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交友会
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か王宮の中庭で開かれたお茶会では、フレデリック殿下と年齢の近い、家柄も申し分のない令嬢達が集められた。
まだあどけなさが前面に出ている令嬢から、頑張って背伸びしようと、緊張の面持ちが逆に初々しく感じさせる令嬢。
中には流石名家の令嬢と、眼を見張るような大人びた子もいる。
年齢の近い令嬢とあって、中にはフレデリック殿下より少し歳上の令嬢も参加している。
──まぁ生前は二十代だったのだから、精神年齢的には、このわたしがこの中では一番の大人な筈。
わたしは子供相手に、大人気ないマウントを心中で取り続けていた。
何も子供を見下したい訳ではないが、これから嘘と欺瞞溢れる貴族社会の中に入っていくのだ。
流石に今の時期から貴族と言えども、子供相手に足を引っ張られる訳にはいかない。大人として……。
王太子妃になるつもりはなくとも、家名を汚したり、ましてや醜聞になるような事態は避けたい。わたしもこの国で生きる以上、恥を晒して生きたくはない。
無難かつ平穏に生きたいのだ。
目の前では幼女達の趣味の話や、自分の得意な事のアピールが繰り広げられていた。
フレデリック殿下は女子の話など微塵も興味がないかもしれないが、ちゃんと話を聞いたり相槌を打っているのは流石だ。
──王子様って大変ね。
一方わたしは脳内で『幼女ペロペロ』などといった、前世で覚えてしまったオタク特有のふざけたワードが木霊し、必死に打ち消そう奮闘としていた。
──本当に華やかで見目麗しい令嬢ばかりね。王子様はこの歳で、見目麗しい幼女達に囲まれてハーレム状態。乙女ゲームに出てくる王子様というより、まるでハーレム系小説の主人公ね。
何とも失礼な感想を脳内で呟く私を、ふいにフレデリックは真っ直ぐに見つめてきた。
思慮深い美しいサファイヤの瞳と目が合う。
不意打ちに面を食らう私に、フレデリック殿下は優しく微笑みかけてくる。
「セレスティア、体調を崩したと聞いたけれど、その後の容態はどう?」
わたしはビクリと身体を跳ねさせる。急に話し掛けられると過剰に驚くのは、前世のオタク気質が染み付いているから仕方がない。
「えっと、見ての通り快調に向かいましたわ。お気遣い痛み入ります」
わたし唯一の自慢だった声を響かせつつ、「えっと……」なんて、たどたどしさの演出も忘れない。決して完璧すぎない平凡な令嬢を演じなければ。
養成所時代、授業の初めに一分間スピーチというのがあった。その際に「えっと」って言ったら減点ねと、有名声優である先生に言われた言葉を思い出す。
声を鍛えていると、普通に話すだけでも良い印象を持たれてしまう事が多い。だが今始まる逆に印象を下げなければならない。
何はともあれ、無難な返答が出来た気がする。満足気なわたしの目の前では、ひそひそと令嬢達の話し始めた。
「とっても可愛い声……」
「でもセレスティア様って、あんなにも可愛い声でしたっけ?もっと大人っぽかったような……」
「声だけではないわ、雰囲気も見た目も大人びた方だった筈よ」
「声変わりかしら?」
前世同様中々の地獄耳らしく、口々に囁かれる言葉が全て耳に入ってくる。お陰で一抹の不安が過ぎる。
『声変わり令嬢』といった妙なあだ名がついたらどうしようと、新たな不安を抱えてしまった。
まだあどけなさが前面に出ている令嬢から、頑張って背伸びしようと、緊張の面持ちが逆に初々しく感じさせる令嬢。
中には流石名家の令嬢と、眼を見張るような大人びた子もいる。
年齢の近い令嬢とあって、中にはフレデリック殿下より少し歳上の令嬢も参加している。
──まぁ生前は二十代だったのだから、精神年齢的には、このわたしがこの中では一番の大人な筈。
わたしは子供相手に、大人気ないマウントを心中で取り続けていた。
何も子供を見下したい訳ではないが、これから嘘と欺瞞溢れる貴族社会の中に入っていくのだ。
流石に今の時期から貴族と言えども、子供相手に足を引っ張られる訳にはいかない。大人として……。
王太子妃になるつもりはなくとも、家名を汚したり、ましてや醜聞になるような事態は避けたい。わたしもこの国で生きる以上、恥を晒して生きたくはない。
無難かつ平穏に生きたいのだ。
目の前では幼女達の趣味の話や、自分の得意な事のアピールが繰り広げられていた。
フレデリック殿下は女子の話など微塵も興味がないかもしれないが、ちゃんと話を聞いたり相槌を打っているのは流石だ。
──王子様って大変ね。
一方わたしは脳内で『幼女ペロペロ』などといった、前世で覚えてしまったオタク特有のふざけたワードが木霊し、必死に打ち消そう奮闘としていた。
──本当に華やかで見目麗しい令嬢ばかりね。王子様はこの歳で、見目麗しい幼女達に囲まれてハーレム状態。乙女ゲームに出てくる王子様というより、まるでハーレム系小説の主人公ね。
何とも失礼な感想を脳内で呟く私を、ふいにフレデリックは真っ直ぐに見つめてきた。
思慮深い美しいサファイヤの瞳と目が合う。
不意打ちに面を食らう私に、フレデリック殿下は優しく微笑みかけてくる。
「セレスティア、体調を崩したと聞いたけれど、その後の容態はどう?」
わたしはビクリと身体を跳ねさせる。急に話し掛けられると過剰に驚くのは、前世のオタク気質が染み付いているから仕方がない。
「えっと、見ての通り快調に向かいましたわ。お気遣い痛み入ります」
わたし唯一の自慢だった声を響かせつつ、「えっと……」なんて、たどたどしさの演出も忘れない。決して完璧すぎない平凡な令嬢を演じなければ。
養成所時代、授業の初めに一分間スピーチというのがあった。その際に「えっと」って言ったら減点ねと、有名声優である先生に言われた言葉を思い出す。
声を鍛えていると、普通に話すだけでも良い印象を持たれてしまう事が多い。だが今始まる逆に印象を下げなければならない。
何はともあれ、無難な返答が出来た気がする。満足気なわたしの目の前では、ひそひそと令嬢達の話し始めた。
「とっても可愛い声……」
「でもセレスティア様って、あんなにも可愛い声でしたっけ?もっと大人っぽかったような……」
「声だけではないわ、雰囲気も見た目も大人びた方だった筈よ」
「声変わりかしら?」
前世同様中々の地獄耳らしく、口々に囁かれる言葉が全て耳に入ってくる。お陰で一抹の不安が過ぎる。
『声変わり令嬢』といった妙なあだ名がついたらどうしようと、新たな不安を抱えてしまった。
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