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第1-2章 私は南方王国に行きました

私は真実の告白を始めました

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「それで、どのようにあの場の後片付けをしたのです?」
「どうって、増えたフィリッポの腕は誰にも見せられないからとりあえずジョアッキーノにあずかってもらった。後で共同墓地にでも埋めてくる」
「私に腕を元の姿に戻せる程の奇蹟があればフィリッポに怖くて痛い思いをさせずに済んだのですが……」
「数人しかいない聖女の一人があんな応急処置しか出来なかったんだ。贅沢は言ってられないって」

 私が授かってしまった復活の奇蹟は天に召された死者すら再び生命活動をさせるもの。既に治ってしまっていたフィリッポは改善させられないのです。なので彼には再び傷ついてもらう他ありませんでした。後で彼には謝罪しなければいけませんね。

「床掃除は使用人に頼んでおいた。フィリッポには悪かったけれど自暴自棄になって鼻を打ったせいで鼻血が出たって事にしておいたから」
「……まあ、その程度の名誉の損失は致し方が無いかと」
「それからフィリッポは気絶したままだったからまたベッドに寝かせておいたぞ」
「目撃者はどうなさったのです?」
「フィリッポを看病してた使用人なら途中で気を失ってたじゃないか。後は俺とジョアッキーノとキアラん所の侍女ぐらいだったと思うぞ」

 あれ、そうでしたっけ? 言われてみれば確かにチェーザレ達三人の他の反応は返って来ていなかったような。扉は閉まっていましたから外から状況は伺えませんし、部屋はフィリッポが独占していたので他には部屋にいませんでしたし。

 フィリッポの方は後からいくらでもごまかせるでしょう。ですがジョアッキーノとトリルビィには最低限打ち明けなければいけませんね。二人が私を庇ってくださるか聖女に突き出すかは私の話術にかかっていますか。

「ジョアッキーノ様とトリルビィはどうしました?」
「とりあえずは母さんの所に行ってもらってる。……さすがにこのまま解散ってわけにはいかないだろ?」
「お心遣い感謝いたします」

 もう隠せないのですから真実と向き合わなければいけません。
 他人の秘密を突き付けられるトリルビィ達ではなく、告白する私の方が。

 ■■■

 コルネリアの部屋は国王の寵愛を受ける妃に相応しく広い間取りでした。しかし思い描いていたような豪華絢爛な様子ではありません。私物は少ないですし調度品も要所に置かれるのみ。簡素にまとめられて清潔、それが部屋全体に品格をもたらしていました。

 そんな広い部屋には寂しい人数しかおりませんでした。私が前にするのはコルネリアとチェーザレ、そしてジョアッキーノのみ。コルネリア付きの侍女を始めとする王宮使用人達はコルネリアの命令で人払いされていました。私の傍らにはトリルビィが控えています。

「お嬢様、気分が優れないようでしたらまた日を改めて……」
「いえ……今日を逃せば当分の間明かす時間は来ないでしょう。何より告白する勇気がある今しか考えられないのです」
「……承知致しました」

 トリルビィは私の真実よりも私の身を按じてくれていました。そんな心遣いが今の私には心強くてたまりません。コルネリアもジョアッキーノも真実なんかより私へ心配が先行しているようでして、とても嬉しゅうございました。

 そんな彼、彼女達だからこそ私は嘘の無い真実を口に出来るのです。

「結論から申しますと、先ほどフィリッポに施したのは聖女の奇蹟と呼ばれる代物に間違いありません」
「はあっ!?」

 一番大声を上げたのはジョアッキーノでしたが皆大なり小なり驚きを露わにしていました。ただコルネリアとチェーザレは同時に納得いったように頷いてもいましたが。ジョアッキーノは片眉を吊り上げて頭に疑問符を浮かべている様子でしたね。

 ちなみに聖女になる前の候補者が奇蹟を行使する例は歴史上あったそうです。神より使命を言い渡されている、と有難がられるんだそうですが、神を凌いだ崇拝の対象になる前に教会で保護して正式な聖女となるよう教えを施すんだとか。

「いや、ちょっと待ってよ。キアラは聖女の適性値が低いから父さんの嫁になるって話でこっち来たんじゃなかったのかよ?」
「はい。適正値が低いと偽ったためそうなりました」
「嘘だろ……。聖女って特権目当てでズルする女は結構いるらしいけど、逆なんて聞いた事無いぞ僕は」
「現に逃げた例がここにおります」
「いや、何でだよ?」

 どうしてか? そんなの決まっているではありませんか。

「聖女になりたくなかったからです」
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