64 / 195
もう少し、このままでⅡ
しおりを挟む
「ローラ。明日は何か予定は入ってる?」
「いいえ。特には」
王宮に上がるときには『予定通りに進まない可能性もあるから、次の日は大事な用事はいれない方がいいわよ』とディアナから聞いていたので、その通りにしています。
「よかった。だったら、今夜は泊まったらいいよ」
胸をなでおろすようなホッとした声と微笑み。
思いもかけない問いかけに、私は思わずレイ様を見つめました。
「あの……そんな急に言われても、ちょっと困ります。レイ様、唐突ではありませんか?」
「ああ。ごめん」
なんの脈絡もなくもなく発せられた言葉に、バツが悪そうな顔でレイ様が謝ります。
「ちょっと歩こうか」
場の雰囲気を変えたかったのか、レイ様がそっと下ろしてくれました。手をつなぐとレイ様に引かれるようにゆっくりと歩き出したのですが、方向が違うような気がするのですけれど。北の宮から遠ざかっているような……
「レイ様? 珍しい花を見せてくださるはずでは? 北の宮は反対方向ですよ」
少しずつ遠ざかる建物を振り返りながら聞いてみました。
「うん。花は明日見よう。実はその花は早朝に咲き始めて昼には閉じるらしいんだ。だから今見に行っても見頃は過ぎているから」
知りませんでした。自分の都合を優先させてしまったから、迷惑をかけてしまったのかしら。
「申し訳ありません」
「いや。ローラが謝ることじゃないよ。俺がきちんと伝えなかったからね。それに俺も初めて見るんだ。北の宮に行くこともそうそうないからね。今の時間だって花は見れるけれど、せっかくならば、一番見頃の時間帯に行った方がいいかなって思い直したんだ」
「そうだったのですね」
それでさっきの泊まることにつながるんですね。やっと理解できました。
早朝に咲いて昼には花が閉じる。そんな植物があったのですね。今の閉じた花の様子も見てみたい気もしますけれど、たぶん言ってはいけないですよね。
「そういうことだから戻って、部屋の中でゆっくりしよう。エルザたちがお茶を用意してくれるよ」
一番、きれいな瞬間を見てもらいたのでしょう。
レイ様の横顔を見ながら、余計なことは言わない方がいいかなと心の中で納得しました。
「ローラ、俺とつきあわないか?」
会話が途切れた合間に、足を止めたレイ様の口からこぼれた台詞。
一瞬だけ力が入ってぎゅっと握りしめられた手に熱を感じ、レイ様を見上げると真剣な瞳とぶつかりました。
熱を帯びた瞳に縫い留められたように動けなくなりました。
「いいえ。特には」
王宮に上がるときには『予定通りに進まない可能性もあるから、次の日は大事な用事はいれない方がいいわよ』とディアナから聞いていたので、その通りにしています。
「よかった。だったら、今夜は泊まったらいいよ」
胸をなでおろすようなホッとした声と微笑み。
思いもかけない問いかけに、私は思わずレイ様を見つめました。
「あの……そんな急に言われても、ちょっと困ります。レイ様、唐突ではありませんか?」
「ああ。ごめん」
なんの脈絡もなくもなく発せられた言葉に、バツが悪そうな顔でレイ様が謝ります。
「ちょっと歩こうか」
場の雰囲気を変えたかったのか、レイ様がそっと下ろしてくれました。手をつなぐとレイ様に引かれるようにゆっくりと歩き出したのですが、方向が違うような気がするのですけれど。北の宮から遠ざかっているような……
「レイ様? 珍しい花を見せてくださるはずでは? 北の宮は反対方向ですよ」
少しずつ遠ざかる建物を振り返りながら聞いてみました。
「うん。花は明日見よう。実はその花は早朝に咲き始めて昼には閉じるらしいんだ。だから今見に行っても見頃は過ぎているから」
知りませんでした。自分の都合を優先させてしまったから、迷惑をかけてしまったのかしら。
「申し訳ありません」
「いや。ローラが謝ることじゃないよ。俺がきちんと伝えなかったからね。それに俺も初めて見るんだ。北の宮に行くこともそうそうないからね。今の時間だって花は見れるけれど、せっかくならば、一番見頃の時間帯に行った方がいいかなって思い直したんだ」
「そうだったのですね」
それでさっきの泊まることにつながるんですね。やっと理解できました。
早朝に咲いて昼には花が閉じる。そんな植物があったのですね。今の閉じた花の様子も見てみたい気もしますけれど、たぶん言ってはいけないですよね。
「そういうことだから戻って、部屋の中でゆっくりしよう。エルザたちがお茶を用意してくれるよ」
一番、きれいな瞬間を見てもらいたのでしょう。
レイ様の横顔を見ながら、余計なことは言わない方がいいかなと心の中で納得しました。
「ローラ、俺とつきあわないか?」
会話が途切れた合間に、足を止めたレイ様の口からこぼれた台詞。
一瞬だけ力が入ってぎゅっと握りしめられた手に熱を感じ、レイ様を見上げると真剣な瞳とぶつかりました。
熱を帯びた瞳に縫い留められたように動けなくなりました。
2
お気に入りに追加
513
あなたにおすすめの小説
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
虐げられ令嬢、辺境の色ボケ老人の後妻になるはずが、美貌の辺境伯さまに溺愛されるなんて聞いていません!
葵 すみれ
恋愛
成り上がりの男爵家に生まれた姉妹、ヘスティアとデボラ。
美しく貴族らしい金髪の妹デボラは愛されたが、姉のヘスティアはみっともない赤毛の上に火傷の痕があり、使用人のような扱いを受けていた。
デボラは自己中心的で傲慢な性格であり、ヘスティアに対して嫌味や攻撃を繰り返す。
火傷も、デボラが負わせたものだった。
ある日、父親と元婚約者が、ヘスティアに結婚の話を持ちかける。
辺境伯家の老人が、おぼつかないくせに色ボケで、後妻を探しているのだという。
こうしてヘスティアは本人の意思など関係なく、辺境の老人の慰み者として差し出されることになった。
ところが、出荷先でヘスティアを迎えた若き美貌の辺境伯レイモンドは、後妻など必要ないと言い出す。
そう言われても、ヘスティアにもう帰る場所などない。
泣きつくと、レイモンドの叔母の提案で、侍女として働かせてもらえることになる。
いじめられるのには慣れている。
それでもしっかり働けば追い出されないだろうと、役に立とうと決意するヘスティア。
しかし、辺境伯家の人たちは親切で優しく、ヘスティアを大切にしてくれた。
戸惑うヘスティアに、さらに辺境伯レイモンドまでが、甘い言葉をかけてくる。
信じられない思いながらも、ヘスティアは少しずつレイモンドに惹かれていく。
そして、元家族には、破滅の足音が近づいていた――。
※小説家になろうにも掲載しています
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
選ばれたのは私以外でした 白い結婚、上等です!
凛蓮月
恋愛
【第16回恋愛小説大賞特別賞を頂き、書籍化されました。
紙、電子にて好評発売中です。よろしくお願いします(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾】
婚約者だった王太子は、聖女を選んだ。
王命で結婚した相手には、愛する人がいた。
お飾りの妻としている間に出会った人は、そもそも女を否定した。
──私は選ばれない。
って思っていたら。
「改めてきみに求婚するよ」
そう言ってきたのは騎士団長。
きみの力が必要だ? 王都が不穏だから守らせてくれ?
でもしばらくは白い結婚?
……分かりました、白い結婚、上等です!
【恋愛大賞(最終日確認)大賞pt別二位で終了できました。投票頂いた皆様、ありがとうございます(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾⁾応援ありがとうございました!
ホトラン入り、エール、投票もありがとうございました!】
※なんてあらすじですが、作者の脳内の魔法のある異世界のお話です。
※ヒーローとの本格的な恋愛は、中盤くらいからです。
※恋愛大賞参加作品なので、感想欄を開きます。
よろしければお寄せ下さい。当作品への感想は全て承認します。
※登場人物への口撃は可ですが、他の読者様への口撃は作者からの吹き矢が飛んできます。ご注意下さい。
※鋭い感想ありがとうございます。返信はネタバレしないよう気を付けます。すぐネタバレペロリーナが発動しそうになります(汗)
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる