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三学期
プリュヴィオーズ⑨・内堀も埋めてしまおう
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アルテミシアがシャルル殿下に仕掛けた光の魔法は暴かれた。けれどジャンヌはそれからアルテミシア本人やシャルル殿下と関わろうとしなかった。代わりにジャンヌはこれまで疎遠だった貴族令嬢方と積極的に接するようになった。
『双子座』だとジャンヌとクレマンティーヌ様は互いを好敵手と捉えて別々に派閥を形成していた。それが今回は共通の敵が現れた為か二人が手を取り合って仲の良さを大々的に知らしめた。そのおかげでジャンヌがお茶会を開けばこぞって参加を願う声が挙がる程だった。
毎日開かれるお茶会も多彩だった。ジャンヌが主催する場合もあればクレマンティーヌ様が主催される時もあり、なんとマリー殿下自らが開催する日もあった。お抱えの宮廷音楽家を招いて演奏までさせて規模が凄まじかったなあ。
ジャンヌの催しの華やかさはすぐに学園内に知れ渡る事となり、多くの貴族令嬢から招待されるのは誉れだと噂された。
勿論、今更貴族令嬢方と交流を深めたいってささやかな願いからじゃない。
これは根回しだ。アルテミシアの周囲から貴族令嬢方を遠ざける為の。
ジャンヌはアルテミシアに近しい貴族令嬢はお茶会に誘わなかった。参加させてくださいって願われても一度は無碍に拒絶した。土下座の風習があったらしていたんじゃないかってぐらい懇願されてようやくそこまで言うのならと参加させた。そうして中立だった方やアルテミシアのおこぼれに与ろうとしていた方は次第にジャンヌへと傾いていった。
そんなジャンヌだったけれど、お茶会ではあくまでアルテミシアを気にするそぶりを見せなかった。むしろ構わないでおきましょうと些事のように扱っていた。人目憚らず学園で羨望の眼差しを受けていた殿方を侍らせる女に対してなんて寛大なんだ、と誰もがその慈悲深さに心動かされた。
「シャルル殿下はもう二度と私に振り向いてくださらないのかしら……?」
そんなジャンヌは時折シャルルが傍にいない寂しさを嘆きと涙で表現した。それは演技ではなくジャンヌの本音だったとは思う。それでもまさか恋い焦がれや胸の苦しみを隠そうとせずに武器として扱うなんて。憧れの公爵令嬢が見せる弱さは多くの方の同情を誘った。
「ジャンヌ様、気を落とさないでくださいませ。きっとシャルル殿下も貴女様の恋を分かってくださりますわ」
「ええ……ありがとう。貴女様のお心が胸に沁みます」
で、その同情がアルテミシアへの憤りに転換されるのはそう難しくなかった。
「それにしても許せないのはあの女です! 何ですかあのふてぶてしい態度はっ!」
「本当、品性の欠片もありませんわ。教養も家柄もジャンヌ様に遠く及ばないと言うのに」
多くの貴族令嬢方がアルテミシアへの不満を口にする。
この方々は学園内ではあくまでアルテミシアを罵ったり嫌がらせをしようとしない。それがジャンヌの意思でもあるから。代わりにアルテミシアを冷遇したり露骨に避けたり、こうした交流の場では彼女がいないのをいい事に愚痴の言いたい放題だった。
「ヴィクトワール様はブルゴーニュ伯爵令嬢を魔性の女と吐き捨てておられましたけれど、こう多くのご令嬢の心を掌握するジャンヌ様の方がよほど魔女なのでは?」
「魔女ではありません。悪役令嬢です」
「ジャンヌ様やカトリーヌ様が時々口にするその名詞、不思議な響きがしますわね」
いつだったかわたしはクレマンティーヌ様とそんな会話を交わしたっけ。
こうして同世代の大半がジャンヌ派閥に取り込まれた。けれどそれで満足するジャンヌではなく、夜になれば夜会に積極的に参加した。お腹の具合もあったからダンスは踊れなくなったけれどその分会話に華は咲かせられる。お母様も同行して多くの淑女と親睦を深めた。
「現在の王太子殿下のご様子、王妃様も嘆かれていらっしゃいます。私もジャンヌさんの力になりますわ」
「ありがとうございます」
王妃となるべく教育を施されたジャンヌの社交界での評価は高い。同世代、つまり淑女方からすれば姪や娘にあたるご令嬢からも慕われ、更には現王妃様からの信頼も厚い。万が一王太子殿下の気が狂って婚約破棄に至っても没落までは至らないとの見方が強いようだ。だから今のうちに恩を売ろう、って打算もあるんでしょうね。
「お久しぶりです、アドリエンヌ様」
「お、お久しぶりですジャンヌさん……」
で、更にジャンヌはなんとブルゴーニュ伯爵夫人、つまりアルテミシアの母親にも声をかけた。ジャンヌが笑顔を湛えて挨拶を送ったのに夫人は明らかに動揺と不安に彩られていた。無理もない、王太子殿下への横恋慕なんて家のお取り潰しにまで発展しかねないし。
「ところでアドリエンヌ様。私の学友でもあるアルテミシア様のお話なのですが……」
「た、大変申し訳ございませんっ!」
で、世間話から始まった雑談もそこそこにジャンヌが本題に触れた途端だった。伯爵夫人の顔が青ざめて唇を白くさせてこれでもかってぐらい頭を下げてきたのは。
酒の肴で眺めていた多くの方々もその手を止めて伯爵夫人に注目する。
「娘が大変な不敬をしているのは承知しています。ですが、ですが私はいかような罰も受けますのでどうか娘には寛大な処置を……!」
「落ち着いてくださいアドリエンヌ様。ここにいる皆様が驚いてしまっています」
ここまで謝罪されるとはジャンヌも思っていなかったらしく、軽く焦っているのが見て取れた。代わりにお母様が傍に寄って夫人の軽く肩を抱いた。そうしないと夫人は今にも罪悪感で気を失う勢いだったから。
後でジャンヌはこう語った。あれだけの事をしでかす娘を庇って代わりに処罰を受けようとする彼女から母親としての愛を感じた、と。それはまるで『双子座』で悪役令嬢を容赦なく切り捨てたお父様、そして幻の娘だけに溺れたお母様への恨みにも聞こえた。
「娘にも強く言い聞かせているのですが一向に改善しようとしないのです。主人がどれほど肩身の狭い思いをしているのか娘は全く無関心で……。あんな娘じゃあなかったのに、どうしてこんな……」
「アルテミシア様の様子がおかしくなったのは昨年の夏でしょうか?」
「はい……。優しく思いやりのあったあの子が突然学園に行きたいって言いだして。理由を訪ねたら天啓を受けた、自分は神様に愛された子なんだって騒ぎまして……」
「天啓ですか。それはまた随分と仰々しいですね」
確かに。転生は異端扱いだから前世の記憶を隠すのは分かるけれどそれを天啓だってごまかすとはね。いくら光を授かったからって大袈裟な気がする。万が一神様からお言葉を頂いたとしてもそれが返って彼女の破滅を招く破目になるのは皮肉なものだ。
「本当だとしたら何故神は私の娘にそれ程の試練をお与えになるのか! エルマントルド様、ジャンヌ様。私共はどうなっても構いませんからどうか娘にお慈悲を……!」
「ご安心ください。私共が陛下に取り計らいますので」
とジャンヌは伯爵夫人に優しく語りかけた。アドリエンヌ様は安心なさったようでその場で気絶し、夜会の主催者が使用人に命じて一旦退場となった。その背中を眺めるジャンヌは、しかしどこまでも冷たい眼差しだった。
「アドリエンヌ様もブルゴーニュ伯も心労が酷いそうよ。当たり前よね、だって学園であれだけの事をしでかしているんですもの」
「陛下に取り計らうって、アルテミシアに猶予をって?」
「まさか。陛下や司法府がどうお考えになるかまで私の考える範疇には無いわね。少なくとも小娘の不始末で一族揃って処罰されないよう求めるつもりだけれど」
「あのご夫人の希望とは真逆にアルテミシアだけを罰するつもりなんだね」
あくまでジャンヌの標的はアルテミシアただ一人。彼女は夜会に顔を出す事で彼女から大人達、更には両親すら引き剥がしていったんだ。あまりにも容赦なく冴えた立ち回りにわたしはつくづく感心してしまった。
「あら。カトリーヌはアルテミシアを許してあげて、とかは言わないのね」
「行動には結果が伴う。成功すれば大きな見返りがあるけれど失敗すれば破滅する。そこに情けの入り込む余地はないよ」
そう、これは博打みたいなものよ。攻略に失敗すれば悪役令嬢の悪意で破滅。攻略に成功すれば悪役令嬢を追い落として意中の王子様とハッピーエンドに。アルテミシアが脚本に沿った展開に賭けた以上は彼女には自分の未来を代償にしてもらわなきゃね。
乙女ゲーのメインヒロインってそういう存在でしょう?
「堀は埋めたし城門は壊した。後はなだれ込んで城を落とすだけかしら?」
「貴族令嬢方や紳士淑女方は味方にしたけれど、肝心の同年代の殿方はどうするの?」
「……。そう言えばそんな連中もいたわね」
「断罪イベントでは殿下お抱えの近衛兵の他に男子生徒も悪役令嬢の敵に回るんだから、そっちの根回しもしておかないと」
だろうと思ってそっち方面にはわたしが手を打っておきました。
別にわたし自身が殿方に声をかけて回る必要は無い。だって既にわたしの傍にはアルテュールがいてくれるもの。
アルテュールは男子生徒からの人望が厚い。剣の腕前、家柄、勉学、そして人柄。非の打ちどころがないものね。彼には周囲にアルテミシアに現を抜かすシャルルやアンリ様の体たらくをそれとなく批判してもらった。殿方の視点から見てもアレは異様に映るらしく、徐々に賛同が集まった。
それとお茶会を通じて知り合いになったヴィクトワール様には攻略対象者達を表だって非難して頂いた。シャルルから引き継いで現在生徒会長を務めていらっしゃる彼女の真っ当な言い分はすぐに同意する声が挙がった。さすがはご令嬢ばかりか殿方からも慕われる女性の誇りよね。
「ここ最近の成果は後でアルテュールに聞こうか」
「さすがにメインヒロインは格が違った、だったかしら?」
「いや、ジャンヌはそう言った言い回し覚えなくてもいいから……」
何にせよ、こうしてアルテミシアは急速に丸裸にされていった。
刻一刻と断罪イベントが近づく中で。
『双子座』だとジャンヌとクレマンティーヌ様は互いを好敵手と捉えて別々に派閥を形成していた。それが今回は共通の敵が現れた為か二人が手を取り合って仲の良さを大々的に知らしめた。そのおかげでジャンヌがお茶会を開けばこぞって参加を願う声が挙がる程だった。
毎日開かれるお茶会も多彩だった。ジャンヌが主催する場合もあればクレマンティーヌ様が主催される時もあり、なんとマリー殿下自らが開催する日もあった。お抱えの宮廷音楽家を招いて演奏までさせて規模が凄まじかったなあ。
ジャンヌの催しの華やかさはすぐに学園内に知れ渡る事となり、多くの貴族令嬢から招待されるのは誉れだと噂された。
勿論、今更貴族令嬢方と交流を深めたいってささやかな願いからじゃない。
これは根回しだ。アルテミシアの周囲から貴族令嬢方を遠ざける為の。
ジャンヌはアルテミシアに近しい貴族令嬢はお茶会に誘わなかった。参加させてくださいって願われても一度は無碍に拒絶した。土下座の風習があったらしていたんじゃないかってぐらい懇願されてようやくそこまで言うのならと参加させた。そうして中立だった方やアルテミシアのおこぼれに与ろうとしていた方は次第にジャンヌへと傾いていった。
そんなジャンヌだったけれど、お茶会ではあくまでアルテミシアを気にするそぶりを見せなかった。むしろ構わないでおきましょうと些事のように扱っていた。人目憚らず学園で羨望の眼差しを受けていた殿方を侍らせる女に対してなんて寛大なんだ、と誰もがその慈悲深さに心動かされた。
「シャルル殿下はもう二度と私に振り向いてくださらないのかしら……?」
そんなジャンヌは時折シャルルが傍にいない寂しさを嘆きと涙で表現した。それは演技ではなくジャンヌの本音だったとは思う。それでもまさか恋い焦がれや胸の苦しみを隠そうとせずに武器として扱うなんて。憧れの公爵令嬢が見せる弱さは多くの方の同情を誘った。
「ジャンヌ様、気を落とさないでくださいませ。きっとシャルル殿下も貴女様の恋を分かってくださりますわ」
「ええ……ありがとう。貴女様のお心が胸に沁みます」
で、その同情がアルテミシアへの憤りに転換されるのはそう難しくなかった。
「それにしても許せないのはあの女です! 何ですかあのふてぶてしい態度はっ!」
「本当、品性の欠片もありませんわ。教養も家柄もジャンヌ様に遠く及ばないと言うのに」
多くの貴族令嬢方がアルテミシアへの不満を口にする。
この方々は学園内ではあくまでアルテミシアを罵ったり嫌がらせをしようとしない。それがジャンヌの意思でもあるから。代わりにアルテミシアを冷遇したり露骨に避けたり、こうした交流の場では彼女がいないのをいい事に愚痴の言いたい放題だった。
「ヴィクトワール様はブルゴーニュ伯爵令嬢を魔性の女と吐き捨てておられましたけれど、こう多くのご令嬢の心を掌握するジャンヌ様の方がよほど魔女なのでは?」
「魔女ではありません。悪役令嬢です」
「ジャンヌ様やカトリーヌ様が時々口にするその名詞、不思議な響きがしますわね」
いつだったかわたしはクレマンティーヌ様とそんな会話を交わしたっけ。
こうして同世代の大半がジャンヌ派閥に取り込まれた。けれどそれで満足するジャンヌではなく、夜になれば夜会に積極的に参加した。お腹の具合もあったからダンスは踊れなくなったけれどその分会話に華は咲かせられる。お母様も同行して多くの淑女と親睦を深めた。
「現在の王太子殿下のご様子、王妃様も嘆かれていらっしゃいます。私もジャンヌさんの力になりますわ」
「ありがとうございます」
王妃となるべく教育を施されたジャンヌの社交界での評価は高い。同世代、つまり淑女方からすれば姪や娘にあたるご令嬢からも慕われ、更には現王妃様からの信頼も厚い。万が一王太子殿下の気が狂って婚約破棄に至っても没落までは至らないとの見方が強いようだ。だから今のうちに恩を売ろう、って打算もあるんでしょうね。
「お久しぶりです、アドリエンヌ様」
「お、お久しぶりですジャンヌさん……」
で、更にジャンヌはなんとブルゴーニュ伯爵夫人、つまりアルテミシアの母親にも声をかけた。ジャンヌが笑顔を湛えて挨拶を送ったのに夫人は明らかに動揺と不安に彩られていた。無理もない、王太子殿下への横恋慕なんて家のお取り潰しにまで発展しかねないし。
「ところでアドリエンヌ様。私の学友でもあるアルテミシア様のお話なのですが……」
「た、大変申し訳ございませんっ!」
で、世間話から始まった雑談もそこそこにジャンヌが本題に触れた途端だった。伯爵夫人の顔が青ざめて唇を白くさせてこれでもかってぐらい頭を下げてきたのは。
酒の肴で眺めていた多くの方々もその手を止めて伯爵夫人に注目する。
「娘が大変な不敬をしているのは承知しています。ですが、ですが私はいかような罰も受けますのでどうか娘には寛大な処置を……!」
「落ち着いてくださいアドリエンヌ様。ここにいる皆様が驚いてしまっています」
ここまで謝罪されるとはジャンヌも思っていなかったらしく、軽く焦っているのが見て取れた。代わりにお母様が傍に寄って夫人の軽く肩を抱いた。そうしないと夫人は今にも罪悪感で気を失う勢いだったから。
後でジャンヌはこう語った。あれだけの事をしでかす娘を庇って代わりに処罰を受けようとする彼女から母親としての愛を感じた、と。それはまるで『双子座』で悪役令嬢を容赦なく切り捨てたお父様、そして幻の娘だけに溺れたお母様への恨みにも聞こえた。
「娘にも強く言い聞かせているのですが一向に改善しようとしないのです。主人がどれほど肩身の狭い思いをしているのか娘は全く無関心で……。あんな娘じゃあなかったのに、どうしてこんな……」
「アルテミシア様の様子がおかしくなったのは昨年の夏でしょうか?」
「はい……。優しく思いやりのあったあの子が突然学園に行きたいって言いだして。理由を訪ねたら天啓を受けた、自分は神様に愛された子なんだって騒ぎまして……」
「天啓ですか。それはまた随分と仰々しいですね」
確かに。転生は異端扱いだから前世の記憶を隠すのは分かるけれどそれを天啓だってごまかすとはね。いくら光を授かったからって大袈裟な気がする。万が一神様からお言葉を頂いたとしてもそれが返って彼女の破滅を招く破目になるのは皮肉なものだ。
「本当だとしたら何故神は私の娘にそれ程の試練をお与えになるのか! エルマントルド様、ジャンヌ様。私共はどうなっても構いませんからどうか娘にお慈悲を……!」
「ご安心ください。私共が陛下に取り計らいますので」
とジャンヌは伯爵夫人に優しく語りかけた。アドリエンヌ様は安心なさったようでその場で気絶し、夜会の主催者が使用人に命じて一旦退場となった。その背中を眺めるジャンヌは、しかしどこまでも冷たい眼差しだった。
「アドリエンヌ様もブルゴーニュ伯も心労が酷いそうよ。当たり前よね、だって学園であれだけの事をしでかしているんですもの」
「陛下に取り計らうって、アルテミシアに猶予をって?」
「まさか。陛下や司法府がどうお考えになるかまで私の考える範疇には無いわね。少なくとも小娘の不始末で一族揃って処罰されないよう求めるつもりだけれど」
「あのご夫人の希望とは真逆にアルテミシアだけを罰するつもりなんだね」
あくまでジャンヌの標的はアルテミシアただ一人。彼女は夜会に顔を出す事で彼女から大人達、更には両親すら引き剥がしていったんだ。あまりにも容赦なく冴えた立ち回りにわたしはつくづく感心してしまった。
「あら。カトリーヌはアルテミシアを許してあげて、とかは言わないのね」
「行動には結果が伴う。成功すれば大きな見返りがあるけれど失敗すれば破滅する。そこに情けの入り込む余地はないよ」
そう、これは博打みたいなものよ。攻略に失敗すれば悪役令嬢の悪意で破滅。攻略に成功すれば悪役令嬢を追い落として意中の王子様とハッピーエンドに。アルテミシアが脚本に沿った展開に賭けた以上は彼女には自分の未来を代償にしてもらわなきゃね。
乙女ゲーのメインヒロインってそういう存在でしょう?
「堀は埋めたし城門は壊した。後はなだれ込んで城を落とすだけかしら?」
「貴族令嬢方や紳士淑女方は味方にしたけれど、肝心の同年代の殿方はどうするの?」
「……。そう言えばそんな連中もいたわね」
「断罪イベントでは殿下お抱えの近衛兵の他に男子生徒も悪役令嬢の敵に回るんだから、そっちの根回しもしておかないと」
だろうと思ってそっち方面にはわたしが手を打っておきました。
別にわたし自身が殿方に声をかけて回る必要は無い。だって既にわたしの傍にはアルテュールがいてくれるもの。
アルテュールは男子生徒からの人望が厚い。剣の腕前、家柄、勉学、そして人柄。非の打ちどころがないものね。彼には周囲にアルテミシアに現を抜かすシャルルやアンリ様の体たらくをそれとなく批判してもらった。殿方の視点から見てもアレは異様に映るらしく、徐々に賛同が集まった。
それとお茶会を通じて知り合いになったヴィクトワール様には攻略対象者達を表だって非難して頂いた。シャルルから引き継いで現在生徒会長を務めていらっしゃる彼女の真っ当な言い分はすぐに同意する声が挙がった。さすがはご令嬢ばかりか殿方からも慕われる女性の誇りよね。
「ここ最近の成果は後でアルテュールに聞こうか」
「さすがにメインヒロインは格が違った、だったかしら?」
「いや、ジャンヌはそう言った言い回し覚えなくてもいいから……」
何にせよ、こうしてアルテミシアは急速に丸裸にされていった。
刻一刻と断罪イベントが近づく中で。
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