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五部
79/ニック
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すやすやと眠る研究員の姿を見て、ロドリーはほっと胸を撫で下ろした。しかし、執政府に情報が入ったことは確かだ。あとは、彼がどう動くか。保証のないほんのわずかな可能性にかけて、ロドリーはニックと目を合わせる。
「ありがとうニック」
ニックが得意げな顔をするので、ロドリーはなんだか自分まで嬉しくなってきた。
「あの……」
そして、眠っている研究員を丁寧に床に寝かせているゾマーの母親を見る。
「すみません…研究所の仲間なのに…」
「いいのよ。これで彼らも悪夢から覚めるでしょう」
ゾマーの母親はそう言って微笑むと、モモを見上げた。
「さぁ次は、メイン研究室の方へ行くわよ。きっと、警備隊がすぐにこちらに送られてくるでしょう」
「…はい!」
ロドリーはモモと同時にうなずくと、階段の踊り場から下のフロアへと向かった。カウチェが逃げたことに気づいた研究員の一人が、こっそり執政府に連絡しているということを、モモが教えてくれた。ロドリーとゾマーの母親は、カウチェが囚われていたフロアを抜けたところにある階段でその研究員を見つけ、ニックに眠らせてもらったところだ。
「メインの研究室には、明日の実験の主力が缶詰めになっているはずよ。カウチェがいなくなったことに、彼らがまだ気づいていないといいのだけど」
「皆さん、どうして目的など二の次で、その手段の研究に没頭できるのでしょうか?」
ロドリーは、ずっと思っていた疑問を口にする。
「僕にはそれがよくわかりません」
「そうね。その考えは間違っていないわ。私も、研究員の一人だからよく分かるんだけど、どうしても、自分たちの手で新しいものを見つけられる、形にできるって思うと、周りなんて見えなくなってしまうのよね。皮肉なことだけど、それによってもたらされる結果について、疎かになってしまうの。研究を完成させて、実験を成功させれば勝ち。自己満足の欲求に、なかなか気づけないのよ」
「……そういうものなんですか?」
「ロドリーは、何か熱中してることってある?」
「僕は…そうですね…」
ニックがロドリーを見上げる。
「僕、将来は薬術関係の仕事をしたいなって思ってるんです。それで、今はまだまだできないことが多いけれど、少しずつ、勉強はしています。失敗ばっかりで、成績も全然良くないんですけどね…」
「ふふふ。まだこれからですもの」
「はい。僕もそう思っています。いつか、僕の作った薬が、多くの人を救えるといいなって、ほんの少しでも、誰かの助けになることができればいいなぁって思っています。僕にそんなことができるのかは、わかりませんけどね」
ロドリーは恥ずかしそうに笑った。
「ちょっとでも、楽な気持ちになって欲しいんです。…人知れず、苦しんでいる人に」
「ロドリーは素敵な目標を持っているのね」
ゾマーの母親は、ゾマーそっくりの明るい笑顔をした。
「私も、そういう気持ちで研究を始めたわ。ついこの間まで、その気持ちに言い訳をしてしまいそうになっていたけど、やっぱり、初心を蔑ろにしてしまっては駄目ね」
「……?」
ロドリーは首を傾げる。吹っ切れたような晴れ晴れしいその口調にニックはワクワクしてきたようで、跳ねるように歩きだした。
「あなたには、その気持ちをいつまでも忘れて欲しくないわ。私も、反省しないと」
「…はい!僕、できるところまでは諦めないつもりです」
「ふふふふ。なんだか私も、ルーキーに戻った気分だわ。ありがとう、ロドリー」
「よくわかりませんが、もし、お役に立てたなら、光栄です!」
ロドリーの柔らかい笑顔に、ゾマーの母親は目を細めた。息子は、どうやら学校で、とてもかけがえのないものを得たようだ。ゾマーの母親は、息子が誇らしかった。親馬鹿と言われてもいい。それでも、愛する息子は、しっかりと、着実に学びを深めているようだ。
この素晴らしい友人たちと、これからも色々なことを切磋琢磨していくのだろう。
その時、母親にできることは、その道を阻まないことだ。頭の中がハリケーンのように荒れ狂うことがあれば、その背中をたまには勇気づけ、数えることをやめてしまうくらいの苦しみや悲しみを潜り抜けていく中で、改めて実感する喜びに出会い、豊かな心を育んでいく様をそっと見守るだけだ。
「あそこが研究室よ」
廊下の角から、ゾマーの母親は殺風景な扉を指差した。
「ニック」
ロドリーはしゃがみ込み、ニックの視線に合わせる。
「お願いできるかな?」
ニックは、自分に任せなさい、と言わんばかりに大きく頷いた。ロドリーはもう一度研究室の様子を窺うと、あたりに誰もいないかよく確かめた。
正直なところ、執政府に連絡が入った今、もうこそこそする必要もないのだが、ロドリーはその警戒を解くことはしなかった。モモも、ロドリーの真似をしてあたりをきょろきょろと見ている。
「誰もいません!」
「ええ。皆、本当に閉じこもっているのね」
ゾマーの母親は、ロドリーより前を歩いた。そしてそのまま扉の鍵に腕輪を近づけて解錠すると、そっと扉を開けた。モモが、その隙間から中を覗いた。
研究室の中では、二十人ほどの研究員がそれぞれ意見を交わしながら、実験用の腕輪を片手に右往左往している様が見える。
しんと静まり返っている殺風景な廊下からは想像できないほど、部屋の中は活気に溢れていた。これまで途中にガラス窓から窺えた他の研究室よりも、圧倒的に熱気を感じる。
「……今よ」
ゾマーの母親が、こそっとロドリーに向かって呟いた。ロドリーがニックの背中を撫でると、ニックは扉の隙間に顔を挟んだ。そして目を閉じ、何かを祈るようにすぅっと息を吸い込むと、ニックの丸いツノが仄かに青みを帯びたパステルグリーンに輝いていく。
そのツノからは、目には見えないが、空気が振動していることから波が発生しているのが分かった。微かに、ラベンダーのアロマの香りが漂ってくる。ロドリーは、思わず目がとろんとした。しかし、すぐに気を引き締め、自分の頬を叩いた。
研究員たちは、騒がしく話していたその声が次第に小さくなっていった。会話がペースダウンし、力が抜けてきたのか、手に持っていたものを落とす音があちこちからする。
立っていた研究員は、その足元が崩れ、幸福そうな顔をして緩やかに倒れていった。座っていた研究員も、大きなあくびをして、そのまま机に突っ伏した。
「…皆さん、とても疲れていたんですね」
ロドリーは、予想以上の効果に目を丸くした。
「そうね。ここ最近は、よく休めていなかったのでしょう」
ゾマーの母親は、研究員たちを同情するような目で見た。そして、ほっとしたように口元を緩める。
「たまにはゆっくり、眠ることも大事でしょう」
研究員たちが眠りに落ちていく姿に、そう声をかけた。
ロドリーは、ニックのツノが正常に戻ると、その頭を愛おしそうに撫でる。
「本当に、よくやった!偉いよ!ニック!」
ロドリーの抑えきれない感謝の気持ちを、ニックは全身で受けた。そして研究室の中に入ると、ロドリーは実験のあらましをまとめているレポートを手に取った。一番前に、堂々と掲示されていたのだ。
「君はさよならだ」
レポートの回収も終わった。あとは、忘却術を使い、研究員たちの実験に関する記憶を改竄し、警備隊の到着を待つだけだ。そうすれば、ミッションは終わりだ。ロドリーが後ろを振り返ると、ゾマーの母親が研究室の中をまじまじと見回している。
「ロドリー」
「はい…?」
「仲間たちがこんなことをしておいて図々しいのだけど、私のお願いを、聞いてくれるかしら?」
ロドリーは、ゾマーの母親の覚悟を決めたような声に首を傾げ、視界に入っているモモと目を合わせる。モモの瞳もきょとんとしていた。
「ありがとうニック」
ニックが得意げな顔をするので、ロドリーはなんだか自分まで嬉しくなってきた。
「あの……」
そして、眠っている研究員を丁寧に床に寝かせているゾマーの母親を見る。
「すみません…研究所の仲間なのに…」
「いいのよ。これで彼らも悪夢から覚めるでしょう」
ゾマーの母親はそう言って微笑むと、モモを見上げた。
「さぁ次は、メイン研究室の方へ行くわよ。きっと、警備隊がすぐにこちらに送られてくるでしょう」
「…はい!」
ロドリーはモモと同時にうなずくと、階段の踊り場から下のフロアへと向かった。カウチェが逃げたことに気づいた研究員の一人が、こっそり執政府に連絡しているということを、モモが教えてくれた。ロドリーとゾマーの母親は、カウチェが囚われていたフロアを抜けたところにある階段でその研究員を見つけ、ニックに眠らせてもらったところだ。
「メインの研究室には、明日の実験の主力が缶詰めになっているはずよ。カウチェがいなくなったことに、彼らがまだ気づいていないといいのだけど」
「皆さん、どうして目的など二の次で、その手段の研究に没頭できるのでしょうか?」
ロドリーは、ずっと思っていた疑問を口にする。
「僕にはそれがよくわかりません」
「そうね。その考えは間違っていないわ。私も、研究員の一人だからよく分かるんだけど、どうしても、自分たちの手で新しいものを見つけられる、形にできるって思うと、周りなんて見えなくなってしまうのよね。皮肉なことだけど、それによってもたらされる結果について、疎かになってしまうの。研究を完成させて、実験を成功させれば勝ち。自己満足の欲求に、なかなか気づけないのよ」
「……そういうものなんですか?」
「ロドリーは、何か熱中してることってある?」
「僕は…そうですね…」
ニックがロドリーを見上げる。
「僕、将来は薬術関係の仕事をしたいなって思ってるんです。それで、今はまだまだできないことが多いけれど、少しずつ、勉強はしています。失敗ばっかりで、成績も全然良くないんですけどね…」
「ふふふ。まだこれからですもの」
「はい。僕もそう思っています。いつか、僕の作った薬が、多くの人を救えるといいなって、ほんの少しでも、誰かの助けになることができればいいなぁって思っています。僕にそんなことができるのかは、わかりませんけどね」
ロドリーは恥ずかしそうに笑った。
「ちょっとでも、楽な気持ちになって欲しいんです。…人知れず、苦しんでいる人に」
「ロドリーは素敵な目標を持っているのね」
ゾマーの母親は、ゾマーそっくりの明るい笑顔をした。
「私も、そういう気持ちで研究を始めたわ。ついこの間まで、その気持ちに言い訳をしてしまいそうになっていたけど、やっぱり、初心を蔑ろにしてしまっては駄目ね」
「……?」
ロドリーは首を傾げる。吹っ切れたような晴れ晴れしいその口調にニックはワクワクしてきたようで、跳ねるように歩きだした。
「あなたには、その気持ちをいつまでも忘れて欲しくないわ。私も、反省しないと」
「…はい!僕、できるところまでは諦めないつもりです」
「ふふふふ。なんだか私も、ルーキーに戻った気分だわ。ありがとう、ロドリー」
「よくわかりませんが、もし、お役に立てたなら、光栄です!」
ロドリーの柔らかい笑顔に、ゾマーの母親は目を細めた。息子は、どうやら学校で、とてもかけがえのないものを得たようだ。ゾマーの母親は、息子が誇らしかった。親馬鹿と言われてもいい。それでも、愛する息子は、しっかりと、着実に学びを深めているようだ。
この素晴らしい友人たちと、これからも色々なことを切磋琢磨していくのだろう。
その時、母親にできることは、その道を阻まないことだ。頭の中がハリケーンのように荒れ狂うことがあれば、その背中をたまには勇気づけ、数えることをやめてしまうくらいの苦しみや悲しみを潜り抜けていく中で、改めて実感する喜びに出会い、豊かな心を育んでいく様をそっと見守るだけだ。
「あそこが研究室よ」
廊下の角から、ゾマーの母親は殺風景な扉を指差した。
「ニック」
ロドリーはしゃがみ込み、ニックの視線に合わせる。
「お願いできるかな?」
ニックは、自分に任せなさい、と言わんばかりに大きく頷いた。ロドリーはもう一度研究室の様子を窺うと、あたりに誰もいないかよく確かめた。
正直なところ、執政府に連絡が入った今、もうこそこそする必要もないのだが、ロドリーはその警戒を解くことはしなかった。モモも、ロドリーの真似をしてあたりをきょろきょろと見ている。
「誰もいません!」
「ええ。皆、本当に閉じこもっているのね」
ゾマーの母親は、ロドリーより前を歩いた。そしてそのまま扉の鍵に腕輪を近づけて解錠すると、そっと扉を開けた。モモが、その隙間から中を覗いた。
研究室の中では、二十人ほどの研究員がそれぞれ意見を交わしながら、実験用の腕輪を片手に右往左往している様が見える。
しんと静まり返っている殺風景な廊下からは想像できないほど、部屋の中は活気に溢れていた。これまで途中にガラス窓から窺えた他の研究室よりも、圧倒的に熱気を感じる。
「……今よ」
ゾマーの母親が、こそっとロドリーに向かって呟いた。ロドリーがニックの背中を撫でると、ニックは扉の隙間に顔を挟んだ。そして目を閉じ、何かを祈るようにすぅっと息を吸い込むと、ニックの丸いツノが仄かに青みを帯びたパステルグリーンに輝いていく。
そのツノからは、目には見えないが、空気が振動していることから波が発生しているのが分かった。微かに、ラベンダーのアロマの香りが漂ってくる。ロドリーは、思わず目がとろんとした。しかし、すぐに気を引き締め、自分の頬を叩いた。
研究員たちは、騒がしく話していたその声が次第に小さくなっていった。会話がペースダウンし、力が抜けてきたのか、手に持っていたものを落とす音があちこちからする。
立っていた研究員は、その足元が崩れ、幸福そうな顔をして緩やかに倒れていった。座っていた研究員も、大きなあくびをして、そのまま机に突っ伏した。
「…皆さん、とても疲れていたんですね」
ロドリーは、予想以上の効果に目を丸くした。
「そうね。ここ最近は、よく休めていなかったのでしょう」
ゾマーの母親は、研究員たちを同情するような目で見た。そして、ほっとしたように口元を緩める。
「たまにはゆっくり、眠ることも大事でしょう」
研究員たちが眠りに落ちていく姿に、そう声をかけた。
ロドリーは、ニックのツノが正常に戻ると、その頭を愛おしそうに撫でる。
「本当に、よくやった!偉いよ!ニック!」
ロドリーの抑えきれない感謝の気持ちを、ニックは全身で受けた。そして研究室の中に入ると、ロドリーは実験のあらましをまとめているレポートを手に取った。一番前に、堂々と掲示されていたのだ。
「君はさよならだ」
レポートの回収も終わった。あとは、忘却術を使い、研究員たちの実験に関する記憶を改竄し、警備隊の到着を待つだけだ。そうすれば、ミッションは終わりだ。ロドリーが後ろを振り返ると、ゾマーの母親が研究室の中をまじまじと見回している。
「ロドリー」
「はい…?」
「仲間たちがこんなことをしておいて図々しいのだけど、私のお願いを、聞いてくれるかしら?」
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