら?
自分から身を引くのも大事な事。ふと浮かんできた言葉に心が凍ります。
「ローラがいいんだ。ローラが作ったお菓子が食べたい」
レイ様は優しい方だから、そういってくださるのね。
「ありがとうございます。いつか機会があれば……」
ちょっと言葉を濁してみたら、伝わるかしら。
「うん。楽しみにしてる。まずは体の回復優先でいいからね」
私はこくんと頷きました。
伝わらなかったみたい。でも、私の体調を慮って下さるレイ様。優しすぎるわ。
このまま、体調不良のせいにしてうやむやにしてしまうのもいいのかもしれない。なんて狡いことを考えてしまう。レイ様だって会わなくなれば、私のことなどすぐに忘れてしまうでしょう。
「おいで」
いつの間にか隣に座っていたレイ様が手を広げていました。
「おいで」
広げられた胸の中に吸い込まれそうになりましたが、思いとどまりました。今までだったら何も考えず飛び込んでいたかもしれません。なぜそんなことが出来たのか、自分の行動の無謀さに羞恥心がこみ上げてきました。
「いつもなら、来てくれるのにどうしたの?」
様子がおかしいと頭を捻るレイ様と自覚した思いに戸惑う私。
業を煮やしたのかレイ様は自分から近づくと私を抱きしめました。シトラスの香りに包まれて腕の中に閉じ込められて、そんな行為に喜ぶ私がいる。振りほどけない私がいる。
「こうしていないと逃げられそうだから。話があると言っていたよね。覚えてる?」
あの時は手をしっかりと握られていたわ。逃げないようにって。
「はい」
鼓膜を震わす声が心の奥を刺激して切なく疼きます。
「逃げませんよ。大丈夫です。ですから……」
離してください。とは言えませんでした。
レイ様の温もりが大好きだから。レイ様の腕の中はこんなにも心地よいものだと知っているから。今だけだからと狡い気持ちを隠して。
「ローラの逃げませんは信用できない」
「それは……」
逃げたのは一度だけで、この前は逃げようとは思ったけれど、我慢したわ。
「ふっ」
レイ様が微かに吹き出したのがわかりました。耳元で息がかかるのは心臓に悪いわ。こそばゆさに身を捩ってしまいます。
「ほら、そんなに動いたら抱きしめられないよ。じっとしてて」
クスクスと笑いが漏れて甘い声が降ってきます。耳元で囁かれると何かがせりあがってくるような未知の感覚が私を襲いました。でもそれは嫌な感覚ではなくて、むしろ心地よいような気がして、不思議な気持ちになります。
「うん。いい子だね」
言う通りにピタリと動きを止めた私をご褒美とばかりに頭を何度か撫でるレイ様。小さい子供のような扱いにホッとするような寂しいような……
そろそろ夕闇が近づいてきました。刻々と時間は過ぎていきます。
「ローラ」
甘美な雰囲気に酔っていた私の耳元でシリアスな声に現実に引き戻されました。
「俺はローラが好きだ。愛している。だから、俺と結婚してほしい」
「……」
い、今。何を言われたのか。
好き? 結婚? 微かに耳を掠めていった言葉。
すぐには理解できなくて……
「ローラ?」
返事もできなくて固まってしまった私から身を離したレイ様。ゆっくりと交わる視線。
「あの……よく、聞こえなくて……」
きっと、聞き間違い。そんなこと、結婚って……
「もう一度言うから、よく聞いてて」
私は頷くと聞き逃してはいけないとレイ様をジッと見つめました。
「俺はローラ、君を愛している。俺と結婚してくれないか。俺の妃になった欲しいんだ」
私の手を取るとレイ様の顔が近づいてきて、指先にチュッと口づけを落とされました。冷たくなった指先がほんのりと熱を帯びます。
聞き間違えではなかったのね。
愛している。結婚。現実味のない言葉。
突然のプロポーズにどう返事をしたらいいのか。レイ様への思いと結婚はイコールなのか、軽々しく受けていいものなのか。瞬時に駆け巡る色々な思考。
私の返事を待つレイ様の不安そうに揺れる瞳から目を逸らして俯きました。
傷物令嬢……分不相応……
みっともない……
次々に浮かんでくるのは、ビビアン様の言葉の数々。
『レイニー殿下もお気の毒ね。ガーデンパーティーで知り合ったばかりに、こんな地味で冴えない令嬢の相手をしなければならないなんて。いい加減、うんざりしていらっしゃるのではないかしらねぇ』
『解放して差し上げたらいかがかしら』
わかっている。わかっているわ。自分のことなど痛いほどわかっている。
「返事を聞かせてほしい」
レイ様の真摯な眼差し。快活に笑う表情。私を呼ぶ声。抱きしめられた時の温もり。
私に与えられたすべてのものが愛おしい。
「申し訳ありません。お受けできません」
自分の思いを断ち切るようにきっぱりと答えました。
レイ様の瞳が驚愕に見開かれて失望に染まっていく。悲哀に満ちた顔に心が痛む。
レイ様にはもっと相応しい方がいるわ。私でなくてもいい、私なんかよりもっと相応しい方がいる。気の迷いよ。レイ様は勘違いしていらっしゃるのよ、きっと。だから、すぐに目が覚めるわ。私のようなつまらない娘よりもお似合いの令嬢がすぐに見つかるわ。
「なぜ? ローラは俺の事をどう思っている? 正直に答えて」
掴まれた肩に力がこもります。今、目を逸らしてはいけない。
「お優しい方だと思っております」
「それだけ?」
私はこれ以上は言葉を紡げず、こくりと頷きました。心は泣いているのに、こんなに冷静に返事ができるのはどうしてなのでしょう。
血の気を失った冷たい指先を握りしめて気丈にふるまわなければ。泣いてはいけない。
「そろそろ、離して頂いてもよろしいでしょうか」
自分でも驚くぐらいの冷淡な声音。
青褪めた悲愴な表情のレイ様を見るのはつらい。何が正解なのかはわからない、本当にこれでよかったのかなんてわからない。けれど、一度口にした言葉は取り消せない。
肩を掴んでいた手から力が抜けて、あっさりとレイ様から解放されました。なくなった温もりに寂しさを覚える自分がおかしくて、私から手を離したのに。
「今まで優しくして頂いてありがとうございました」
悲しみを湛えた瞳で呆然と私を見上げるレイ様に、これ以上はないくらいのカーテシーをしてその場を去りました。
2
お気に入りに追加
512
あなたにおすすめの小説
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
愛され妻と嫌われ夫 〜「君を愛することはない」をサクッとお断りした件について〜
榊どら
恋愛
長年片思いしていた幼馴染のレイモンドに大失恋したアデレード・バルモア。
自暴自棄になった末、自分が不幸な結婚をすればレイモンドが罪悪感を抱くかもしれない、と非常に歪んだ認識のもと、女嫌いで有名なペイトン・フォワードと白い結婚をする。
しかし、初顔合わせにて「君を愛することはない」と言われてしまい、イラッときたアデレードは「嫌です。私は愛されて大切にされたい」と返した。
あまりにナチュラルに自分の宣言を否定されたペイトンが「え?」と呆けている間に、アデレードは「この結婚は政略結婚で私達は対等な関係なのだから、私だけが我慢するのはおかしい」と説き伏せ「私は貴方を愛さないので、貴方は私を愛することでお互い妥協することにしましょう」と提案する。ペイトンは、断ればよいのに何故かこの申し出を承諾してしまう。
かくして、愛され妻と嫌われ夫契約が締結された。
出鼻を挫かれたことでアデレードが気になって気になって仕方ないペイトンと、ペイトンに全く興味がないアデレード。温度差の激しい二人だったが、その関係は少しずつ変化していく。
そんな中アデレードを散々蔑ろにして傷つけたレイモンドが復縁を要請してきて……!?
*小説家になろう様にも掲載しています。
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
伯爵と幼馴染の仲こそが本当の愛だと思っていたら、伯爵が幼馴染に身ぐるみ引っぺがされてあっさり捨てられました。愛ってなんですか……?
銀灰
恋愛
令嬢カメリアは、婚約を結んだ伯爵と、その幼馴染の仲こそが「真実の愛」なのではないかと考え、その仲を静観していた。
ところが、伯爵は幼馴染と戯れるため、お家の財産を悪戯に食い潰し、ついにはカメリアに、幾度となく金の無心を頼むまでになる。
カメリアは目が覚め、伯爵に婚約破棄を突き付ける。
その結果――。
幼馴染の公爵令嬢が、私の婚約者を狙っていたので、流れに身を任せてみる事にした。
完菜
恋愛
公爵令嬢のアンジェラは、自分の婚約者が大嫌いだった。アンジェラの婚約者は、エール王国の第二王子、アレックス・モーリア・エール。彼は、誰からも愛される美貌の持ち主。何度、アンジェラは、婚約を羨ましがられたかわからない。でもアンジェラ自身は、5歳の時に婚約してから一度も嬉しいなんて思った事はない。アンジェラの唯一の幼馴染、公爵令嬢エリーもアンジェラの婚約者を羨ましがったうちの一人。アンジェラが、何度この婚約が良いものではないと説明しても信じて貰えなかった。アンジェラ、エリー、アレックス、この三人が貴族学園に通い始めると同時に、物語は動き出す。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる