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第二部
王族の責任Ⅱ
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大判のショールに体をすっぽりと包まれてレイ様と体を寄せ合うと、段々と温かくなってきました。ぽかぽかとした人肌の温もりが心地よくて、なんだか瞼が重くなって……
「ローラ。起きて」
遠くから私を呼ぶ声。
「ローラ。朝だよ」
誰?
もう少し、温もりの中に包まれていたいのに。
そう思うも、聞き覚えのある声に意識が浮上し、うっすらと目を開けた途端、一気に目が覚めました。
私、今、寝ていた……?
「申し訳ございません」
レイ様の肩に寄りかかっていた体を慌てて起こしました。人前で寝るという失態を見せてしまった私は羞恥で顔が真っ赤になり、頭があげられません。
なんでこんな時に寝てしまったの。レイ様に寝顔を見られるなんて。ああ、恥ずかしい。このまま逃げ出したいくらい。逃げてもいいかしら。
「そんなに慌てなくてもいいのに。ごめんね。気持ちよさそうだったから、このまま眠らせてあげたかったんだけど」
今すぐにでも退散しようと隙を窺っていることなど知らないレイ様は、すまなさそうに私の乱れた髪を梳き、整えてくれます。頬に触れた手にドギマギしながらもそれどころではありません。
「い、いえ。寝てしまった私が悪いのですから、本当に申し訳ありません」
体を縮こませて謝る私に
「気にしなくていいのに。そんなことよりも、もうすぐ花が咲くよ。見逃さないようにしないと」
そう言って池を指し示しました。
反対の手はしっかりと私の手を握って。まるで、逃がさないよと言わんばかりに……
もしかして、ばれていたのかしら?
レイ様の顔を見ても、微笑みを湛えた表情からは何の感情も窺えません。
ぎゅっと握りこまれた手から、レイ様の絶対なる意志が伝わるようで、心が張り詰めごくりと喉がなりました。優し気な表情なのに……裏腹な気持ちを感じてしまうのは、私の気のせいでしょうか?
理解しがたい感情を振り払うように、池に目を向けました。私たちは花を観に来たのです。本来の目的を忘れるところでした。
豊かに茂った緑の葉の合間から蕾がいくつも顔を出しています。
朝日が昇る直前、固く引き結んだ花びらが綻んでくる時間まで、ほんの少し。
「冷えてきたね。もうちょっと、こっちにおいで」
そういえば……さっきよりも寒くなったような。
ぶるっと寒さで震えると思わず腕をさすりました。明け方が一番冷えるというのは本当ですね。
私の仕草を見逃さなかったレイ様が、起きた拍子に離れていた隙間を埋めるように、腰に手を当て私を引き寄せました。
「やっぱり、冷えてるね」
私の身体を抱きしめながら、心配そうな声が落ちてきます。
足元から冷気が立ち上り体を冷やしてしまったようです。冬の寒さよりはましですけれど、昼との寒暖の差がある分寒さへの調整が難しい。
「レイ様の方が冷えますよ。私は大丈夫ですから」
私の身の心配より、レイ様の身体が大切です。いつもよりも厚手のシャツにコートを羽織っていらっしゃいますが、それでも十分とは言えないかもしれません。
先日も同じような時間帯に来たのですけれど、今日の方が寒いような気がします。夏に向かう不安定な時期、気温も日々変化するのでしょう。
「俺は丈夫だし、滅多に体調を崩すこともないから……」
途中で言葉が途切れて思案気な顔をしたと思ったら
「ほら、こうするとお互いに温かいよね? これなら風邪をひく心配はないんじゃない?」
抱き寄せた身体を腕の中に閉じ込めるように抱きしめたレイ様。冷えた私の身体を温めてくれる優しいレイ様。
温かい。
確かにそうなのですが。
レイ様、過保護すぎませんか?
そう問いかけようとレイ様を見上げると私を見つめるなんとも幸せそうなレイ様の眼差しに言葉を失いました。溶けてしまうのではないかと感じるくらいの甘いまなざしに、ドキドキと胸が高鳴りざわつく気持ちを抱えたまま、レイ様から目が離せませんでした。
「ローラ。起きて」
遠くから私を呼ぶ声。
「ローラ。朝だよ」
誰?
もう少し、温もりの中に包まれていたいのに。
そう思うも、聞き覚えのある声に意識が浮上し、うっすらと目を開けた途端、一気に目が覚めました。
私、今、寝ていた……?
「申し訳ございません」
レイ様の肩に寄りかかっていた体を慌てて起こしました。人前で寝るという失態を見せてしまった私は羞恥で顔が真っ赤になり、頭があげられません。
なんでこんな時に寝てしまったの。レイ様に寝顔を見られるなんて。ああ、恥ずかしい。このまま逃げ出したいくらい。逃げてもいいかしら。
「そんなに慌てなくてもいいのに。ごめんね。気持ちよさそうだったから、このまま眠らせてあげたかったんだけど」
今すぐにでも退散しようと隙を窺っていることなど知らないレイ様は、すまなさそうに私の乱れた髪を梳き、整えてくれます。頬に触れた手にドギマギしながらもそれどころではありません。
「い、いえ。寝てしまった私が悪いのですから、本当に申し訳ありません」
体を縮こませて謝る私に
「気にしなくていいのに。そんなことよりも、もうすぐ花が咲くよ。見逃さないようにしないと」
そう言って池を指し示しました。
反対の手はしっかりと私の手を握って。まるで、逃がさないよと言わんばかりに……
もしかして、ばれていたのかしら?
レイ様の顔を見ても、微笑みを湛えた表情からは何の感情も窺えません。
ぎゅっと握りこまれた手から、レイ様の絶対なる意志が伝わるようで、心が張り詰めごくりと喉がなりました。優し気な表情なのに……裏腹な気持ちを感じてしまうのは、私の気のせいでしょうか?
理解しがたい感情を振り払うように、池に目を向けました。私たちは花を観に来たのです。本来の目的を忘れるところでした。
豊かに茂った緑の葉の合間から蕾がいくつも顔を出しています。
朝日が昇る直前、固く引き結んだ花びらが綻んでくる時間まで、ほんの少し。
「冷えてきたね。もうちょっと、こっちにおいで」
そういえば……さっきよりも寒くなったような。
ぶるっと寒さで震えると思わず腕をさすりました。明け方が一番冷えるというのは本当ですね。
私の仕草を見逃さなかったレイ様が、起きた拍子に離れていた隙間を埋めるように、腰に手を当て私を引き寄せました。
「やっぱり、冷えてるね」
私の身体を抱きしめながら、心配そうな声が落ちてきます。
足元から冷気が立ち上り体を冷やしてしまったようです。冬の寒さよりはましですけれど、昼との寒暖の差がある分寒さへの調整が難しい。
「レイ様の方が冷えますよ。私は大丈夫ですから」
私の身の心配より、レイ様の身体が大切です。いつもよりも厚手のシャツにコートを羽織っていらっしゃいますが、それでも十分とは言えないかもしれません。
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途中で言葉が途切れて思案気な顔をしたと思ったら
「ほら、こうするとお互いに温かいよね? これなら風邪をひく心配はないんじゃない?」
抱き寄せた身体を腕の中に閉じ込めるように抱きしめたレイ様。冷えた私の身体を温めてくれる優しいレイ様。
温かい。
確かにそうなのですが。
レイ様、過保護すぎませんか?
そう問いかけようとレイ様を見上げると私を見つめるなんとも幸せそうなレイ様の眼差しに言葉を失いました。溶けてしまうのではないかと感じるくらいの甘いまなざしに、ドキドキと胸が高鳴りざわつく気持ちを抱えたまま、レイ様から目が離せませんでした。
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