【完結】徐々に夫婦になっていく話

本編

14

「可愛げがなくてごめんなさい…」

私の謝罪に、夫がポカンとした。

「何を言ってるんだ？」

「さっきも…でしゃばってごめんなさい…あなただって、もっとおとなしい普通の妻がよかったですよね…」

私がもっと、静かにニコニコ笑っていられるような可愛げのある女だったら。自然に一歩引いて夫を立てられるような女だったら。気をつけたりしなくても、あんなふうに夫に迷惑をかけることはなかったのに…。

「………」

それを聞いた夫は黙った。
嫌な沈黙が落ちる。
逃げ場のない馬車の中で出す話題ではなかったと、今さら後悔した。
そもそもこんなこと言われたって、何と答えればいいか困るだろう…。それに気づいても、どうフォローしたらいいのかわからない。

どうしようもなくて黙って俯いていたら、不意に夫の腕が私の頭を包んだ。
ぎゅっと夫の胸に引き寄せられる。

「正直…」

真面目な声に、ビクリと震えた。

自分から言い出したことなのに、夫の口から「その通りだ」なんて言われたくなくて。正直、夫は私にうんざりしていたのだろうか…。
続きを聞くのが怖い。
聞きたくない…

でも

「君ほど可愛い女はいないと思っている」

続いた言葉に、今度は私がポカンとした。

「え…？」

今すごく変な言葉が聞こえた。
夫の顔を確認したいけれど、強く抱きしめられていて身動きが取れない。

「君はとても可愛い。心配するな」

何を言っているんだろう。
夫の感覚は絶対におかしい

そう言いたいのに、喉が詰まって声が出ない。胸も綿でも詰められたようにいっぱいになって。
言葉の代わりに嗚咽がでしゃばった。

やっぱり私は可愛くなんてない

抱きしめられた腕の中で、涙が止まらなくなってしまった。