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45話 転移魔法とコロポックル

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「いくわよ! 私の編み出した転移魔法!」

 私はホーンアリゲーターデビルに果敢にアタックしに行く! 近づくにつれその巨大さが浮き彫りになるけど躊躇ってはいられない!

「マスター!?」

 グラハムが私を見て驚いた。 私の為に魔物を放すまいと更に力を込める。


「グアアロロロロオッ!」

 ガギン! 魔物の咆哮と共に鈍い音がした。 
 
 魔物の尾をおさえていたグラハムの左腕が力負けして肩口あたりから外されてしまったのだ。

「ぐっ。 うおぉ!?」

 それにより口は開けられないけど態勢を立て直したホーンアリゲーターデビルの尾が私に対して振り上げられる!

「マ、マスター!!」
「心配は無用よ!」

 その時にはすでに魔物より速くその身体に触れる事が出来ていた。 私は魔法の言葉を紡ぐ。

「収納! そして出てきてグラハム!」

 グラハムが出現し身構えて私を庇おうと動く。 ......さっきので魔物と一緒に消えちゃったからね。

「もう大丈夫よグラハム。 外された鎧は平気?」
「え? あ、それは戻せますから。 それより魔物はどこに......」

 警戒しているグラハムに私は胸を張って言った。

「私の『転移魔法』ではこ丸の中よ」


 何が転移魔法だ。 無理やり相手を私に収納しただけではないか!

 頭の中でははこ丸のお説教が続いている。
アイテムボックスとして生を受けて以来こんな扱われ方は初めてだとかなんとか言ってるけど、

「はいはい。 むしろアイデアを誉めてほしいわよね。 新たな発見だった訳でしょ?」
(しかしだな。 このような扱いはヨーダにさえ......)
「とりあえず後で聞いてあげるから」

 私ははこ丸との会話を打ち切った。 だって今はそれどころじゃないし。

 現在テントの中には私とジョンと小人さんがいる。 グラハムは左腕を回収して元通りになったあとはこ丸の中に入ってもらった。

 私は今日何度目かの着替えをさせてもらい本題にはいる。

「で、どうだったのジョン?」
「さすがにこれは無茶ですよマスター」

 ネズミと小人さんでは言葉が通じる事はなかった。 だけどジョンの身振り手振りでこちらに敵意がない事は伝わっているらしい。

「うん、頑張った頑張った」

 私はジョンを労い、濡れていた小人さんをタオルで優しく拭いてあげた。 小人さんは引きずっていた荷物でシートが汚れないよう端の方にいて気を利かせてくれている。

「しかし困ったわね」

 言葉の壁はやはり厚い。
お辞儀をしてお礼を述べているのは何となくわかるものの、それ以外はさっぱりなんだものね。 
 変わった服に、運んでいた木箱のようなもの。 傘の代わりにふきの葉っぱを使っていた小人さん。

 向こうもこちらを色々見渡していたのだろう、突然何かに気付くとそちらの方に歩いて行った。
 そこにあるのは......

「え? リ・将棋に興味あるの?」
(さすがにそれはないだろう)

 いや、そりゃ私だってそう思うけど......

 だけど小人の彼女はリ・将棋を確認して顔をほころばせている。 可愛い。
 そしてそのまま何かを呟き始めた。

(む。 魔力の流れを感じる。 魔法を使うようだな)
(え? 大丈夫なの?)
(雰囲気から物騒な魔法ではないと思うが......)

 彼女の祈るようなしぐさの両手から光が発生し、リ・将棋の盤へと降り注ぎ消えていく。

 それを見届けて小人の彼女は私のそばにきて手を引っ張る。 しかし言葉はやはり分からない。

「うーん、やっぱりリ・将棋がやりたいのかしら。 じゃあ用意しますね?」

 私はよく分からないまま彼女の前へリ・将棋一式を運ぶため持ち上げた。

 その瞬間聞いた事のない声が私の耳へと届く。

「助けていただいてありがとうございました。 私の声は聞こえておりますでしょうか?」

 !? 私は声のした方を見る。

「え? 今しゃべったのはあなた...... ですか?」
「はい」

 なんで? 突然会話が可能になってるんだけど。

「今何をされたんですか?」

 私は小人さんの正面に座りリ・将棋を横に置いた。

「◎△$×¥●&%#」

 あれ? 何を言っているか分からなくなったわ。

(リノ。 おそらくリ・将棋盤に秘密がある)

 確かに小人さんもそれを指差して何か言っている感じだ。

 ジェスチャーから察するに...... リ・将棋盤を私と小人さんの間に置いて、そこに触れたままにすればいいの?

 小人さんも盤面に触れた。

「これで会話が可能なはずです。 難しい言葉も理解できる言葉になって聞こえますから」

 ニコリと微笑む小人さん。 まるでそこに花が咲いたようだ。 ジョンも寄ってきて盤面に触れた。 どうやら会話に参加する気みたい。

 すごいや! オイラにもわかる! と驚いている。

「改めてお礼を。 私は『コロポックル』のシクルゥと申します。 この度は命の危機を救っていただき深く感謝致します」

 コロ...... なんとかのシクルゥさんはちょこんと座り深々と頭を下げた。

 !? これは優雅だわ! 優雅さで言えばあの麗しの君シスリさんに負けてない!

(酒による紛い物だったがな)
(まぁ...... 確かに元、麗しの君だけどね)

 でもこの彼女は違うわ。 きっと育ちのいいお嬢様よ。 
 話を聞くとこのシクルゥさん、コロポックルという種族の王の娘との事だった。

 つまり...... 王女様じゃない!

(育ちがいいとか以前の問題だったな)
(そうね)

「......でもなんでそんな方がお供も連れずに荷物を引きずってあんなとこ歩いてたんです?」

 ジョンが疑問を口にした。
 確かに。 確かに最もな質問だとは思うけど、なんでラットマウスのジョンがそんな人間社会、それも王族の習慣みたいな事を知っているのかしら。
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