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第4章

破壊者ハルアン~狂いの前~

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 僕はフェンリル(白い子犬)とベヒモス(黒い子犬)を飼っていいか心配だったけどどうやらそんな心配しなくてよかったみたいだった。
 母さんと父さんは快くフェンリルとベヒモスを受け入れてくれた。母さんは明日、ドッグフードやら首輪やら犬用の雑貨を買いに行ってくれるみたい。父さんは犬小屋を作るって張り切ってた。

「いってきまーす!」

 次の日の朝、フェンリルとベヒモスを父さんに任せて僕は元気よく家を飛び出した。

「はーい、いってらっしゃーい。気をつけてねー」

「おーう、帰ってくるころにはこいつらの立派な犬小屋作っとくぜー」

「「キャンキャン!」」


 そんな新しい学園生活が始まり新しい友達もすぐに出来て、そしてフェンリルとベヒモスという新しい家族が増えてこれから楽しくなろうとしている時、ハルアンの身に不幸が訪れる。







「おはよう」

「おはよう」
「おはよー」
「おう」
「はよー」
「「「おはよう」」」

 入学してから2日目にして学園のみんなが僕を暖かく受け入れてくれる。

「なあ、今日は連れてきてないのか?」

「あはは、昨日は学園に来る途中であの子達を拾っちゃったから仕方なかっただけだよぉ」

「えー、そーだったのー?」
「おまえ、前の学園でも連れてってたんじゃないのか?」
「えー、そんなわけないよー」

「「「アハハハハ」」」

「はーい、みんなー! 席についてー」

 優しそうな女の先生が教室に入ってきて教壇につく。僕達の担任だ。たしか名前は……。

「おはようございます。そして改めましてご入学、おめでとうございます。みなさんの担任のエリスです。担当教科は魔法基礎理論I。魔法にわからないことがあったら先生に聞いて下さいね」

 ああ、そうそう、エリス先生だ。担任の先生が優しそうでよかった。その先生と僕の目が合う。

「あと、ハルアン君、ペットは学園に連れてきちゃダメですよ」

「わかってますよ。せんせー」

「「「「「アハハハハ」」」」」

 僕は苦笑いを浮かべながら頬を掻く。その後はみんなが自己紹介をしてこれから授業が始まるとこだ。

「それではみなさん。授業を始める前にみんなの『夢』教えてくれませんか? せんせーの『夢』はねぇ……『せんせー』になることだったの! せんせーの夢は叶ってるからみんなの夢を教えて欲しいの。せんせーはね、その『夢』を応援するからね!」

 『夢』か。そんなこと考えたこともなかったなぁ。

「ハイハイ! せんせー! 俺はS級冒険者になる!」
「わたしは治療魔法と薬学を学んで医者になりたいわ」
「ぼくは平和にぐーたら毎日を過ごしたいでーす」
「俺は騎士になる!」
「私は花屋になりたいです」
「まだ何も考えてないでーす」
「わたしもー。だってまだ先の話でしょ?」

 うーん。僕もまだ決まってないかなぁ。しいて言うなら……。

「僕は父さんの仕事を継ぎたいかなぁ」



「はーい。みんなの『夢』教えてくれてありがとーねー。それじゃあ、その『夢』を叶えるために……はい、教科書の5ページを開いてねー」

 みんなが教科書を開く。僕もみんなに合わせて教科書を開き、ノートを取り出す。しれっと授業が始まった。

 誘導!? 優しそうな雰囲気と声、そして小等部の学生に対するような言葉遣いで『甘い先生』と錯覚していたけど、『厳しい先生』だった?

 














 いや、違う。そうじゃない、そこじゃない。
















 今、僕達は下位の洗脳魔法が掛けられている。僕達はあの人が『先生』だと錯覚していた?








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