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第3-1章 私は聖地より脱出しました
浄化の聖女は聖域の聖女に出迎えられました
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「神の意志に逆らって口答えする気?」
「神は言っていませんよ。教会に属して聖女になれ、だなんてね」
あくまで教会とは全てを救えとの神の使命を果たすために集った組織であり、一番の近道だから希望はすれど強制的に加入しなければならないのはおかしいでしょう。それこそカロリーナ先生のように教会とは別に活動が出来るんですから。
私の指摘にリッカドンナはぐうの音も出ないぐらい完全論破された感が出ていました。必死になって私の主張を覆そうと悩んでいるようですが、実際に神の使命と教会を結びつける材料がない以上は徒労に終わるだけでしょう。
「婚約者を同伴させるのが許されないとはリッカドンナ様の主張ですよね?」
「それ、は……」
「確かに聖女の絶対数が少ない暗黒期であれば責務を放棄したとみなされても無理はありません。しかし今はリッカドンナ様を始めとして五名もの聖女、そして決して少なくない数の聖女候補者がいらっしゃるではありませんか」
「充分な人数がいるんだから一人ぐらい恋愛にうつつを抜かしたって許されるべきだ、とでも言いたいの?」
「教会が聖女の恋愛を禁じていない以上は悪ではないと解釈されているのが現実かと。当然これは私の意見ですのでリッカドンナ様に強要するつもりはありませんがね」
「減らず口を……」
まあ、リッカドンナは聖女は人の救済に身も心も魂すら捧げて取り組むべきと考えているようですから教会の方針は生温いとでも思っているんでしょうね。しかし大義が無い以上はリッカドンナの主張はただの意見の押し付けに過ぎません。
「神がお許しにならないわよ」
「その際は神が忠告なさるでしょうね」
現時点で神の言葉を無視し続けている私に天罰が下っていない以上は神も私の今の在り方を許容しているんでしょう。であれば心配する必要はありません。これからも私は真っ先に私の幸福について考えるとしますから。
……と考えながらもいざ目の前で苦しむ人が現れたら手を差し伸べてしまうのですから、私って馬鹿ですよね。平時の今は自分を戒められても危機に遭遇したら助けたいとの願いが勝ってしまうのですから救いようがありません。
気を付けなければいけませんね。神を満足させないように。
「ところでリッカドンナ様。いつまでもそのような仏頂面では折角迎えに来て下さった方に失礼ではありませんか?」
「えっ?」
リッカドンナは私への糾弾に熱中していたせいか、船がいつの間にか接岸していたことに気付いていないようでした。今は船に橋がかけられている最中で、甲板には既に多くの方が下船を待ち望んでいる姿が見られました。
一方、岸の方では新たな聖女の到着を歓迎する為に多くの市民や兵士達が集まっていました。……半分以上の人に疲れが見て取れるのは度重なる防衛戦で疲れているせいでしょうか? そんな中で久々に明るい話題になったのか、誰もが歓喜しています。
「嘘、アウローラ様もいらっしゃるじゃないの!」
「リッカドンナ様、手すりからそんな前のめりになっては危ないですよ」
リッカドンナの視線の先は複数の神官や聖職者に囲まれた女性でした。煌びやかで豪奢な法衣に身を包んだ彼女は高貴な雰囲気でありながらも厳粛。一目でこの聖地を支える立派な方なんだと納得してしまいました。
「リッカドンナちゃーん! 元気にしてたー?」
そんな聖域の聖女アウローラは、リッカドンナの姿を捉えると満面の笑みをこぼし、声をあげながら大きく手を振ってきました。大勢が集ったこの場においてもとても目立っており、声をかけられたリッカドンナは恥ずかしそうに赤面しつつ慌てます。
「アウローラ様! あたしもうそんな風に言われる年じゃありません!」
「照れちゃってー。わたしからすればリッカドンナちゃんはいつまでも可愛い娘よー」
前言撤回したくなりました。
何というか、その……とても独特な方なのですね。
「神は言っていませんよ。教会に属して聖女になれ、だなんてね」
あくまで教会とは全てを救えとの神の使命を果たすために集った組織であり、一番の近道だから希望はすれど強制的に加入しなければならないのはおかしいでしょう。それこそカロリーナ先生のように教会とは別に活動が出来るんですから。
私の指摘にリッカドンナはぐうの音も出ないぐらい完全論破された感が出ていました。必死になって私の主張を覆そうと悩んでいるようですが、実際に神の使命と教会を結びつける材料がない以上は徒労に終わるだけでしょう。
「婚約者を同伴させるのが許されないとはリッカドンナ様の主張ですよね?」
「それ、は……」
「確かに聖女の絶対数が少ない暗黒期であれば責務を放棄したとみなされても無理はありません。しかし今はリッカドンナ様を始めとして五名もの聖女、そして決して少なくない数の聖女候補者がいらっしゃるではありませんか」
「充分な人数がいるんだから一人ぐらい恋愛にうつつを抜かしたって許されるべきだ、とでも言いたいの?」
「教会が聖女の恋愛を禁じていない以上は悪ではないと解釈されているのが現実かと。当然これは私の意見ですのでリッカドンナ様に強要するつもりはありませんがね」
「減らず口を……」
まあ、リッカドンナは聖女は人の救済に身も心も魂すら捧げて取り組むべきと考えているようですから教会の方針は生温いとでも思っているんでしょうね。しかし大義が無い以上はリッカドンナの主張はただの意見の押し付けに過ぎません。
「神がお許しにならないわよ」
「その際は神が忠告なさるでしょうね」
現時点で神の言葉を無視し続けている私に天罰が下っていない以上は神も私の今の在り方を許容しているんでしょう。であれば心配する必要はありません。これからも私は真っ先に私の幸福について考えるとしますから。
……と考えながらもいざ目の前で苦しむ人が現れたら手を差し伸べてしまうのですから、私って馬鹿ですよね。平時の今は自分を戒められても危機に遭遇したら助けたいとの願いが勝ってしまうのですから救いようがありません。
気を付けなければいけませんね。神を満足させないように。
「ところでリッカドンナ様。いつまでもそのような仏頂面では折角迎えに来て下さった方に失礼ではありませんか?」
「えっ?」
リッカドンナは私への糾弾に熱中していたせいか、船がいつの間にか接岸していたことに気付いていないようでした。今は船に橋がかけられている最中で、甲板には既に多くの方が下船を待ち望んでいる姿が見られました。
一方、岸の方では新たな聖女の到着を歓迎する為に多くの市民や兵士達が集まっていました。……半分以上の人に疲れが見て取れるのは度重なる防衛戦で疲れているせいでしょうか? そんな中で久々に明るい話題になったのか、誰もが歓喜しています。
「嘘、アウローラ様もいらっしゃるじゃないの!」
「リッカドンナ様、手すりからそんな前のめりになっては危ないですよ」
リッカドンナの視線の先は複数の神官や聖職者に囲まれた女性でした。煌びやかで豪奢な法衣に身を包んだ彼女は高貴な雰囲気でありながらも厳粛。一目でこの聖地を支える立派な方なんだと納得してしまいました。
「リッカドンナちゃーん! 元気にしてたー?」
そんな聖域の聖女アウローラは、リッカドンナの姿を捉えると満面の笑みをこぼし、声をあげながら大きく手を振ってきました。大勢が集ったこの場においてもとても目立っており、声をかけられたリッカドンナは恥ずかしそうに赤面しつつ慌てます。
「アウローラ様! あたしもうそんな風に言われる年じゃありません!」
「照れちゃってー。わたしからすればリッカドンナちゃんはいつまでも可愛い娘よー」
前言撤回したくなりました。
何というか、その……とても独特な方なのですね。
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