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公爵邸
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王太子シオンの婚約者である、エヴァンス公爵令嬢リディアが、姿を消した次の日。
エヴァンス公爵邸には、王家の紋章が描かれた二頭立ての豪奢な馬車が停まっている。
シオンは早朝すぐに、エヴァンス邸を訪れていた。
当然まだ事を大きくする訳にもいかず、現在リディアの失踪を知るのはシオンとフェリア。そして、リディアとフェリアの父であり、現エヴァンス家当主のルドルフのみである。
流石に父公爵に伝えない訳にもいかず、フェリアは帰宅後直ぐに、姉の失踪を告げたのだった。
エヴァンス邸のサロンへと案内されたシオンが、長椅子に腰掛けて公爵を待つ。
しばらくして現れた公爵は、次女のフェリアを伴っていた。
ルドルフの後ろから顔を出したフェリアは、一枚の手紙をシオンへと差し出した。
「実はこれがお姉様のお部屋から……」
フェリアから手紙を受け取り、内容を確認したシオンは、ルドルフにもそれを見せた。
手紙を見たルドルフは、嘆息すると口を開いて静かに言う。
「これは……確かに、リディアの筆跡です……」
ルドルフの瞳には、隠しきれない動揺の色が浮かんでいる。状況を鑑みれば当然だろう。
それでも公爵として、努めて平静な態度を保とうとしていた。
「これは僕が預かっても?」
「殿下……あの子は確かに自由奔放な部分はありますが、自分の責務を無責任に放棄するような子ではないのです。事件に巻き込まれている可能性や、もしかしたら……何か余程の事情が……」
重い口ぶりで言葉を紡ぐルドルフを前に、シオンは頷いて見せた。
「分かっている、何か新たに分かった事があれば、すぐに知らせて欲しい」
「承知致しました。ありがとうございます、殿下」
エヴァンス公爵邸には、王家の紋章が描かれた二頭立ての豪奢な馬車が停まっている。
シオンは早朝すぐに、エヴァンス邸を訪れていた。
当然まだ事を大きくする訳にもいかず、現在リディアの失踪を知るのはシオンとフェリア。そして、リディアとフェリアの父であり、現エヴァンス家当主のルドルフのみである。
流石に父公爵に伝えない訳にもいかず、フェリアは帰宅後直ぐに、姉の失踪を告げたのだった。
エヴァンス邸のサロンへと案内されたシオンが、長椅子に腰掛けて公爵を待つ。
しばらくして現れた公爵は、次女のフェリアを伴っていた。
ルドルフの後ろから顔を出したフェリアは、一枚の手紙をシオンへと差し出した。
「実はこれがお姉様のお部屋から……」
フェリアから手紙を受け取り、内容を確認したシオンは、ルドルフにもそれを見せた。
手紙を見たルドルフは、嘆息すると口を開いて静かに言う。
「これは……確かに、リディアの筆跡です……」
ルドルフの瞳には、隠しきれない動揺の色が浮かんでいる。状況を鑑みれば当然だろう。
それでも公爵として、努めて平静な態度を保とうとしていた。
「これは僕が預かっても?」
「殿下……あの子は確かに自由奔放な部分はありますが、自分の責務を無責任に放棄するような子ではないのです。事件に巻き込まれている可能性や、もしかしたら……何か余程の事情が……」
重い口ぶりで言葉を紡ぐルドルフを前に、シオンは頷いて見せた。
「分かっている、何か新たに分かった事があれば、すぐに知らせて欲しい」
「承知致しました。ありがとうございます、殿下」
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