266 / 278
第3-1章 私は聖地より脱出しました
私は王子と結ばれました
しおりを挟む
「ようやく明かしてくれたって喜ぶべきなのか、今まで信用されてなかったんだって落ち込むべきなのか」
私は何も言い返せませんでした。彼が思っているようにこれ以上余計な心配をしてほしくなかったから喋らなかったのではなく、単に知る必要は無いと判断したからです。私が些事と思っていてもチェーザレにとっては違うとしたら、申し訳なく思います。
「他に知ってる奴はいるのか?」
「セラフィナとトビアには話しました。二人とも同じ境遇でしたので」
「……本当か? 今まで気づかなかった」
「お父様にもお母様にも打ち明けていません。そう言った意味ではチェーザレに初めて聞いてもらいました」
「……そうか」
セラフィナが転生したベネデッタだったので乙女げーむの設定は根底から覆ってはいます。別に祝福の奇蹟なんて羨ましいとも思いませんし、素敵な殿方との恋愛に興じても関係ありません。むしろこれからも良き姉妹関係のままでいたいと思うほどです。
それでも、私が人並みの幸せを得るには脚本に記された破滅への道標を何としてでも打ち壊さねばなりません。その為にもアウローラには何としてでも女教皇に就任していただき、救出の恩をもって色々と便宜を図ってもらわねば。
「チェーザレの心配は嬉しいのですが、アウローラ様が帰還しないと意味がありません。私は聖女方と共に最後まで残ります」
「……事情は分かった。なら、俺も残る」
チェーザレは私の隣に座り、私の手を取りました。私の手が痛くならないよう、優しく添えるように。
「チェーザレは王子なんですから無理を通せば明日にでも聖地から離れられますよね。家臣の方からは進言されなかったんですか?」
「キアラも俺の身を案じてくれてるんだと思うけれど、俺はキアラが残る限り離れるつもりは無い。俺が絶対にキアラを守るから」
チェーザレは身体をこちらに向け、真正面から私を見つめました。座高も差があるので私は少し顎を上げる形になります。間近で見ると端正な顔立ちをしています。まつげも長く瞳は輝き、顎の線ががっちりしてきており男らしさを感じさせます。
「言っておくが、俺は聖女とキアラだったらキアラを取るからな。自分より先に聖女を救え、なんて言うのは無しな」
「私だってわが身は可愛いですからそんな命を捨てる覚悟は……確かに本当にそんな状況に遭遇してしまったらそう口走るかもしれませんね」
「神託より自分の方を優先して欲しいんだ。何だったらキアラを待っている人のためにって思ってもいい」
「……それなら確かに生き延びなければって思えますね」
チェーザレが奥側の手を私の奥の肩に添えました。自然と私の身体もチェーザレに向きます。彼との距離がとても近く、周りが静かなのもあって彼の吐息の音が聞こえます。それより自分の心臓の高鳴りがうるさくなってたまりません。
「……キアラ」
「……何でしょうか?」
「俺は、キアラに幸せになってほしい」
「ええ」
「俺がキアラを幸せにしたい」
「ええ」
更に二人の距離が近づきます。既にお互いの吐く息が相手の顔にかかるぐらいに。身体も寄っているので既に私の膨らんだ胸と彼の鍛えられた胸が触れ合っています。いつの間にか彼の太い腕が私の背中に回されていました。私も自分の手を彼の首に回します。
私が救った時にはあんなにもか弱かったのに。
今ではこんなに立派になって私を守ってくれる、私を想ってくれる。
私は……そんな彼と一緒に幸せになりたいと願います。
「キアラ、愛してる」
「愛しています、チェーザレ」
大切に思う心を愛と表現し、私達は自然と相手の全てを欲しました。
恋しい人を求め、愛する人を受け入れ、思い人に全てを捧げます。
かけがえのない人の名を何度も口にします。
これまで私達が抱いていた思いをさらけ出しました。
互いを確かめ合い、むさぼるように味わいました。
嗚呼。私は今、チェーザレと一つになっています。
私は何も言い返せませんでした。彼が思っているようにこれ以上余計な心配をしてほしくなかったから喋らなかったのではなく、単に知る必要は無いと判断したからです。私が些事と思っていてもチェーザレにとっては違うとしたら、申し訳なく思います。
「他に知ってる奴はいるのか?」
「セラフィナとトビアには話しました。二人とも同じ境遇でしたので」
「……本当か? 今まで気づかなかった」
「お父様にもお母様にも打ち明けていません。そう言った意味ではチェーザレに初めて聞いてもらいました」
「……そうか」
セラフィナが転生したベネデッタだったので乙女げーむの設定は根底から覆ってはいます。別に祝福の奇蹟なんて羨ましいとも思いませんし、素敵な殿方との恋愛に興じても関係ありません。むしろこれからも良き姉妹関係のままでいたいと思うほどです。
それでも、私が人並みの幸せを得るには脚本に記された破滅への道標を何としてでも打ち壊さねばなりません。その為にもアウローラには何としてでも女教皇に就任していただき、救出の恩をもって色々と便宜を図ってもらわねば。
「チェーザレの心配は嬉しいのですが、アウローラ様が帰還しないと意味がありません。私は聖女方と共に最後まで残ります」
「……事情は分かった。なら、俺も残る」
チェーザレは私の隣に座り、私の手を取りました。私の手が痛くならないよう、優しく添えるように。
「チェーザレは王子なんですから無理を通せば明日にでも聖地から離れられますよね。家臣の方からは進言されなかったんですか?」
「キアラも俺の身を案じてくれてるんだと思うけれど、俺はキアラが残る限り離れるつもりは無い。俺が絶対にキアラを守るから」
チェーザレは身体をこちらに向け、真正面から私を見つめました。座高も差があるので私は少し顎を上げる形になります。間近で見ると端正な顔立ちをしています。まつげも長く瞳は輝き、顎の線ががっちりしてきており男らしさを感じさせます。
「言っておくが、俺は聖女とキアラだったらキアラを取るからな。自分より先に聖女を救え、なんて言うのは無しな」
「私だってわが身は可愛いですからそんな命を捨てる覚悟は……確かに本当にそんな状況に遭遇してしまったらそう口走るかもしれませんね」
「神託より自分の方を優先して欲しいんだ。何だったらキアラを待っている人のためにって思ってもいい」
「……それなら確かに生き延びなければって思えますね」
チェーザレが奥側の手を私の奥の肩に添えました。自然と私の身体もチェーザレに向きます。彼との距離がとても近く、周りが静かなのもあって彼の吐息の音が聞こえます。それより自分の心臓の高鳴りがうるさくなってたまりません。
「……キアラ」
「……何でしょうか?」
「俺は、キアラに幸せになってほしい」
「ええ」
「俺がキアラを幸せにしたい」
「ええ」
更に二人の距離が近づきます。既にお互いの吐く息が相手の顔にかかるぐらいに。身体も寄っているので既に私の膨らんだ胸と彼の鍛えられた胸が触れ合っています。いつの間にか彼の太い腕が私の背中に回されていました。私も自分の手を彼の首に回します。
私が救った時にはあんなにもか弱かったのに。
今ではこんなに立派になって私を守ってくれる、私を想ってくれる。
私は……そんな彼と一緒に幸せになりたいと願います。
「キアラ、愛してる」
「愛しています、チェーザレ」
大切に思う心を愛と表現し、私達は自然と相手の全てを欲しました。
恋しい人を求め、愛する人を受け入れ、思い人に全てを捧げます。
かけがえのない人の名を何度も口にします。
これまで私達が抱いていた思いをさらけ出しました。
互いを確かめ合い、むさぼるように味わいました。
嗚呼。私は今、チェーザレと一つになっています。
11
お気に入りに追加
1,378
あなたにおすすめの小説
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
旦那様は離縁をお望みでしょうか
村上かおり
恋愛
ルーベンス子爵家の三女、バーバラはアルトワイス伯爵家の次男であるリカルドと22歳の時に結婚した。
けれど最初の顔合わせの時から、リカルドは不機嫌丸出しで、王都に来てもバーバラを家に一人残して帰ってくる事もなかった。
バーバラは行き遅れと言われていた自分との政略結婚が気に入らないだろうと思いつつも、いずれはリカルドともいい関係を築けるのではないかと待ち続けていたが。
私の婚約者は6人目の攻略対象者でした
みかん桜(蜜柑桜)
恋愛
王立学園の入学式。主人公のクラウディアは婚約者と共に講堂に向かっていた。
すると「きゃあ!」と、私達の行く手を阻むように、髪色がピンクの女生徒が転けた。『バターン』って効果音が聞こえてきそうな見事な転け方で。
そういえば前世、異世界を舞台にした物語のヒロインはピンク色が定番だった。
確か…入学式の日に学園で迷って攻略対象者に助けられたり、攻略対象者とぶつかって転けてしまったところを手を貸してもらったり…っていうのが定番の出会いイベントよね。
って……えっ!? ここってもしかして乙女ゲームの世界なの!?
ヒロイン登場に驚きつつも、婚約者と共に無意識に攻略対象者のフラグを折っていたクラウディア。
そんなクラウディアが幸せになる話。
※本編完結済※番外編更新中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる