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第一章 勇者魔王編

聖女魔王、水源汚染の問題解決を引き受ける

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 害鳥共を始末して山道の通行禁止が解除になったので、俺達は山を超えた向こう側の町にやってきた。山間部に近いのもあって、大自然にあふれるゆっくりとした快適な生活環境を売りにして貴族の別荘もあるところなんだが……。

「何でこんな寂れてるんだ?」
「皆さん元気が無いですねぇ」

 町全体が重い空気に包まれていた。宿場町だから人の往来こそ多いものの、住民達は誰もが疲れた顔をしている。そして俺達……というより聖女ミカエラの姿を見るなり、救われたとばかりに顔を輝かせるのだ。

 次の町に行くにも日が遅いので宿を取る。女将が俺達を一目見るなり大歓迎状態になって過剰なぐらいのおもてなしを受けそうになった。あいにくそこまでされるとかえって疲れるので、他の客と同じように扱うようお願いしたんだがな。

「一体どうしたんですか? 差し支えなければ事情を教えて下さい」
「それがですね……。ここは水の町って呼ばれるぐらい水が豊富な小川沿いにあるんですが……その小川が使えなくなってしまったんです」
「川が枯れちゃったんですか?」
「汚染されてしまったんです。だから小川の水は使えませんし、井戸から組み上げる水も駄目で……。雨水を貯めたり遠くから運んできたりしなきゃいけなくなって……」

 それは確かに死活問題だ。だからって簡単に移住なんて出来やしないし、聖都に続く街道沿いにあるから国だって許しはしないだろう。町全体が今日飲む水にも苦労しているわけだ。

 町の教会で事情を聞くべく宿を後にした俺達は、通りすがりに店を覗いた。水が明らかにぼったくり価格になってる。山越えの道が通行解除されたのもあって交通量も多くなった反動か、店主が客に頭を下げまくっててかわいそうだった。

「こ、これは聖女様! ようこそおいでくださいました!」

 教会の神父からも歓迎された。聞けばこの危機的状況に冒険者ギルドにも依頼が出ていて、実際冒険者も小川の上流に調査へ向かったわけだが、結果、帰らず。よほどの原因が潜んでいるに違いない、ってぐらいしか分かっていないらしい。

 そんな時に偶然聖女がやってきたわけだから、救いが来たと思われてもしょうがないわな。神父からも是非この異変を解決してほしいと懇願されたし。何でも教会に対して聖女の出動要請もしようとまで思い詰めていたんだとか何とか。

「分かりました。余と我が騎士に任せてください。さっと行ってぱっと解決してきちゃいますから!」
「おお、神よ。このお導きに感謝を!」

 歓喜のあまりに泣き崩れた神父は少し時間をかけて気を取り直し、なけなしの備蓄を切り崩して俺達に支給してくれた。一度は辞退したんだが異変が解決するなら安いものだと言って聞かず、なら好意に甘えて受け取ることにした。

 夕食も覚悟してたんだが、これまた宿の女将が腕を振るってそれなりに豪華な食事を用意してくれた。他の客からやっかまれるとも危惧してたんだが、逆に期待を一身に集めたし、周りに住んでる町人も来るぐらいだった。

「聖女様、どうかこの町をお救いくださいませ」
「このままじゃあ明日も生きられねえ! 
「ああ、これでこの子も助かるわ……」

 そうまで希望を持たれるとやってやらなきゃって気分になってくるな。
 ま、とりあえずは微力を尽くすとしますか。

 □□□

 次の日、俺達は夜明け前、空が明るくなり始めた頃に出発した。
 向かうは小川の上流方向。脇の道を進むんだが、確かに小川の水は汚染されていた。具体的にはドブみたいに腐り、異臭を放っていた。鼻がひん曲がりそうだ。これ瘴気まで発生させてるんじゃないか?

「既に魔物を呼び寄せているようですね。もっと汚染が進んだらここから魔物が発生してしまいかねません」
「そりゃ大変だ。何が原因なんだろうな?」
「水源に呪物を放り込む、魔法を施す、など、様々な要因が考えられます。要するに行ってみないと特定は難しいですね」
「せっかく山超えてきたのまた山登んなきゃいけないのはだるすぎる……」

 途中で枝分かれしてたんだが、汚染された水が流れてくるのは本流の方だった。道も途絶えたのでそこからは川に沿って進んでいく。俺はあまりの臭さに鼻に詰め物をした。ミカエラがなんで平然としてるのかが分からん。これも奇跡なのか?

 ちなみに途中襲ってきた魔物共は全員ぶちのめしてやった。別に特筆するような戦闘でもなかったがね。疲れるだけなんで個人的にはうんざりなんだが、俺が戦うと何故かミカエラが喜ぶから、まあいいか。

 完全に日が昇ってもしばらく進み、滝の麓までやってきた。勢いよく落ちてくる水は透き通って綺麗な透明。上方の木々とか水が流れ落ちる付近の岩、苔の具合を見ても、その上流は汚染されていないのは明らかだった。

 となれば、汚染の原因は目の前のコレか。

「魔物の死体、か?」
「ええ、そうでしょうね」

 滝の下側にソレはあった。でかいトカゲ、パイロレクスだったっけか、の魔物の死体が水辺の辺で倒れていた。死んでから随分立つのか、完全に腐敗している。それが水に浸かっているせいで小川の下流がまとめて汚染されているようだ。
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