【R18】美少女転生

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第二章 「魔法少女は報われない」

第七十二話 「奇襲」

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 気が付くと、少年時代によく遊んだ公園に俺はいた。
 昔は広く感じたものだが、成長した今となって見渡せば、遊具も数えるほどしかなく、都心の土地を苦労して確保して作ったような手狭で小さな公園だ。
 視線を移すと、そこには死んだはずの母親と、楽しそうな表情でその母親に甘える子供の頃の俺。
 この時点で、あぁ夢なんだなと、置かれた状況に思い至る。
 手作りのおにぎりとお茶をもって公園で食べている自分たち親子の様子をみて、そこはかとない懐かしさと、切なさが同時に押し寄せる。

 母子家庭で母親はいつも忙しそうにしていたし、何よりも金がなかった。そんな状況もあって、周囲の家庭がするような家族旅行なんて到底できなかったからな。
 不遇の息子への母親からの愛情だったのだろう。
 近くの公園まで出かけて、そこで昼飯を食べるなんていうのが、当時の俺にとっては唯一のレジャーだったわけだ。
 子供だましのなんてことはない散歩だが、ピクニック気分でいつもと違う感じで食べる飯がうまかったのを思い出す。

 しばらくすると、子供の頃の俺は飯を食い終わったのか、当時お気に入りだったブランコの方へとかけていく。
 自分で言うのもなんだが、当時の俺はスリムだったし、言うほど不細工ってわけでもなかった。
 見た感じも貧乏でありながらも、それなりに身綺麗な恰好をしていた。やっぱり世話をしてくれる人がいるってのは違うよな。
 母親も近所では美人で評判だったからな――まぁ、美人薄命だったわけだが。

 そんな懐かしい母親が、笑顔で子供の頃の俺を眺めている。そして俺は、偲ぶかのようにその横顔をジッと見つめる。
 すると、俺の存在に気が付いたように、母親がこちらにふと視線を向けてきて……そして俺は固まった。
 きっともう少し年齢を重ねれば、こんな感じだろうなと思うくらいに。

 ――似ていたのだ。女の俺の容姿に。

 決して、忘れていたわけではない。でも、いま思い出したのだ。どこか疲れていて、そして哀しそうで、儚げで……それなのに優しい母親の笑顔。
 それは、どんなに手を伸ばしても、もう届くことのない笑顔だ。
 そうだった。思い出した。いつもこうだった。
 なのに、俺は手間ばっかりかけさせて、馬鹿やってたな。できることなら、あの頃に戻って親孝行の一つでもしてやりたいな。

 ――不意に体が揺すられる感覚を覚える。

結衣ゆいさーん。起きてくださーい」

 我に返り、思わずハッと気が付くと、眼前にはゆるふわお嬢様ヘアの可愛らしい、そしてどこか申し訳なさそうな困り顔の美少女。
 その吐息の届きそうなくらいのあまりの近さに、思わず一瞬だけ呼吸が止まる。どうでも良いけど、お肌プルプルでキメとか超細かいね。それと何だかいい香りが…。

「大丈夫ですか?」
 と、そんな佑奈ゆながくすくすと人懐こい笑みをみせる。

 白いほっぺたにうっすらピンクのチークが映えて、とても可愛らしい笑顔だ。思わず本能のままにムシャぶりつきたくなっちゃいますって。はぁはぁ。

 それに対し俺も誤魔化すように、
「う、うん。大丈夫だよ。何だかゴメンね~」と、飛び切りの笑顔で軽く頭をかく。

 クッションの効いた座席に座りなおしながら、自分の小さな膝の上に置かれたプログラムの冊子に目を落とし、今の状況を思い出す。
 ここは、区営の音楽ホール。
 そして俺は、人生で初のクラシックコンサートに誘われたのだ。いやぁ途中から爆睡でしたね。

「まさか四楽章になっても起きないなんて思わなかったです。最後の拍手もアンコールもすごかったのに…」
「え、あ、ちょっと寝不足で…はははっ」

 座っていた座席を後にしつつも、軽くよだれが垂れていないかチェックする。
 こういうのは乙女として大事なポイントだからね! 一緒にいる佑奈ゆなにも迷惑かけちゃうからね! って爆睡してた時点で迷惑かけてるけど。

結衣ゆいさん。もし良かったら、雑貨屋さん見ていきませんか?」
「え、あぁ、うん。いいよー」

 佑奈ゆなの趣味はよく知らないが、最近の雑貨は面白いデザインのものが多いよね。よく考えるなぁと感心してしまうよ。
 昔はそんなもの、まったく興味がなかったのにな。

「何か欲しいものとか、決まってるの?」
 と、ホールのロビーに向かいながら、すぐ隣を歩く佑奈ゆなに話しかける

「えっとですね、松脂まつやにのケースが欲しくて」
「まつやに?」
「はい。弓に塗るためのものです」
「ゆみ? 弓道かなにか?」
「違いますよ。バイオリンの弓に塗るんです」
「へー。そんなものがあるんだ」

 なるほど、クラシックコンサートに誘われたのは、本人も楽器を弾くからということだね。いやぁ佑奈ゆなは、ホントお嬢様だわ。お嬢様かぁ。やっぱりお嬢様プレイは外せないよなぁ。
 楽器を弾いてる清楚なお嬢様が、強姦されちゃうストーリーなんか、ムフフ…。
 ほらほら、お嬢様の大事なところに、もうすぐ俺の汚いものが入っちまうぞ! みたいな感じ? それで無理やりに剛直を突き刺して、中身をぐちゃぐちゃに蹂躙して…。

「えっ! ちょっと! 何あれ!?」

 少し前を歩く佑奈ゆなの華奢で小さな背中を眺めながら、そんな不埒な妄想をしていると、女の悲鳴混じりの叫び越えが突然ロビーに響く。
 声につられて、悲鳴のした方をみると――――。

 ――そこには「イソギンチャク」がいた。そう、あの普段は海にいるやつだ。

 で、なぜ驚いているのかというと、サイズがちょっと大きいかな……いやかなり大きいかな。軽自動車くらい? 普通にあり得ないだろ。
 ふむ。拘束プレイの次は触手プレイってわけだね。プレイの内容が定番だね。

 などと9割くらい現実逃避しながら考えていると、
「ゆ、結衣ゆいさんっ…!」と、佑奈ゆながギュッと腕にしがみついてくる。

 その表情は――真っ青でカタカタと震えている。かなりビビってるな。うん。大丈夫だ。俺もビビってる…つい漏らしてしまいそうなくらいにはね。
 だがいい……いや、良いぞ! ふっくらとしたものが腕に当たる、この感触!
 小ぶりの控えめなのも好きだよ。華奢で小柄で線も細い感じなのに、ちゃんと柔らかいところは、しっかり柔らかいってのも良いよね。
 しかも、お嬢様属性付きの飛び切り美少女だなんて、男の頃の俺だったら絶対に味わえなかった。ムフフ…。

 で、ズルズルとそのイソギンチャクらしき巨大な生命体が這うように近づいてくる――――いや、その前にお前そうやってここまで来たのか? トラックか何かで運ばれてきたんじゃないのか?

佑奈ゆな。行こう」

 ここにいても、恐らく死亡フラグが確定するだけなので、まずは安全そうな場所まで移動しようと振り返ると――――もう一匹いた……くっ悪意を感じるね。
 とっさに周りに助けを求めようとしたが、すでに人の気配はない。誰か警察は呼んでくれたか? まさか見殺しとかないよね。

「ど、どうしよう……結衣ゆいさん」

 肩を震わせ、今にも泣きだしてしまいそうな表情の佑奈ゆな
 これまでの経緯から考えて、おそらくこのイソギンチャクモンスターの目標は自分だろう。そう思うと佑奈ゆなを巻き込んでしまったことに、申し訳なさを感じる。
 それにしたって、こんな騒ぎを起こしてしまって向こうのやつらも大丈夫なのか?

 ――戦うか。

 でもこの場で変身すると、後で佑奈ゆなへの説明が面倒になりそうだし、変身すると処女膜が復活するのも、後が痛いので可能であれば遠慮したい。そう――いずれにしても後が大変だ。
 なら、なんとかこのまま逃げ切るだけだ。見た感じ奴らの移動スピードはそれほど速くない。そうであれば、普通にダッシュすれば、難なく横をすり抜けられるはずだ。

「走ろう!」

 そう言って、コクコクと無言でうなずく佑奈ゆなの手を軽く引くと、イソギンチャクの触手がウネウネ動いているのが少し気持ち悪いが、横をすり抜けるために構わず一気に近づく。
 そして次の瞬間――――触手が大きく伸びたかと思うと、隣にいた佑奈ゆなの姿が突然消えた。

佑奈ゆなっ!?」
「イヤッ! 結衣ゆいさんっ!」

 慌てて振り返ると、触手によって体を絡めとられ高く掲げられた状態の佑奈ゆな
 くっ…まずい。どうする? 助けられるか? でも、どうやって? 助けを呼ぶために、ここは一度逃げるか?
 やつらの目標はあくまで自分。そして人質は生かしておいてこそ価値がある。

 ――だから彼女は捕まっても殺されることはないだろう。

 いやいやいや待て。このまま見捨るなんてできない。見捨てたら恐らく待ち構えているのは触手プレイだ。そんなのトラウマPTSD確定だろ。今の時点でも十分にヤバいくらいなのに。
 それに佑奈ゆなは自分の巻き添えをくったんだ。それでなくたって、自分にとっては仲良くしてくれる数少ない友人だ。
 でも、もし2人とも捕まったら誰が助ける? あぁっ! もう面倒くさい! 戦うぞ! だって、こんなのもうやるしかないだろ!? 後は野となれ山となれだ!
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