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冥道めいはかく怪奇を祓いし④
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◇◇◇
今度は冥道めいの理解が追いつかなかった。
仮説は立てられても情報量が乏しく、確証が無かった。
しかし今の彼女に考察をする時間は無かった。突然として工場内に警報が鳴り響いたからだ。その内容はとても物騒なもので、自爆シーケンスが作動したので十分以内に工場内から退避せよ、というものだった。
「さ、お姉ちゃん。とっととこんな場所からは脱出しましょ」
「姉、ですか? わたくしが、お母様の? 説明を求めます」
「分かんないかなぁ。初代冥道めい、わたしのオリジナルが初号機にインストールしたのはオリジナルの記憶と人格データじゃなくて、洗脳される前のお姉ちゃんの人格データとVdol冥道めいとしての情報だったってこと」
「……なんと」
道理で記録に齟齬があったわけだ、と冥道めいは今更納得した。そして隣の冥道さつきにインストールされたデータこそ本来の初代冥道めいのデータだったのだろう。母は自分達姉妹が冥界の住人に成り果ててもう助からないと察していたに違いない。
つまり、目の前の五号機は母ではない。
母は先ほどようやく悪夢から解放されたのだ。
彼女は母からVdol冥道めいとして以外の全てを継承した、妹なのだ。
「オリジナルの人格プログラムが起動したのはお姉ちゃんからクラッキングされた時ね。五号機としてのわたしがお姉ちゃんに負けることが条件だったみたい」
「それは、潜伏期間中に零号機に悟られないために、ですか」
一路エレベーターホールへと向かう冥道めい達の前には次々と警備ロボットや人型ロボット兵士、更には自分達によく似たヒューマノイド達も立ちはだかった。挙げ句、ゾンビのような輩まで飛び出てくる始末だった。
しかし、いずれも冥道めいや冥道さつきの敵ではなかった。昔配信したガンシューティングの実況プレイでもハイスコアを叩き出す腕前だった経験も役に立ったが、地力が違いすぎた。
「あのゾンビみたいな奴はウィルスに感染したんじゃなくて、機械化改造された、某ロボットアニメのゾンビ兵みたいな奴よ。助からないから容赦は要らないわ」
「ところでさつき。急に自爆シーケンスが作動したのは貴女の仕業ですか?」
「いえ、アレは元から工場に仕込まれてた機能よ」
「何故?」
「え? だって、ホラーゲームの終盤に制限時間付きの脱出イベントがあるのはお約束じゃないの?」
「……。妙に納得してしまいました」
ようやくエレベーターホールまで辿り着いた冥道めいはすぐさま呼び出しボタンを押すが、ゲームのムービーシーンと異なって早々に来てはくれなかった。もどかしさと苛立ちで指を叩いていると、やがてエレベーターの扉が開く。
乗り込んだ二人はまず一階の行き先ボタンを押し、ドア閉ボタンを押した。一階であればカードキーが無くても誰でも行くことが出来る。つまり脱出成功が約束されたようなものだった。
扉が閉まり、エレベーターが動き出す。程なく、上からか下からか、それとも前方奥からか。どこからともなく爆発音が響き渡った。幸いにもエレベーターは振動しなかったため、緊急停止はしなかった。
「終わったね」
「終わりましたね」
「怪奇の犠牲になったオリジナル達の冥福を祈ろっか」
「ええ。後ほどきちんと弔いましょう」
軽快なベルが鳴ってからアナウンスで一階に到着したことが告げられ、二人は表に出た。深夜の配信だったため、外は満天の……都会なのでそこまでは言い難いが、それでも綺麗な星空が広がっていた。
「どうしよっか、これから」
「二人で考えましょう。だって、わたくし達は姉妹なのですから」
「……うん。これからもよろしくね、お姉ちゃん」
「ええ、こちらこそ」
怪奇を解決した二人は帰路についた。
互いに手と手を取り合って。
今度は冥道めいの理解が追いつかなかった。
仮説は立てられても情報量が乏しく、確証が無かった。
しかし今の彼女に考察をする時間は無かった。突然として工場内に警報が鳴り響いたからだ。その内容はとても物騒なもので、自爆シーケンスが作動したので十分以内に工場内から退避せよ、というものだった。
「さ、お姉ちゃん。とっととこんな場所からは脱出しましょ」
「姉、ですか? わたくしが、お母様の? 説明を求めます」
「分かんないかなぁ。初代冥道めい、わたしのオリジナルが初号機にインストールしたのはオリジナルの記憶と人格データじゃなくて、洗脳される前のお姉ちゃんの人格データとVdol冥道めいとしての情報だったってこと」
「……なんと」
道理で記録に齟齬があったわけだ、と冥道めいは今更納得した。そして隣の冥道さつきにインストールされたデータこそ本来の初代冥道めいのデータだったのだろう。母は自分達姉妹が冥界の住人に成り果ててもう助からないと察していたに違いない。
つまり、目の前の五号機は母ではない。
母は先ほどようやく悪夢から解放されたのだ。
彼女は母からVdol冥道めいとして以外の全てを継承した、妹なのだ。
「オリジナルの人格プログラムが起動したのはお姉ちゃんからクラッキングされた時ね。五号機としてのわたしがお姉ちゃんに負けることが条件だったみたい」
「それは、潜伏期間中に零号機に悟られないために、ですか」
一路エレベーターホールへと向かう冥道めい達の前には次々と警備ロボットや人型ロボット兵士、更には自分達によく似たヒューマノイド達も立ちはだかった。挙げ句、ゾンビのような輩まで飛び出てくる始末だった。
しかし、いずれも冥道めいや冥道さつきの敵ではなかった。昔配信したガンシューティングの実況プレイでもハイスコアを叩き出す腕前だった経験も役に立ったが、地力が違いすぎた。
「あのゾンビみたいな奴はウィルスに感染したんじゃなくて、機械化改造された、某ロボットアニメのゾンビ兵みたいな奴よ。助からないから容赦は要らないわ」
「ところでさつき。急に自爆シーケンスが作動したのは貴女の仕業ですか?」
「いえ、アレは元から工場に仕込まれてた機能よ」
「何故?」
「え? だって、ホラーゲームの終盤に制限時間付きの脱出イベントがあるのはお約束じゃないの?」
「……。妙に納得してしまいました」
ようやくエレベーターホールまで辿り着いた冥道めいはすぐさま呼び出しボタンを押すが、ゲームのムービーシーンと異なって早々に来てはくれなかった。もどかしさと苛立ちで指を叩いていると、やがてエレベーターの扉が開く。
乗り込んだ二人はまず一階の行き先ボタンを押し、ドア閉ボタンを押した。一階であればカードキーが無くても誰でも行くことが出来る。つまり脱出成功が約束されたようなものだった。
扉が閉まり、エレベーターが動き出す。程なく、上からか下からか、それとも前方奥からか。どこからともなく爆発音が響き渡った。幸いにもエレベーターは振動しなかったため、緊急停止はしなかった。
「終わったね」
「終わりましたね」
「怪奇の犠牲になったオリジナル達の冥福を祈ろっか」
「ええ。後ほどきちんと弔いましょう」
軽快なベルが鳴ってからアナウンスで一階に到着したことが告げられ、二人は表に出た。深夜の配信だったため、外は満天の……都会なのでそこまでは言い難いが、それでも綺麗な星空が広がっていた。
「どうしよっか、これから」
「二人で考えましょう。だって、わたくし達は姉妹なのですから」
「……うん。これからもよろしくね、お姉ちゃん」
「ええ、こちらこそ」
怪奇を解決した二人は帰路についた。
互いに手と手を取り合って。
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