【R18】美少女転生

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プロローグ 「自助努力には限界があります」

第二十六話 「女子力向上」

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 カーテンの無い窓から、容赦なく差し込む日の光で目が覚める。眉間にシワを寄せながら時計を見ると、時間はまだ朝の六時過ぎだった。

(くっそっ…昨日は早く寝すぎたか…)
 
 今日は悠翔はるとと約束した夕方の時間まではやることがない。なんだかちょっと損した気分だが、まあ早起きは三文の得っていうしな。
 特にやることがないなら時間をつぶすわけだが、ゲームかオナニーの二択があるわけで。それって、ぼっちの独身男性にしたら一般常識だろ?

 だがしかしだ――。

 今の俺は違うのだっ! 妹属性の美少女としてっ! 素人可愛い系の女子としてっ! チャトレデビューするという大いなる目標があるっ!!
 従ってまずは、徹底的に部屋を片付けるのだっ!!!

 だってウェブカメラで映った先が、散らかってて汚い部屋だったら、見てる男の側だってえるだろ?
 マイナンバーカードの受け取りだってすぐには出来ないだろうから、そんなに焦る必要もないんだが、掃除とか基本的に面倒臭いことは気が向いたときに早めに取り掛かるに限る。
 それにこのままだと汚部屋おべや過ぎて、得体の知れない悪い病気に罹りそうだしな。まぁ、ある意味でいま既に罹ってるのかもしれんが…。
 だからこそ今日は大掃除だ。そして、確か今日は古紙の回収日だったはず。

 そうと決まれば、即行動だ――。

 まず手始めのミッションは、今の俺にとってはあまり価値のなくなったエロ本の整理からだ。
 昔の俺なら後生大事にコレクションとして全てを保管していたと思うが、今の俺にとっては凌辱りょうじょく物以外はいまいち実用性がない…。

(くぅ、なんだか、俺の男の一部が失われたような切ない気分だ)

 そしてエロ本やら漫画やらの雑誌をまとめていくのだが、紙がカピカピになったり、黒っぽいカビが生えていたりで、不衛生極まりない…。
 こんな状況で、よく体調を壊さなかったと我ながら思う。

 一通り雑誌類をまとめ終わったところで、男物の部屋着から外出用の女物へと洋服を着替える。

 ――ふむ。

 下着類は予備も買ってあるので替えがきくが、ワンピースは現状で今のところ正真正銘の一張羅いっちょうらだ。
 これから生活していくうえで、洋服類の不足は本当に困るよな…。

 エロ本を抱えて外に出る。空を見上げれば今日も天気は快晴だった。大量のエロ本を抱えて気持ちよさそうに朝日を浴びる美少女って絵になるねっ!
 縛り上げた雑誌類をよっこらせと持ち上げ近くの古紙回収置き場に運び、そして、ひたすら運び、何度も運び……。
 女になって筋力も落ちてる上、量も量だけに五往復もする羽目になった。どんだけエロ本持ってたんだよ、俺。

 さらに、明日は可燃ごみと資源ごみの日。
 つまり菓子の袋やら、カップ麺や弁当の空容器やら、ビールの空き缶やらを一挙に捨てられる日だ。
 しかし、この家にはゴミ袋を初め掃除用具というものが存在しない。何故なら床がそのままゴミ箱だったからな。だから外で調達する必要がある。

 俺はトートバッグを引っ提げ、今度は近くの商店街までゴミ袋と掃除用具を調達するために遠征する。
 何気にちゃんとした掃除用具買ったのって、今回が初めてだよ。
 その帰り道、普段は素通りする店の前で思わず立ち止まる。そこは、いわゆる激安の店だ。
 399円、599円等の色鮮やかなポップが、レディース用のブラウスやら、ワンピースやら、スカートやらに付けられている。
 そして、なんとコートには999円の札がついているではないかっ!

(これは買いだ、即買いだっ!)

 俺はウキウキ、ウハウハ、ヒャッハーな気分で、山盛りになっているワゴンを掘り返し、気に入った色やデザインの洋服を次々と手に取っては抱えていく。
 そして最後に、念願のコートを抱えるとドサッとレジにおいて会計を済ませる。
 これだけ買ってなんと五千円でお釣りがきちゃったよっ! 驚きの安さだね。いやー助かったわマジで。

 ――やっぱり、早起きするといいことがあるね。

 そのままホクホク顔で帰宅すると、今度は大量のゴミをひたすら買ってきたゴミ袋の中へと投げ込んでいく。
 結局その後、その作業は昼くらいまでかかって、やっとのことでゴミの整理まで完了する。

「ふぅ…疲れた」

 久しぶりに表れたフローリングの床を見て思わず感慨深くなる。うんうん。ラグなんかを敷いて、ちょっとお洒落にするのもありかな。
 壁も殺風景だから何か飾りたいし、やっぱり女の子だったら可愛い感じのぬいぐるみとかクッションとかが良いかなぁ。

 化粧台もそのうち必要になるんだろうけど、正直よく分からんなぁ。商店街に安いのないかなぁ……って、俺、何でこんなにはしゃいでるんだっけ?
 そもそも俺にこんな趣味はなかったはずだが…それとも思考回路がオッサンから女子に変化しているということなのか……正直いまさら女子力がアップしても全然嬉しくないんだが…。

(……でもまぁ、細かいことは気にしてもしょうがないよねっ!)

 その後も床や壁を拭いたり、トイレや風呂場を掃除したりで。結局、途中に軽い食事を挟んで、ゴミ屋敷の大掃除は夕方近くまでかかってしまった。
 それでもなんだか、部屋が綺麗になると充実感で気持ちがいいね。

 そしてメーラーを開き悠翔はるとからのメールの返信で、一時間後くらいに直接自宅に行くことを伝える。
 するとすぐに返事が返ってきて、どうやら最寄りの駅まで迎えに来てくれるということだった。
 やっぱりよく気が付く男だなと感心する。

 早速、さっき買ってきた洋服を出して着替えてみる。パステルカラーのブラウスに、花柄のワンポイントが入ったスカートだ。
 男の俺が着たら間違いなく公序良俗に抵触する犯罪になるが、今の俺が着ると目の保養になるのだから何だか不公平だよな。
 あ、そうだ。せっかくだし、昨日買った赤いリボンも付けていくか。やっぱり、美少女はツーサイドアップに限るよね。

 そして俺は軽い足取りで家を出発し、待ち合わせの駅まで移動を開始したのだが、同時に途中で少しだけ空腹感を覚えどうしたものかと考える。
 それはゴム有りのセックスで、この症状が改善するかを検証するか否か。

悠翔はるとには悪いけど、やっぱり実験台になってもらうしかないのかなぁ…)

 まぁこの際、悩んでもしょうがないか、きっと何とかなるさ。朝から大した物も食べてなかったから、普通に腹が減ったのかもしれないからね。
 それに夕食についても何か奢ってもらえそうだし、なんか美味いものでも食べさせてもらえるかな。

結衣ゆいちゃん!」

 駅に着くと改札の向こうから、悠翔はるとが爽やかな笑顔でこちらに手を振っている。
 まだ、待ち合わせの時間には大分あるはずだが、やっぱり出来る男は違うねぇ。

 そして俺は改めて思う――。

 オッサンとの待ち合わせが、そんなに嬉しいのかと。よくよく考えてみれば、奴も奴でかなり可愛そうな男だなと。

 結果的に、俺が相手を騙しているわけだからな。正直なところ同情半分、罪悪感半分といった感じかな。
 まあ単にヤリたいだけなのかもしれないけど。それでも、今の俺にとっては有り難い存在であることには変わりないんだよな。
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