1 / 24
呪われた
しおりを挟む
夜の帳が降り、闇夜の空には煌々と姿を露わにした、満月の光が辺りを照らしている。
王太子の婚約者である私、リディア・アマーリア・フォン・エヴァンスは、お妃教育のためにこの王宮へと訪れていた。
授業が終わり、つい先程までは次に王宮で開催される、夜会用のドレスの打ち合わせをしていたばかりだ。
随分遅い時間となってしまっていた。王宮に遊びに来ていた妹も、新調するドレスについて助言をくれたりして、この時間まで私に付き合ってくれていた。
そんな妹、フェリアが「夜の薔薇園を見たい」というので、待たせてしまったお詫びも兼ねて、一緒に庭園へと足を運ぶ事にした。
満月に照らされた夜の薔薇園にて、妹のフェリアが私と相対するように向き合う。
空色の髪に琥珀の瞳の、妖精のような可憐な容姿。普段の明るい時間帯では、陽の光の元にいると、姉の私の目から見ても輝いて見える。
そして現在、満月を背景にして佇むフェリアを前にして、どこか神秘的な印象を受けてしまった。
フェリアは、ぼんやりと眺めやる私に向かって、宣言するように語る。
「さようならお姉様、貴女の事が大嫌いでした。先に産まれたというだけで、私を差し置いてお姉様が、シオン様の婚約者に選ばれるだなんて。そんなの不公平だと思いますよね?」
そのような事を、疑問系で話しかけられた所で、どう答えろと?私は未だ、状況が把握できないでいた。
フェリアからの恨みのような言葉を聞かされながら、私の体が眩い光に包まれている事に気付く。
(しまった、フェリアに何かの魔法をかけられているの!?まさか呪いとか……?)
ようやく、嫌な予感に苛まれた時には既に遅かった。
実の妹から、怪しげな魔法をかけられるなどとは思ってもおらず、完全に油断していた。
(シオン殿下……)
フェリアの口から出たシオン殿下の名。
私だって、なりたくて婚約者に選ばれた訳でも、好きで王太子妃になる訳でもない。
ましてや、シオン殿下に好かれているなど、微塵も思ってなどいない。
「いくら嫌いでも、流石に姉を殺すのは躊躇してしまう心優しい私だから……」
(ぬかすな!!)
と、言ってやりたい所だったが、何故か声が出ない。
そんな私に自信満々に、フェリアは発した。
「兎にしておいてあげたわっ」
(うさーーーー!?)
道理で地面との距離が近くて、フェリアが巨大に見えると思ったら、私ウサギにされてるの!?
きっと今の私は、ショックを受けた顔をしているのだろう。表情が分かりづらい、ウサギなりのショック顔を晒して。
「じゃあね、お姉様。せいぜい野良猫や犬に捕まって食べられないように、図太く生き抜いて下さいね」
言いながらドレスの裾を摘んで、小走りで走り去るフェリア。
(あわわわわ……どうしよう……)
私はワナワナとモフモフの手を見つめ、茫然自失となりながら震えていた。
どうやら本当にウサギになってしまっているらしい。
王太子の婚約者である私、リディア・アマーリア・フォン・エヴァンスは、お妃教育のためにこの王宮へと訪れていた。
授業が終わり、つい先程までは次に王宮で開催される、夜会用のドレスの打ち合わせをしていたばかりだ。
随分遅い時間となってしまっていた。王宮に遊びに来ていた妹も、新調するドレスについて助言をくれたりして、この時間まで私に付き合ってくれていた。
そんな妹、フェリアが「夜の薔薇園を見たい」というので、待たせてしまったお詫びも兼ねて、一緒に庭園へと足を運ぶ事にした。
満月に照らされた夜の薔薇園にて、妹のフェリアが私と相対するように向き合う。
空色の髪に琥珀の瞳の、妖精のような可憐な容姿。普段の明るい時間帯では、陽の光の元にいると、姉の私の目から見ても輝いて見える。
そして現在、満月を背景にして佇むフェリアを前にして、どこか神秘的な印象を受けてしまった。
フェリアは、ぼんやりと眺めやる私に向かって、宣言するように語る。
「さようならお姉様、貴女の事が大嫌いでした。先に産まれたというだけで、私を差し置いてお姉様が、シオン様の婚約者に選ばれるだなんて。そんなの不公平だと思いますよね?」
そのような事を、疑問系で話しかけられた所で、どう答えろと?私は未だ、状況が把握できないでいた。
フェリアからの恨みのような言葉を聞かされながら、私の体が眩い光に包まれている事に気付く。
(しまった、フェリアに何かの魔法をかけられているの!?まさか呪いとか……?)
ようやく、嫌な予感に苛まれた時には既に遅かった。
実の妹から、怪しげな魔法をかけられるなどとは思ってもおらず、完全に油断していた。
(シオン殿下……)
フェリアの口から出たシオン殿下の名。
私だって、なりたくて婚約者に選ばれた訳でも、好きで王太子妃になる訳でもない。
ましてや、シオン殿下に好かれているなど、微塵も思ってなどいない。
「いくら嫌いでも、流石に姉を殺すのは躊躇してしまう心優しい私だから……」
(ぬかすな!!)
と、言ってやりたい所だったが、何故か声が出ない。
そんな私に自信満々に、フェリアは発した。
「兎にしておいてあげたわっ」
(うさーーーー!?)
道理で地面との距離が近くて、フェリアが巨大に見えると思ったら、私ウサギにされてるの!?
きっと今の私は、ショックを受けた顔をしているのだろう。表情が分かりづらい、ウサギなりのショック顔を晒して。
「じゃあね、お姉様。せいぜい野良猫や犬に捕まって食べられないように、図太く生き抜いて下さいね」
言いながらドレスの裾を摘んで、小走りで走り去るフェリア。
(あわわわわ……どうしよう……)
私はワナワナとモフモフの手を見つめ、茫然自失となりながら震えていた。
どうやら本当にウサギになってしまっているらしい。
3
お気に入りに追加
1,522
あなたにおすすめの小説
年下の彼氏には同い年の女性の方がお似合いなので、別れ話をしようと思います!
ほったげな
恋愛
私には年下の彼氏がいる。その彼氏が同い年くらいの女性と街を歩いていた。同じくらいの年の女性の方が彼には似合う。だから、私は彼に別れ話をしようと思う。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
私の何がいけないんですか?
鈴宮(すずみや)
恋愛
王太子ヨナスの幼馴染兼女官であるエラは、結婚を焦り、夜会通いに明け暮れる十八歳。けれど、社交界デビューをして二年、ヨナス以外の誰も、エラをダンスへと誘ってくれない。
「私の何がいけないの?」
嘆く彼女に、ヨナスが「好きだ」と想いを告白。密かに彼を想っていたエラは舞い上がり、将来への期待に胸を膨らませる。
けれどその翌日、無情にもヨナスと公爵令嬢クラウディアの婚約が発表されてしまう。
傷心のエラ。そんな時、彼女は美しき青年ハンネスと出会う。ハンネスはエラをダンスへと誘い、優しく励ましてくれる。
(一体彼は何者なんだろう?)
素性も分からない、一度踊っただけの彼を想うエラ。そんなエラに、ヨナスが迫り――――?
※短期集中連載。10話程度、2~3万字で完結予定です。
【完結】ペンギンの着ぐるみ姿で召喚されたら、可愛いもの好きな氷の王子様に溺愛されてます。
櫻野くるみ
恋愛
笠原由美は、総務部で働くごく普通の会社員だった。
ある日、会社のゆるキャラ、ペンギンのペンタンの着ぐるみが納品され、たまたま小柄な由美が試着したタイミングで棚が倒れ、下敷きになってしまう。
気付けば豪華な広間。
着飾る人々の中、ペンタンの着ぐるみ姿の由美。
どうやら、ペンギンの着ぐるみを着たまま、異世界に召喚されてしまったらしい。
え?この状況って、シュール過ぎない?
戸惑う由美だが、更に自分が王子の結婚相手として召喚されたことを知る。
現れた王子はイケメンだったが、冷たい雰囲気で、氷の王子様と呼ばれているらしい。
そんな怖そうな人の相手なんて無理!と思う由美だったが、王子はペンタンを着ている由美を見るなりメロメロになり!?
実は可愛いものに目がない王子様に溺愛されてしまうお話です。
完結しました。
婚約者を妹に奪われた私は、呪われた忌子王子様の元へ
秋月乃衣
恋愛
幼くして母を亡くしたティアリーゼの元に、父公爵が新しい家族を連れて来た。
自分とは二つしか歳の変わらない異母妹、マリータの存在を知り父には別の家庭があったのだと悟る。
忙しい公爵の代わりに屋敷を任された継母ミランダに疎まれ、ティアリーゼは日々疎外感を感じるようになっていった。
ある日ティアリーゼの婚約者である王子と、マリータが思い合っているのではと言った噂が広まってしまう。そして国から王子の婚約者を妹に変更すると告げられ……。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる