120 / 209
第三章 幻獣魔王編
戦鎚聖騎士、竜騎士部隊と出会う
しおりを挟む
真っ先に攻撃を仕掛けたのは竜騎士部隊だった。彼らが発した電撃が次々とドラゴン達に襲いかかる。しかも命中したら命中した対象を起点に追撃の雷が更に別のドラゴンに向かっていったから、アレ全部チェーンライトニングかよ。
しかし考えたな。雷ほどの速度なら超遠距離にも即座に届く。初撃にはうってつけってことか。更には竜騎士達による一斉掃射は回避も困難だろうて。ドラゴンが何体も地面に落下していくのも当然の結果だろう。
初撃を受けてドラゴン達は口から火炎球を噴射しだした。竜騎士部隊は散開してそれを回避、更に雷をドラゴン達に浴びせていく。ドラゴン達もさすがなもので、雷の進路を見切って回避行動を取る個体が多かったが、逃げた先には竜騎士の駆る飛竜が吐き出した火炎球が待ち構えていた。たちまちに火だるまになっていく。
やがて、二つの部隊が衝突し合うんじゃないかって距離で互いにすれ違った。その時にも攻防が繰り広げられたらしく、何体ものドラゴンが血を撒き散らしながら力尽きて落ちていく。一方の竜騎士部隊も無傷とはいかず、明らかに負傷してぎごちなくなった者も現れた。
互いに旋回して再び攻撃の応酬が行われる。炎と雷が入り乱れる光景は幻想的な劇を見ているようだった。地上で繰り広げられる戦闘・戦争とは全く異なる空中戦は俺にはもはや理解の及ばぬ世界なのだろう。
「やるなぁ今のドワーフ共。竜騎士部隊の練度が一昔前とは大違いだぞ」
「『僕』の時代の頃より明らかに強いね。攻め滅ぼそうと思ったら一苦労だろう」
「こんなに強いのはさすがに想定外ですって。征服計画を見直さないと……」
三人の魔王が各々感想を述べる。物騒な発言は聞かなかったことにしよう。
竜騎士部隊は順調にドラゴンの数を減らしていく。中でも一際目立つ竜騎士が次々とドラゴンを討ち取っているようだ。彼の武器は長槍で、すれ違いざまにドラゴンの翼を斬り飛ばす芸当までしてみせるし、彼が放つ雷はドラゴンの進路を完全に読み切って放つものだから百発百中だ。
そうして空中を舞台に繰り広げられる戦闘は……俺達に思いもしない余波をもたらすことになる。そう、竜騎士部隊が仕留めたドラゴンの死骸に襲われるという危機をもって。
「……なあ。あの落ちてくるドラゴン、俺達の真上じゃないか?」
「そうですね。このままここにいたら余達はぺしゃんこでしょうね」
「なら逃げるか。今からなら充分間に合うだろ」
「ええー? そんな萎えること言わないでくださいよ。迫る圧倒的な暴力を難なく防いで「大丈夫か?」と言ってくれる格好いいニッコロさんが見たいんです!」
「はぁ!? いや、そう言われるだろうって薄々は思ってたけどよ! ああもう、しゃーねぇなぁ!」
ちくしょう、イレーネとティーナが加わっても結局こき使われるのは俺だよ。
跳躍の闘気術セイリングジャンプで高く跳び、ありったけの力と闘気を込めて戦鎚を振り上げる。今回のドラゴン共は空の生息に適した小柄な種族だから助かった。これで大型の個体だったら軽く泣けたからな。
「パワーガイザー!」
戦鎚とドラゴンの躯が衝突。俺の方が圧倒的に質量が軽いのもあって俺の方が弾き飛ばされる。あやうく地面に激突って所でティーナの風属性魔法の追い風を受けて急減速、闘気を下半身に集中させて何とか着地出来た。
一方の落下するドラゴン、俺の戦鎚を受けて軌道を変え、少し離れた位置に落下した。あんな高い所から落ちたらさすがの頑丈なドラゴン種であっても原型を止めないほどバラバラになっていることだろう。冒険者ギルドに売る素材は望めまい。
「ちょっと、大丈夫だった!?」
程なく、先程までドラゴン相手に無双していた竜騎士の隊長らしき者を乗せた飛竜が降りてきた。そして慌てた様子でこちらへと駆け寄ってくる。声の高さから察するにもしかして女性だろうか? ドワーフだと踏まえてもかなり小柄だが……。
「ん? ああ、アレぐらいなら問題ない」
「そう、良かった。私らの戦闘で民間人が犠牲になるなんて嫌だったし」
兜を脱いた竜騎士の容姿を見て俺は更に驚く。
真っ先に思い浮かんだ感想は「少女だったのか」だな。輪郭もゴツくないし幼い顔立ちに真紅のまとめた長髪が印象的だ。とても可愛いといえる分類だろう。ヒゲが全く生えてないのも合わさって人間の女の子にしか見えなかった。
まじまじと見つめる失礼な俺にも気分を害さず、彼女は俺、ミカエラ達へと視線を巡らせ、背筋を正すと礼儀正しくお辞儀をした。
「聖女御一行でしたか。失礼しました」
「謝罪を受け入れます。余裕があれば今後は地上にいる者達も気にかけて下さい。それとそこまでの敬いは不要です」
「そう、なら遠慮なく。ようこそ私共ドワーフの国へ。同胞を代表して歓迎の意を述べさせてもらうわ」
それが竜騎士の隊長らしき少女ドワーフ、ダーリアとの出会いだった。
しかし考えたな。雷ほどの速度なら超遠距離にも即座に届く。初撃にはうってつけってことか。更には竜騎士達による一斉掃射は回避も困難だろうて。ドラゴンが何体も地面に落下していくのも当然の結果だろう。
初撃を受けてドラゴン達は口から火炎球を噴射しだした。竜騎士部隊は散開してそれを回避、更に雷をドラゴン達に浴びせていく。ドラゴン達もさすがなもので、雷の進路を見切って回避行動を取る個体が多かったが、逃げた先には竜騎士の駆る飛竜が吐き出した火炎球が待ち構えていた。たちまちに火だるまになっていく。
やがて、二つの部隊が衝突し合うんじゃないかって距離で互いにすれ違った。その時にも攻防が繰り広げられたらしく、何体ものドラゴンが血を撒き散らしながら力尽きて落ちていく。一方の竜騎士部隊も無傷とはいかず、明らかに負傷してぎごちなくなった者も現れた。
互いに旋回して再び攻撃の応酬が行われる。炎と雷が入り乱れる光景は幻想的な劇を見ているようだった。地上で繰り広げられる戦闘・戦争とは全く異なる空中戦は俺にはもはや理解の及ばぬ世界なのだろう。
「やるなぁ今のドワーフ共。竜騎士部隊の練度が一昔前とは大違いだぞ」
「『僕』の時代の頃より明らかに強いね。攻め滅ぼそうと思ったら一苦労だろう」
「こんなに強いのはさすがに想定外ですって。征服計画を見直さないと……」
三人の魔王が各々感想を述べる。物騒な発言は聞かなかったことにしよう。
竜騎士部隊は順調にドラゴンの数を減らしていく。中でも一際目立つ竜騎士が次々とドラゴンを討ち取っているようだ。彼の武器は長槍で、すれ違いざまにドラゴンの翼を斬り飛ばす芸当までしてみせるし、彼が放つ雷はドラゴンの進路を完全に読み切って放つものだから百発百中だ。
そうして空中を舞台に繰り広げられる戦闘は……俺達に思いもしない余波をもたらすことになる。そう、竜騎士部隊が仕留めたドラゴンの死骸に襲われるという危機をもって。
「……なあ。あの落ちてくるドラゴン、俺達の真上じゃないか?」
「そうですね。このままここにいたら余達はぺしゃんこでしょうね」
「なら逃げるか。今からなら充分間に合うだろ」
「ええー? そんな萎えること言わないでくださいよ。迫る圧倒的な暴力を難なく防いで「大丈夫か?」と言ってくれる格好いいニッコロさんが見たいんです!」
「はぁ!? いや、そう言われるだろうって薄々は思ってたけどよ! ああもう、しゃーねぇなぁ!」
ちくしょう、イレーネとティーナが加わっても結局こき使われるのは俺だよ。
跳躍の闘気術セイリングジャンプで高く跳び、ありったけの力と闘気を込めて戦鎚を振り上げる。今回のドラゴン共は空の生息に適した小柄な種族だから助かった。これで大型の個体だったら軽く泣けたからな。
「パワーガイザー!」
戦鎚とドラゴンの躯が衝突。俺の方が圧倒的に質量が軽いのもあって俺の方が弾き飛ばされる。あやうく地面に激突って所でティーナの風属性魔法の追い風を受けて急減速、闘気を下半身に集中させて何とか着地出来た。
一方の落下するドラゴン、俺の戦鎚を受けて軌道を変え、少し離れた位置に落下した。あんな高い所から落ちたらさすがの頑丈なドラゴン種であっても原型を止めないほどバラバラになっていることだろう。冒険者ギルドに売る素材は望めまい。
「ちょっと、大丈夫だった!?」
程なく、先程までドラゴン相手に無双していた竜騎士の隊長らしき者を乗せた飛竜が降りてきた。そして慌てた様子でこちらへと駆け寄ってくる。声の高さから察するにもしかして女性だろうか? ドワーフだと踏まえてもかなり小柄だが……。
「ん? ああ、アレぐらいなら問題ない」
「そう、良かった。私らの戦闘で民間人が犠牲になるなんて嫌だったし」
兜を脱いた竜騎士の容姿を見て俺は更に驚く。
真っ先に思い浮かんだ感想は「少女だったのか」だな。輪郭もゴツくないし幼い顔立ちに真紅のまとめた長髪が印象的だ。とても可愛いといえる分類だろう。ヒゲが全く生えてないのも合わさって人間の女の子にしか見えなかった。
まじまじと見つめる失礼な俺にも気分を害さず、彼女は俺、ミカエラ達へと視線を巡らせ、背筋を正すと礼儀正しくお辞儀をした。
「聖女御一行でしたか。失礼しました」
「謝罪を受け入れます。余裕があれば今後は地上にいる者達も気にかけて下さい。それとそこまでの敬いは不要です」
「そう、なら遠慮なく。ようこそ私共ドワーフの国へ。同胞を代表して歓迎の意を述べさせてもらうわ」
それが竜騎士の隊長らしき少女ドワーフ、ダーリアとの出会いだった。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる