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第6章 魔王会議

第44話 吸血の姫

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 様々な魔法が体に命中し爆発音や衝撃波が発生している。
精神に異常をもたらす魔法はすべて抵抗レジストできた。

直接体にダメージを与える魔法はすべて無効化されダメージは愚か体に汚れを作る事さえない。

それなのに俺の心を蝕んでいく。


一際大きい爆発が俺を襲う。

土煙があがり視界が悪くなる。

その最中、俺に襲い掛かる魔法が相殺された。
影しか確認することが出来ないが天使の羽の様なシルエットが浮かぶ。
背丈は低い。


だが、俺の心は温かさに包まれていた。
その背中に安心感を感じていた。


そのシルエットが右手を薙ぎ払うと大気が揺れ土煙は吹き飛ばされていく。


はっきりと見える様になり姿があらわになる。

俺の前に立っていたのは桃色の髪をした羽の生えた天使だった
幼い少女は真剣な表情で敵を見据えている


真っ赤な瞳は輝きを増していく。


「ご主人様をこれ以上傷つけないで!!!!」



ジル....



ジルニルの回りを雷がバチバチと流れ始める。

ジルニルが一歩足を踏み出せば地面にひびが入り大気が振動し辺りを暴風が吹き抜ける。

ジルニルが手をノヴァに向け魔法陣を展開する。


だがその瞬間バランスを崩したかのように倒れる。


俺は瞬時に移動し抱きかかえる。

俺の腕に抱かれるジルニルの瞳は黒と赤の明滅を繰り返している。
そんなジルニルを安心させる為に俺は優しく微笑んだ。


「心配をかけたな....ジル」


「よかった....です」


ジルニルは眠りについた。
恐らくMP切れだろう全く無茶をする...。


「子を守る母の矜持....か...」


眠った少女の顔をみる。


―――かわいい母が居たものだな...。



ありがとう―――ジル。



俺はジルニルを抱えたまま転移魔法を使用しジルニルを俺のベットに寝かせ俺は再び玉座の間に戻った。


吸血鬼の少女は驚愕している。



「っく....無傷だと...」

「ノヴァ様どうか落ち着いてください」


男が止めようとしているが少女は俺の分析と対抗手段の模索でそれどころではない様子。

なので仕方なく【覇王の威光オーバーロード】の効果を発動させる。

少女はぴたりと動きを止める。
精神を操作し無理やり平常心にさせる。


「落ち着いたか?」

「は、はい」


男は安堵に胸を撫で下ろす


「ノヴァ様、このお方は覇王:グレーステ・シュテルケ様です、私の願い通り貴女様を助けて頂いたのです」


「爺...つまり敵ではないのだな...?」


「はい、我々の恩人でございます」


「そうか...そうか...私が早とちりしてしまったわけか...今すぐ謝罪を...」


「お任せください...最後に...貴方様に会えた事、爺は感無量でございます、どうか...」



最後の言葉を告げづに男はこちらに歩み寄り膝を付いた。


「覇王様、私の最愛の主を救ってくださりありがとうございます。
それと我が主の非礼....許されるものではないのかもしれません...ですが...どうかこの命と魂でご容赦いただけないでしょうか」


男のそれは平伏と言うより土下座に近かった、地に頭を付け涙をこらえながら懇願している


「爺...謝罪なら私が...爺は何もしておらん...爺....」


少女の声を聴き男の目から涙が溢れる。


「怖いか?」


俺は男に問うた。


「ノヴァ様の未来と引き換えならば恐怖はありません!!頂に君臨する御方への非礼この老人の命一つでは償えないものかもしれません
ですが...どうかノヴァ様にご慈悲を...」


男が流す涙の誓いそれは安いものではない。だが勘違いをしている。


「男の決意の涙、しかと受け取った、だがその涙は死別の時まで取っておくといい」


男は勢いよく体を起こす。


「それでは....」


俺はかっこよく男の間違いを正す。



「何かを勘違いしているようだな、先の攻撃で俺はダメージを負っていない、何も無礼なことはしていないだろ?頂はお前たちが思うよりも高いのだからな。
無礼と言うならいつまでも泣くんじゃない、俺は悲しみによる涙が嫌いなんだ
俺の配下が倒れたのもただの魔力切れだ、怪我人は誰もいない、ならば謝罪は必要ない
あるとすれば感謝してほしいものだ、仮にも助けた訳だしな....そ....」


『ありがとうございます』


即座に行動に移すのはいいが...せめておれの言葉は遮らないでくれ...泣きたくなる。


2人の感謝の言葉も聞いたことだしもう憂いはない。
むしろ美少女の体を隅々まで見たのだお釣りがくるほどだ。


「さて、お前たちは自分の国に戻ると良い、俺にもやらねばならぬこともある、それに魔王が帰ってきたのだ色々と忙しいことだろうノヴァへの説明は任せるぞ」


「畏まりました。ですが...このお召し物は...」


その言葉をきっかけに一人の少女の顔が真っ赤に染まった。


「爺...これは私が作ったのだ...」


俯いたまま少女は答える。


「ですが....ノヴァ様は創造魔法が苦手のはず...これほどのドレスを作るなど...」

「封印されてた時ずっと作ってたのよ...時間をかけて作ったの...」


「ですが...素材に神獣が含まれいますが...一体どのように...」

「だから作ったのよ...」


あぁ少女の方は気づいたかぁ...自分が全裸だったことに...。
まぁ自分で作ったって言ってるしいいか...それに俺が助けに行っている最中に作ってるとは思えないはず


「さぁそろそろ行くといい、さっきも言ったが俺も用事がある」


男が気付く前に...少女の嘘がばれてしまう前に...。
早く帰ってもらわねば....。


「申し訳ありません覇王様...また何かあれば連絡させていただきます」


2人は転移の魔法を使い国に帰ってしまった。



――――――――――――――――――――――――



少女、スカーレット・ノヴァは転移魔法を使用すると自身の寝室にそのまま転移した。
しばらく使われていなかったとはいえ手入れはされていた。

ベットには皺一つ無く心地良い香りがしている。

ベットに倒れこみ枕を強く抱きしめる。


「お嬢様、覇王様は器の広い御仁でしたなぁ...命があるのが今でも不思議ですじゃ」

ドア越しに爺の声が聞こえる。
あの時の爺の言葉に底知れぬ不安と悲しみがあった。。

「爺...もうあんな事は言うな...」

助けてもらったのに攻撃してお礼もしっかりとは言えていない
後悔の念がこみあげてくる

それと同時に顔が熱くなってしまう
覇王の顔を思い出すと勝手に心臓が動き出してしまう

死んでから2000年の間心臓が鼓動をしたのは初めての事だった
それに....


「全部見られた....」


「なんとおっしゃいました?」


ドア越しのお陰で言葉は伝わらずに済んだ


「うっさい!!」


布団に顔をうずめる

そうでもしないとドア越しに心臓の鼓動が爺に聞こえてしまうこもしれない...なんなのだ...この感情は



それに...肌を見られたからには...




――――伴侶になるしかないではないか....




真っ暗な寝室で少女の瞳はより一層赤く光を放つのだった
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