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オマケ

息子の抗議

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いちゃつきすぎな夫婦が普段どんな感じか書こうとしたのですが……

◇  ◇  ◇

息子が絡んできた。

「父上は母上にベタベタしすぎです!」

うちの息子は可愛い。
愛する妻が産んでくれたのだから当然だ。
今だって、なんか目の前でキャンキャン吠えてるけど、それもまた可愛い。
言ってることは、おかしいけどな。

「妻に触れて何が悪い」

「っ…節度というものがあるでしょうが!」

「節度…」

「そうです!」

胸を張る息子は、やはり可愛い。
割と俺似なのだが、ところどころミシュの面影もあって。

「夫婦といえども男女が、人前で触れ合うのはよくないと?」

「その通りです!」

「ふむ」

しばし考え込む。
なるほどな。息子はそういう考えなのか。

…しかしこの酒旨いな。
この前地方に行った時に特産だと勧められて買ったけど、度数は高いが飲みやすく、スルスルと飲めてしまう。「絶対合うから!」と店の人の勧めで買ったアテと一緒だと、無限にいけそうだ。

…何の話だったか。

「何でおまえここにいるんだ?」

キョトンとすると、息子は肩を怒らせて詰め寄ってきた。

「何ボケてるんですか!耄碌するには早すぎーーうわっ!?」

急にミシュに似た鼻筋が近づいてきたものだから、思わず手首を掴んで抱き寄せてしまった。
あー…この髪質、ミシュそっくりだな…
つい頬ずりする。

「ちょっ…何してるんですかっ…!」

腕の中で暴れているけれど、ミシュはたいてい俺のすることは大人しく受け入れるし、抵抗しても弱々しいから、こういうのはちょっと新鮮だ。
ついつい力を込めて抱きしめる。

「ミシュ……」

ミシュの抵抗が激しくなった。

「ミシュ…暴れるな…」

なんだか酷いことをしたくなるだろう?
俺は君に拒まれるのは我慢ならない。

「君は、俺のものだ」

耳元にそっと囁くと、絶叫が返ってきた。

「正気に戻れ!このクソ親父!!!」

思いがけない乱暴な言葉に驚いて、腕の力が緩む。
その隙に、腕の中からスルリと温もりが逃げ出した。

「あ……」

名残惜しく思いながら目を開けると、肩で息をする息子がいた。

「あれ?なんでおまえがここにいるんだ?ミシュは?」

「最初っから僕しかいませんよ!この酔っ払い!!!」

息子は顔を真っ赤にして部屋を出て行ってしまった。ドアを思いきり音を立てて閉めて。

…やれやれ。後で言って聞かせないといけないな。物は大事に扱わなければ。

まあ、それは後でいいから…
とりあえず、目の前の旨い酒に再び手を伸ばした。



後日、息子が娘に真顔で吠えているのを目にした。

「姉上は、絶対に酔った父上に近づいたらダメですからね!」

何を言ってるんだかな?


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リクエストがいくつか混ざってできた事故物件。

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