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告白

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「でも、そんな心配いらなかったみたいだよね」
「そ、そうだね」
「あのさ、あのときは僕もいっぱいいっぱいで言えなかったんだけど」
「なに?」
「……僕も、好きだよ」
「……え?」
「だから、僕も夏生くんのことが好きだよって。何回も好きって言ってくれたじゃん」

 榛名くんが好きと言ってくれた。それは、めちゃくちゃに嬉しい。
 けれど、僕も、という言葉に引っかかった。俺の好意はバレバレだろうし話したような覚えもあるけれど、ちゃんと告白した記憶はなかった。

「……え!? 俺告白してたの!?」
「覚えてないの?ひどいなあ、本気じゃなかったってこと?」
「本気!!!じゃない訳ない!!めっちゃ好き!!……言った覚えは正直ないですけど、好きなのは本当です!!」
「声でか」

 好きだって、言えなかったと俺は思っていた。俺が自覚もなく何かを言ってしまっていたとしたら、タイミングはひとつしかない。

「俺、なんか最後のほうはマジで興奮しすぎて頭回ってなくて……」
「まあ、そうかもなとは思ったけどさ。僕のことめちゃめちゃにしながら、数えきれないくらい好き、好き、かわいいってたくさん言ってたよ」
「あーーーーまじで恥ずかしいやめて」
「僕は嬉しかったんだけど」
「俺は恥ずかしい」
「あはは、うける」

 おかしそうに笑ってる榛名くんは本当にかわいいけれど、熱に浮かされたような勢いで告白してしまっていたことを知って、俺はものすごく恥ずかしい。顔から火が出そうなんて言うけれど、こういう感じのことか、と身をもって実感した。

 夢でも見ているんじゃないかと思う。だって、つい数日前までは、彼の動画をスマホで眺めながら毎日なんじゃないかってくらい一人でシていたんだ。

 「ね、僕と付き合ってくれる?」

  こんなこと、妄想でしかあり得ない。今だって、彼が目の前に居るということさえちょっと信じられないのに、彼が動画で聞いていたあの声で、俺に告白してくれている。

「……っ! 俺と、付き合ってください!」
「あはは、お願いし返されちゃった」

 絶対俺のほうが榛名くんのことを好きなのに、好きになったのは俺が先なのに、榛名くんに告白させてしまうのはなんだか自分の気が済まなかった。改めて自分からも告白したら、榛名くんは笑っていた。イエスもノーも返ってきていないのに、怖くはなかった。

「じゃあ、これからよろしくね、夏生くん」
「~~っ!嬉しい、大事にします」
「僕も」

 自分でもまだ事態が飲み込めていない部分もあるけれど、覚悟は決まっている。
 叶うなんてちっとも思っていなかった恋だけれど、俺の緊張も何もかもを、全然特別じゃないかのように当たり前に受け入れて笑っていてくれる榛名くんを見ていると、ああ、これって現実なんだなという実感を得られる。

 そして、現実味のなかった恋は、実って一度手にしてしまえば、もう絶対に離したくない、離すものかと思えた。
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