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第一章 「縛りプレイはデフォルトですか?」
第三十八話 「考察」
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俺が秋彦にエロいことを許可した理由は2つある。
まず一つ目が、もはや言うまでもない事だが、「エロいこと」をしない事によって発生する飢えと渇き対策の役割を担ってもらうためだ。
あの苦しさはできることならもう二度と味わいたくないし、今後もこれは何としても避けたい。せいぜい俺の糧となってもらおう。
現状で俺にとっては致命的なこの問題への対策は、悠翔だけが事実上の命綱となっている。
つまり、これは悠翔のスペアという位置づけにもなる。
そして俺の命を狙っている奴らに、悠翔との関係性が知られていた場合、残念だが今後あいつの身の回りは危険な状況に陥る可能性がある。
恐らく、今の時点でその可能性は十分に高いと考えておかなくてはならないだろう。
もし仮にいま、悠翔本人の身に何かが起こって――最悪死亡したとして――エロい事ができなくなると、この呪われた体を持つ俺にとっては文字通りの死活問題となる。
二つ目が、下手に秋彦に禁欲を強制した結果、奴が我慢できなくなって再び暴走することを防ぐためだ。
こちらは既に前科があるので、何も対策なしというのは逆にあり得ない。
また同じように心臓麻痺で倒れられるのは、ハッキリ言って迷惑だし、いつも助けられるとは限らない。次は本当に死ぬかもしれない。
俺が頭の中を整理しながら、ウムウムと考えていると、
「ひなさん。ダメっすよ。もっと自分を大事にしなきゃ」と、ドヤ顔のリアルオークが口走る。
(……お前の口がそれを言うか)
確か前の時もそんなこと言ってたよな…しかも、なんだ、その言ってやったぜみたいな顔は。
それで、前に酷い結果になったのはもう忘れたのか? 貴様はトリ頭なのか?
ホントにこいつは何も考えずに生きてるって感じだよな。
一応まっとうな信念は吐くのに、その言葉の裏に全く信ぴょう性が置けないってのは、ある意味呆れを通り越して怒りがわいてくるな。
だから俺は、そんな秋彦に対してスッと目を細めると、
「秋彦さん。お気持ちは嬉しいですが、また同じ事したら、もう次はないですよ?」
と、氷のように冷たい表情で諭してやる。
「ひ、ひなさん。こ、怖いっす…」
途端に目に見えて小動物のように怯える秋彦に、思わずため息がでる。
まぁこいつのこういうところは、今に始まったわけではないけどな…。
「本当に我慢できるんですか? 無理ですよね? できないことは言っちゃダメですよ?」
「す、す、す、すんません。や、やっぱり…無理っす」
宜しい。若干言わせた感もあるが、これくらいが丁度いい。
少し脅しておくくらいでないと、こいつはすぐに調子に乗るからな。
「秋彦さん。それと私、昨日色々あってちょっと疲れてるんで、一眠りしてもいいですか?」
「えっ、マジっすか?」
「……本気で眠るつもりなんで、絶対に手は出さないでくださいね。後でならいいですから」
こいつ、いま絶対エロい事しようと考えたよな。声が上ずってたし。
寝てるところをエロい事されて目覚めるなんて……それはそれで美味しいシチュエーションだな…。
いやいや、いかん。俺は何を考えているんだ。
昨日もロクに睡眠をとってないわけで、疲れて思考が回ってないだけだ。きっとそうだ…ということで、挙動不審にオロオロとする秋彦を無視してベッドの上に横になる。
「あ、ひなさん」
秋彦が何か話しかけてきたので、射殺すような目線だけでそちらを見る。
本気の本気でエロい事なら無しだぞ。強姦魔にやられまくったおかげで、腹も減ってないしな。
すると、こちらの視線に気が付いた秋彦はスッと目をそらすと、
「あ、俺、ちょっと出かけて来るっすから…」と、それだけ告げて、そそくさと準備を始めて部屋を出ていく。
玄関を開ける音と、ドアの締まる音、外からガチャガチャと鍵を閉める音。
ふう。やっと安心してゆっくりと睡眠がとれそうだ。誰かが部屋を出入りする音ってなんかいいよねー。一人暮らしだとそういうのないから。
そして、俺はその音を最後に聞きながら、自然と意識を手放しそのまま眠りに落ちるのだった。
目が覚め、気が付くと窓の外は少し薄暗くなっていた。寝起きで体がフラつく感覚もあるが、頭も少しはスッキリした感じだ。
さっと部屋を見渡すが、薄暗くなった部屋に秋彦が戻ってきた形跡はなかった。俺はそのままベッドで横になりながら、改めて今までの状況を整理してみようと考える。
――まず、謎の金髪少女と黒人マッチョの件だ。
この二人は能力者と考えて間違いないだろう。閉鎖空間であるクロゼットから家の中に出入り可能である時点で、まず間違いない。
そして金髪少女との会話の内容を思い出しながら、そのとき違和感を感じたことを思い出す。
会話が最後まで終わっていないのに、その内容がコロコロと変わっていたような気がする。まるでこちらの考えていることが、そのまま伝わっていたかのような感覚だ。
顔の表情から考えていることを読み取ったというよりは、読心術というか、こちらの考えていることが分かっているような…。
もしそうであるならば、俺の能力がヤッた相手の命を奪うということはバレている可能性が高い。そしてそれを知った上で、役立たずのゴミというレッテルを貼ってきたのだろう。
謎の金髪少女からしてみたら、俺の能力は利用価値が薄いと判断されたようだが、暗殺とかにはもってこいだと思うんだがなぁ。
――そして次に強姦魔、通称【不死身】と謎の女の件だ。
この二人が関係者であることは、あの時の会話の流れからもほぼ間違いないだろうし、そして恐らくこの二人は同じ組織に所属していると考えてよいだろう。
そして【不死身】は、俺の能力についての内容を知っていた。
俺の心を読んだ謎の少女が【不死身】に情報を流したのか、または【不死身】達が所属する組織が何らかの方法で情報を得たか。
どちらかは、いまのところ判断がつかないが、もし謎の金髪少女と【不死身】が同一組織の構成員であった場合、少なくとも4人以上を同時に動かせるそれなりの規模の組織に命を狙われているということだ。そう考えると頭が痛い。
そして謎の女の能力だが、予想するに俺が死んでいた場合に活躍する能力といえばただ一つ。
――証拠隠滅だ。
俺も【不死身】が死んだ場合、その死体をどうするかについては頭を悩ませた。まあ、結果的にそうはならなかったが。人間一人の死体を誰にもバレないように処分するというのは、もともと考える以上に大変なことなのだ。
つまり今の俺は、極めてヤバい組織的な何かに、命を狙われているという事。しかも、証拠すら残らないように仕留めてくるような奴らにだ。
そして理由ははっきりとはわからないが、俺が異能を保有しているということが、関係していると考えてよいだろう。
まったくもって迷惑な話だよ。何でこうなったんだよ、ホントに…。
まず一つ目が、もはや言うまでもない事だが、「エロいこと」をしない事によって発生する飢えと渇き対策の役割を担ってもらうためだ。
あの苦しさはできることならもう二度と味わいたくないし、今後もこれは何としても避けたい。せいぜい俺の糧となってもらおう。
現状で俺にとっては致命的なこの問題への対策は、悠翔だけが事実上の命綱となっている。
つまり、これは悠翔のスペアという位置づけにもなる。
そして俺の命を狙っている奴らに、悠翔との関係性が知られていた場合、残念だが今後あいつの身の回りは危険な状況に陥る可能性がある。
恐らく、今の時点でその可能性は十分に高いと考えておかなくてはならないだろう。
もし仮にいま、悠翔本人の身に何かが起こって――最悪死亡したとして――エロい事ができなくなると、この呪われた体を持つ俺にとっては文字通りの死活問題となる。
二つ目が、下手に秋彦に禁欲を強制した結果、奴が我慢できなくなって再び暴走することを防ぐためだ。
こちらは既に前科があるので、何も対策なしというのは逆にあり得ない。
また同じように心臓麻痺で倒れられるのは、ハッキリ言って迷惑だし、いつも助けられるとは限らない。次は本当に死ぬかもしれない。
俺が頭の中を整理しながら、ウムウムと考えていると、
「ひなさん。ダメっすよ。もっと自分を大事にしなきゃ」と、ドヤ顔のリアルオークが口走る。
(……お前の口がそれを言うか)
確か前の時もそんなこと言ってたよな…しかも、なんだ、その言ってやったぜみたいな顔は。
それで、前に酷い結果になったのはもう忘れたのか? 貴様はトリ頭なのか?
ホントにこいつは何も考えずに生きてるって感じだよな。
一応まっとうな信念は吐くのに、その言葉の裏に全く信ぴょう性が置けないってのは、ある意味呆れを通り越して怒りがわいてくるな。
だから俺は、そんな秋彦に対してスッと目を細めると、
「秋彦さん。お気持ちは嬉しいですが、また同じ事したら、もう次はないですよ?」
と、氷のように冷たい表情で諭してやる。
「ひ、ひなさん。こ、怖いっす…」
途端に目に見えて小動物のように怯える秋彦に、思わずため息がでる。
まぁこいつのこういうところは、今に始まったわけではないけどな…。
「本当に我慢できるんですか? 無理ですよね? できないことは言っちゃダメですよ?」
「す、す、す、すんません。や、やっぱり…無理っす」
宜しい。若干言わせた感もあるが、これくらいが丁度いい。
少し脅しておくくらいでないと、こいつはすぐに調子に乗るからな。
「秋彦さん。それと私、昨日色々あってちょっと疲れてるんで、一眠りしてもいいですか?」
「えっ、マジっすか?」
「……本気で眠るつもりなんで、絶対に手は出さないでくださいね。後でならいいですから」
こいつ、いま絶対エロい事しようと考えたよな。声が上ずってたし。
寝てるところをエロい事されて目覚めるなんて……それはそれで美味しいシチュエーションだな…。
いやいや、いかん。俺は何を考えているんだ。
昨日もロクに睡眠をとってないわけで、疲れて思考が回ってないだけだ。きっとそうだ…ということで、挙動不審にオロオロとする秋彦を無視してベッドの上に横になる。
「あ、ひなさん」
秋彦が何か話しかけてきたので、射殺すような目線だけでそちらを見る。
本気の本気でエロい事なら無しだぞ。強姦魔にやられまくったおかげで、腹も減ってないしな。
すると、こちらの視線に気が付いた秋彦はスッと目をそらすと、
「あ、俺、ちょっと出かけて来るっすから…」と、それだけ告げて、そそくさと準備を始めて部屋を出ていく。
玄関を開ける音と、ドアの締まる音、外からガチャガチャと鍵を閉める音。
ふう。やっと安心してゆっくりと睡眠がとれそうだ。誰かが部屋を出入りする音ってなんかいいよねー。一人暮らしだとそういうのないから。
そして、俺はその音を最後に聞きながら、自然と意識を手放しそのまま眠りに落ちるのだった。
目が覚め、気が付くと窓の外は少し薄暗くなっていた。寝起きで体がフラつく感覚もあるが、頭も少しはスッキリした感じだ。
さっと部屋を見渡すが、薄暗くなった部屋に秋彦が戻ってきた形跡はなかった。俺はそのままベッドで横になりながら、改めて今までの状況を整理してみようと考える。
――まず、謎の金髪少女と黒人マッチョの件だ。
この二人は能力者と考えて間違いないだろう。閉鎖空間であるクロゼットから家の中に出入り可能である時点で、まず間違いない。
そして金髪少女との会話の内容を思い出しながら、そのとき違和感を感じたことを思い出す。
会話が最後まで終わっていないのに、その内容がコロコロと変わっていたような気がする。まるでこちらの考えていることが、そのまま伝わっていたかのような感覚だ。
顔の表情から考えていることを読み取ったというよりは、読心術というか、こちらの考えていることが分かっているような…。
もしそうであるならば、俺の能力がヤッた相手の命を奪うということはバレている可能性が高い。そしてそれを知った上で、役立たずのゴミというレッテルを貼ってきたのだろう。
謎の金髪少女からしてみたら、俺の能力は利用価値が薄いと判断されたようだが、暗殺とかにはもってこいだと思うんだがなぁ。
――そして次に強姦魔、通称【不死身】と謎の女の件だ。
この二人が関係者であることは、あの時の会話の流れからもほぼ間違いないだろうし、そして恐らくこの二人は同じ組織に所属していると考えてよいだろう。
そして【不死身】は、俺の能力についての内容を知っていた。
俺の心を読んだ謎の少女が【不死身】に情報を流したのか、または【不死身】達が所属する組織が何らかの方法で情報を得たか。
どちらかは、いまのところ判断がつかないが、もし謎の金髪少女と【不死身】が同一組織の構成員であった場合、少なくとも4人以上を同時に動かせるそれなりの規模の組織に命を狙われているということだ。そう考えると頭が痛い。
そして謎の女の能力だが、予想するに俺が死んでいた場合に活躍する能力といえばただ一つ。
――証拠隠滅だ。
俺も【不死身】が死んだ場合、その死体をどうするかについては頭を悩ませた。まあ、結果的にそうはならなかったが。人間一人の死体を誰にもバレないように処分するというのは、もともと考える以上に大変なことなのだ。
つまり今の俺は、極めてヤバい組織的な何かに、命を狙われているという事。しかも、証拠すら残らないように仕留めてくるような奴らにだ。
そして理由ははっきりとはわからないが、俺が異能を保有しているということが、関係していると考えてよいだろう。
まったくもって迷惑な話だよ。何でこうなったんだよ、ホントに…。
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