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廃屋の無き脱出口(前)
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◇◇◇
「皆さん、こんばんは。冥道めいと申します。皆寝静まったこの時間、同行者の方々とひとときを共有し、深い話題や興味深いことを共に探求していきましょう」
いつものように冥道めいの配信が始まった。どうやら今回もまた外でのロケのようで、彼女はエレベーターに乗り込んでいた。視聴者はそのエレベーターに見覚えがあった。幽幻ゆうなのマンションのものだ。
「ここ最近、幽幻ゆうな様のマンションにやってくる者が多くなってきているようですね。怖いもの見たさなのか、撮れ高を良くしたいからでしょうか」
冥道めいがコメントするように、彼女や他のUdolの配信によって幽幻ゆうなのマンションは特定された。そして人の足が跡を絶たなくなったのだ。半数以上は正面玄関のオートロックで弾かれるのだが、残り数割が悪知恵を働かせて侵入してくる。
そうしてエレベーターに乗り込んだ来訪者達は、しかし二度と外に出ることはなかった。尽く怪奇に巻き込まれ、消息を絶っているのだ。中にはUdolとして生配信をしながら怪奇に遭遇することもあり、ネット上で騒ぎになっていた。
「何にせよ、わたくしは単に徘徊するだけではなく、怪奇の解明を進めています。何故このマンションに怪奇が蔓延しているのか、謎を暴かない限り、このマンションの住人はおそらく――」
意味深な発言を残し、冥道めいはエレベーターが止まった先のフロアに降りた。
■■■
ある夜、友人たちと廃屋の探検に興じることになった。廃屋は町の外れにあり、かつては美しい家だったが、今や荒廃し、誰も住んでいないようだった。小林沙耶香(仮名)たちは興奮気味に廃屋の中を探索し始めた。
廃屋の中は薄暗く、ホコリや蜘蛛の巣が張り巡らされていた。古びた家具や壁には落書きがされており、廃墟特有の荒れた雰囲気が漂っていた。小林沙耶香たちは廃屋の各所を見て回り、奥にある地下室に興味を持った。
地下室には薄暗い階段が続き、その先には暗闇が広がっていた。小林沙耶香たちは懐中電灯を片手に階段を下りていくと、地下室には古い書類や本が散乱していた。そして、地下室の奥には大きな棺がひとつだけ置かれていた。
棺は古びた木製で、ひび割れが入っていた。小林沙耶香たちは棺の蓋を開けることに興味を持ち、力を合わせて蓋を開けると、中からひどい腐敗臭が漂ってきた。しかしそんな匂いとは裏腹に中には何もなく、ただの空の棺だった。
その時、突然、地下室の電気がついた。小林沙耶香たちは驚いて懐中電灯を消し、静かに待っていると、廃屋全体に不気味な気配が漂い始めた。壁からは不気味な音が聞こえ、廃屋の中には足音のようなものが響いているようだった。
小林沙耶香たちは恐怖に震えながらも、廃屋を後にすることに決めた。しかし、廃屋を出ようとすると、廃屋の入り口が閉まってしまい、小林沙耶香たちは閉じ込められてしまったのだ。絶望感に包まれながらも、小林沙耶香たちは廃屋の中を探索し続けたが、出口は見つからなかった。
やがて、廃屋の中で友人たちが次々と姿を消していき、小林沙耶香は一人取り残されてしまった。恐怖に打ち震えながらも、彼女は廃屋の中をさまよい続けた。そして、廃屋の奥にある地下室に辿り着くと、そこには大勢の亡霊たちが小林沙耶香を待ち構えていた。
亡霊たちは小林沙耶香を取り囲み、彼女を棺の中に閉じ込めようとしていた。彼女は必死で逃げ回り、廃屋の外に出ようとしたが、廃屋は次第に消えていき、小林沙耶香は闇に包まれてしまった。
その後、小林沙耶香の姿を見た者はいないというが、廃屋の跡地には今も不気味な気配が漂っているという。
◇◇◇
「ここは電気屋のフロアなようですね」
家電量販店とは異なる、地域に根ざした個人経営の小さな電気屋。それが廊下にいくつも並んでいた。廊下から店の中を覗き込むと、どうやら置いてある家電製品は店によって異なるようだ。ある店は電球などの消耗品専門で、ある店は冷蔵庫だけが並び、ある店は洒落たブランドメーカー品で統一していた。
「別に家電製品一式は揃っているので、本来なら足を運ぶ必要性はございません。しかし、そうであっても展示してある家電製品を眺める行為はなんだかわくわくしませんか?」
冥道めいはそのうちの一つの店に入った。店内は薄暗く、その中でテレビやパソコンディスプレイが煌々と明かりを発していた。映像美を客に見せつけたいために、映される映像は大自然の豊かな情景や映画が主だった。
しかし、冥道めいが来店してさほど時間が経たないうちだった。突如テレビ等の映像が切り替わった。
「皆さん、こんばんは。冥道めいと申します。皆寝静まったこの時間、同行者の方々とひとときを共有し、深い話題や興味深いことを共に探求していきましょう」
いつものように冥道めいの配信が始まった。どうやら今回もまた外でのロケのようで、彼女はエレベーターに乗り込んでいた。視聴者はそのエレベーターに見覚えがあった。幽幻ゆうなのマンションのものだ。
「ここ最近、幽幻ゆうな様のマンションにやってくる者が多くなってきているようですね。怖いもの見たさなのか、撮れ高を良くしたいからでしょうか」
冥道めいがコメントするように、彼女や他のUdolの配信によって幽幻ゆうなのマンションは特定された。そして人の足が跡を絶たなくなったのだ。半数以上は正面玄関のオートロックで弾かれるのだが、残り数割が悪知恵を働かせて侵入してくる。
そうしてエレベーターに乗り込んだ来訪者達は、しかし二度と外に出ることはなかった。尽く怪奇に巻き込まれ、消息を絶っているのだ。中にはUdolとして生配信をしながら怪奇に遭遇することもあり、ネット上で騒ぎになっていた。
「何にせよ、わたくしは単に徘徊するだけではなく、怪奇の解明を進めています。何故このマンションに怪奇が蔓延しているのか、謎を暴かない限り、このマンションの住人はおそらく――」
意味深な発言を残し、冥道めいはエレベーターが止まった先のフロアに降りた。
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ある夜、友人たちと廃屋の探検に興じることになった。廃屋は町の外れにあり、かつては美しい家だったが、今や荒廃し、誰も住んでいないようだった。小林沙耶香(仮名)たちは興奮気味に廃屋の中を探索し始めた。
廃屋の中は薄暗く、ホコリや蜘蛛の巣が張り巡らされていた。古びた家具や壁には落書きがされており、廃墟特有の荒れた雰囲気が漂っていた。小林沙耶香たちは廃屋の各所を見て回り、奥にある地下室に興味を持った。
地下室には薄暗い階段が続き、その先には暗闇が広がっていた。小林沙耶香たちは懐中電灯を片手に階段を下りていくと、地下室には古い書類や本が散乱していた。そして、地下室の奥には大きな棺がひとつだけ置かれていた。
棺は古びた木製で、ひび割れが入っていた。小林沙耶香たちは棺の蓋を開けることに興味を持ち、力を合わせて蓋を開けると、中からひどい腐敗臭が漂ってきた。しかしそんな匂いとは裏腹に中には何もなく、ただの空の棺だった。
その時、突然、地下室の電気がついた。小林沙耶香たちは驚いて懐中電灯を消し、静かに待っていると、廃屋全体に不気味な気配が漂い始めた。壁からは不気味な音が聞こえ、廃屋の中には足音のようなものが響いているようだった。
小林沙耶香たちは恐怖に震えながらも、廃屋を後にすることに決めた。しかし、廃屋を出ようとすると、廃屋の入り口が閉まってしまい、小林沙耶香たちは閉じ込められてしまったのだ。絶望感に包まれながらも、小林沙耶香たちは廃屋の中を探索し続けたが、出口は見つからなかった。
やがて、廃屋の中で友人たちが次々と姿を消していき、小林沙耶香は一人取り残されてしまった。恐怖に打ち震えながらも、彼女は廃屋の中をさまよい続けた。そして、廃屋の奥にある地下室に辿り着くと、そこには大勢の亡霊たちが小林沙耶香を待ち構えていた。
亡霊たちは小林沙耶香を取り囲み、彼女を棺の中に閉じ込めようとしていた。彼女は必死で逃げ回り、廃屋の外に出ようとしたが、廃屋は次第に消えていき、小林沙耶香は闇に包まれてしまった。
その後、小林沙耶香の姿を見た者はいないというが、廃屋の跡地には今も不気味な気配が漂っているという。
◇◇◇
「ここは電気屋のフロアなようですね」
家電量販店とは異なる、地域に根ざした個人経営の小さな電気屋。それが廊下にいくつも並んでいた。廊下から店の中を覗き込むと、どうやら置いてある家電製品は店によって異なるようだ。ある店は電球などの消耗品専門で、ある店は冷蔵庫だけが並び、ある店は洒落たブランドメーカー品で統一していた。
「別に家電製品一式は揃っているので、本来なら足を運ぶ必要性はございません。しかし、そうであっても展示してある家電製品を眺める行為はなんだかわくわくしませんか?」
冥道めいはそのうちの一つの店に入った。店内は薄暗く、その中でテレビやパソコンディスプレイが煌々と明かりを発していた。映像美を客に見せつけたいために、映される映像は大自然の豊かな情景や映画が主だった。
しかし、冥道めいが来店してさほど時間が経たないうちだった。突如テレビ等の映像が切り替わった。
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