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69話 キョウレイ、策を得て牙を研ぐ
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「まずは余が盟主の肩書きを得て戦いを起こせる大義名分を得る。
その為に王都で実権を握るキドウと現在の状況を利用する......か」
基本領主は近辺の領主達と協力関係にあり、その中でも代表とも言える立場の者が盟主と呼ばれている。
この辺りではキョウレイの他に三人の領主がおり、中でも広い領地を持つオルウェンという男が盟主になっていた。
動員できる兵力はどこも似たり寄ったりではあったが、キョウレイ以外の領主は王国に忠誠を誓っている。
なのでいざ行動を起こせば他の領主達は盟主側に付き敵に回る可能性が高く、そうなった場合彼我の戦力差が約三倍になり苦戦は免れない。
それが行動を起こせない理由になっていた。
だがショウホがキョウレイの野心を実現させる為の計画を持ち込み、見込みがあると考えたキョウレイはショウホをその場で軍師に任命。
自らを余と呼称し始めた。
~回想~
「現在、盟主オルウェンの所には魔導兵団の長ライミーネが訪れています」
「何......? 魔導兵団の長なら王国の重鎮ではないか。
それが都を離れてこのような辺境に?」
「はい。王自らの命による結界の調査だという事です」
キョウレイは首を傾げる。
「結界の調査......?
今までそんな動きがあったなど記憶にはないがな」
「はい。結界沿いで不穏な動きがあったというので今回の調査という形になったようですが」
「......余の動向の調査が狙いか?
いや王が余の動きを気にするとは到底思えん。
オルウェンの若造が呼んだとも考えにくい」
とは言え、兵力差三倍に加えて魔導兵団の長までいるとなると余計に手が出しづらくなるので面白い話ではない。
「言葉通り結界調査の過程で寄った程度のものに過ぎませんからこれ自体はさほど気にかける必要はありません。
しかし別の角度から見るとこれはこちらにとって好機となり得るかと」
「聞こう」
キョウレイはショウホの言い方に興味を持った。
「ライミーネの派遣を画策したのが王ではないと考えた場合です」
「......それは王国の忠臣による計画か?」
「いいえ」
「なるほど......権力闘争か」
キョウレイはショウホの言っている意味をすぐに理解する。
「それでこちらの好機とは?」
「魔導兵団長を都から追い出せるのですから、相手はおそらく近衛か宰相辺り。 私は都で飛ぶ鳥を落とす勢いの近衛騎士団長キドウの画策と睨んでいます」
「ふむ」
キョウレイにもショウホの計画が見えてきた。
「ライミーネとオルウェン達がこの地でキドウ達悪臣の排斥を計画している。
それをまとめて阻止するので、先に閣下をこの地の正式な盟主と認めて欲しいとキドウに嘆願するのです。
贈り物も用意すれば確率は更に上がります」
「向こうにとっても忠臣は邪魔なだけ。か」
「はい。この地は都から離れているので気にもかけず認めてくるかと」
キョウレイは言い方を変える。
「我らは奴等の王国に対する反乱計画を入手し忠臣キドウに報告。
そしてこの功績で盟主となり賊軍を殲滅させる。そうだな?」
「はい。それが閣下の大義名分になります。
また他の領主の兵士にも少なからず動揺を与えられます」
キョウレイは迷わず採用し、既に使者も出した。
後は戦力の強化になるのだがそこへキョウレイの側近が報告に来る。
「キョウレイ様。ショウホ軍師より連絡。
予想した場所にて遺跡が発見されたとの事です」
「二の矢が来たか。最大限ショウホを支援しろ」
「はっ!」
出ていく側近の背中を見ながらキョウレイは自身に追い風が吹いているのを感じていた。
その為に王都で実権を握るキドウと現在の状況を利用する......か」
基本領主は近辺の領主達と協力関係にあり、その中でも代表とも言える立場の者が盟主と呼ばれている。
この辺りではキョウレイの他に三人の領主がおり、中でも広い領地を持つオルウェンという男が盟主になっていた。
動員できる兵力はどこも似たり寄ったりではあったが、キョウレイ以外の領主は王国に忠誠を誓っている。
なのでいざ行動を起こせば他の領主達は盟主側に付き敵に回る可能性が高く、そうなった場合彼我の戦力差が約三倍になり苦戦は免れない。
それが行動を起こせない理由になっていた。
だがショウホがキョウレイの野心を実現させる為の計画を持ち込み、見込みがあると考えたキョウレイはショウホをその場で軍師に任命。
自らを余と呼称し始めた。
~回想~
「現在、盟主オルウェンの所には魔導兵団の長ライミーネが訪れています」
「何......? 魔導兵団の長なら王国の重鎮ではないか。
それが都を離れてこのような辺境に?」
「はい。王自らの命による結界の調査だという事です」
キョウレイは首を傾げる。
「結界の調査......?
今までそんな動きがあったなど記憶にはないがな」
「はい。結界沿いで不穏な動きがあったというので今回の調査という形になったようですが」
「......余の動向の調査が狙いか?
いや王が余の動きを気にするとは到底思えん。
オルウェンの若造が呼んだとも考えにくい」
とは言え、兵力差三倍に加えて魔導兵団の長までいるとなると余計に手が出しづらくなるので面白い話ではない。
「言葉通り結界調査の過程で寄った程度のものに過ぎませんからこれ自体はさほど気にかける必要はありません。
しかし別の角度から見るとこれはこちらにとって好機となり得るかと」
「聞こう」
キョウレイはショウホの言い方に興味を持った。
「ライミーネの派遣を画策したのが王ではないと考えた場合です」
「......それは王国の忠臣による計画か?」
「いいえ」
「なるほど......権力闘争か」
キョウレイはショウホの言っている意味をすぐに理解する。
「それでこちらの好機とは?」
「魔導兵団長を都から追い出せるのですから、相手はおそらく近衛か宰相辺り。 私は都で飛ぶ鳥を落とす勢いの近衛騎士団長キドウの画策と睨んでいます」
「ふむ」
キョウレイにもショウホの計画が見えてきた。
「ライミーネとオルウェン達がこの地でキドウ達悪臣の排斥を計画している。
それをまとめて阻止するので、先に閣下をこの地の正式な盟主と認めて欲しいとキドウに嘆願するのです。
贈り物も用意すれば確率は更に上がります」
「向こうにとっても忠臣は邪魔なだけ。か」
「はい。この地は都から離れているので気にもかけず認めてくるかと」
キョウレイは言い方を変える。
「我らは奴等の王国に対する反乱計画を入手し忠臣キドウに報告。
そしてこの功績で盟主となり賊軍を殲滅させる。そうだな?」
「はい。それが閣下の大義名分になります。
また他の領主の兵士にも少なからず動揺を与えられます」
キョウレイは迷わず採用し、既に使者も出した。
後は戦力の強化になるのだがそこへキョウレイの側近が報告に来る。
「キョウレイ様。ショウホ軍師より連絡。
予想した場所にて遺跡が発見されたとの事です」
「二の矢が来たか。最大限ショウホを支援しろ」
「はっ!」
出ていく側近の背中を見ながらキョウレイは自身に追い風が吹いているのを感じていた。
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