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第3章 【すぐに行く】

3-5

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 春輝のおばあさんが作った、おいしい唐揚げを食べながら、わたしはぼうっとしていた。

「どう? 奈央ちゃん、お味は」
「あ、すっごくおいしいです!」
「じゃあもっとたくさん食べてね」

 おいしいのは本当だ。もっと食べたいとも思う。だけどさっきから胸がいっぱいで、食べられないんだ。
 春輝と――キスをしたから。
 思い出すだけで鼓動が速くなり、顔が熱くなってしまう。
 ちらっと隣の席を見ると、春輝がパクパクとご飯を食べていた。

「ばあちゃん、おかわり!」
「春輝、あんた三杯目」

 おばあさんがあきれた顔で、茶碗を受け取る。

「いやー、なんか今日のご飯、めっちゃうまくてさ! あ、唐揚げももっと食っていい?」

 山盛りの唐揚げに箸を伸ばす春輝を見て、ため息が出る。
 こいつ、なんでこんなに余裕なの?
 もしかして春輝は、誰かとキスしたことあるのかな?
 女の子とつきあったことあるのかな?
 そんなことを考えたらもやもやしてきて、自分で自分が嫌になる。


 ご飯を食べ終わると、ずいぶん遅い時間になってしまった。

「遅くなっちゃったね。おうちの人、心配してるんじゃない?」

 おばあさんの言葉に、笑顔で答える。

「大丈夫です。連絡してあるし」

 叔母さんには【帰りが少し遅くなります】とメッセージを送った。返事はないけれど。

「春輝。家まで送ってあげな」
「言われなくても送ってくよ」

 春輝がわたしを見て、にこっと微笑む。

「奈央はおれの、大事な彼女なんだし」

 なんだかこいつ、キスをしたからって調子乗ってない?
 ちょっとムカつくんですけど。
 冷たい目で春輝を見上げると、やっぱり春輝は嬉しそうににこにこ笑っていた。
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