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アイテムボックスでダンジョン蹂躙

アイテムボックスはこう使う~冒険者ギルド偏~

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 俺達はお笑いギルド近くの裏路地から冒険者ギルドへ向かう。徒歩数十分程掛かり冒険者ギルドへ着いた。



ギィ-…、コツコツコツッ。


 俺は西部劇の酒場の入り口のような木製の扉を開け、冒険者ギルドへ入る。レヴは入るや否や顔をしかめる。
 ギルド内は先程来た時より人はだいぶ少ない。あの説明キャラのおっさんもクエストに行ったのか姿が見えない。

 受付に向かう途中に絡まれる。まぁ、分かってたことだが。

「おい、にぃちゃん。」

 声をかけてきた男とその仲間と思われる男達が下卑《げび》た笑いと顔して近寄ってくる。

「なぁ、にぃちゃん。そのど---。」

 汚い顔した男は俺とレヴの間に割って入り、なんか喋りながら俺の肩に腕を回してきたため、俺は肩にアイテムボックスを出した。




















 男の腕が勢い良くネジ切れた。いや、正確には腕はまだひじの皮で繋がっている。繋がってはいるが、肘の関節の骨はネジ折れ、筋肉や肉繊維はもうネジ切れ繋がっていない。

 そう、は体にくっついる。くっついているということはため、はアイテムボックスに収納できない。よって、弾かれた。ただそれだけのこと。
 
 ただそれだけのことなんだが…弾かれた先が悪かった。








べチーーーん!!!




 レヴの顔面に直撃した。

 静寂に包まれる。

 意味のわからなさ、状況のわからなさ、痛みのわからなさ。わからないからこそどうすればいいかわからない。何を言えばいいかわからない。その静寂。だが、先に動くのはこの女。

「いっっ、った!い!じゃないのよ!」

 レヴは腕のひん曲がった男に容赦なくツッコミを入れた。平手で裏拳をかまされた男はギルド内のテーブルやイス・備品を壊しながら壁まで吹っ飛ぶ。
 レヴは軽く鼻血を垂らすが、種族特性の血液操作ですぐ鼻血を止める。

 レヴにツッコミを入れられた時点でもう男に意識は無かった。壁にめり込みギルドのオブジェと化す。あまりの出来事に反応が遅れる他の男達。
 レヴは俺への鬱憤もついでに晴らしたかのように気持ち良さそうなうっとり顔でニヤけている。

「ツッコミが決まるとアへ顔になる程気持ちいいのか?」

「んっな訳ないでしょ!あと、アへってないわよ!」

 レヴは『奴隷の首輪』のせいで物理的にツッコミを入れられず、子犬の威嚇のようにぐるるるぅっと唸っていることしかできない。

 俺は吠える子犬を無視して受付へ歩みを進める。男達はここでようやく状況を理解し、動き出す。

「な!?お、おい!お前ら、なにしやが…-。」

 俺達に向かってきた男Bが急に胸辺りを押さえつけ、前屈まえかがみになり、吐き出す。

「ッゴバア…ッア-。」
 
 男Bの頭が跳ね上がる。それも不自然な挙動で。まるで動きだった。
 男Bの目はうつろ、口から吐瀉物としゃぶつを垂らし、全身の筋肉がゆるむ。
 男Bが吐瀉物を撒き、痙攣けいれんしながら後ろに跳ぶように倒れこんだ。



 男Bは身長190cmの筋骨隆々きんこつりゅうりゅうの大男だった。そして、日々の素行が非常に悪いため、B級の実力のあるC級冒険者でもある。
 それがどうして何があって、その男を指一本も触れずに倒せたのか…。











それはもちろん---。




















アイテムボックスを使ったからである。












-アイテムボックス-
 アイテムボックスに入らないものは弾かれる。
 それはもう知っていると思う。では、今回何を弾き飛ばしたかというと…、それは。






『空気』







 『空気』は生物ではないが不定形で気体のため、入らない。ゆえに弾き飛ばせる。ゆえにこう使えばいい。
 アイテムボックスを筒状つつじょうに、円柱型に、そう、のような形状で出す。その中の空気を無理矢理入れよとして、弾かせる。これの弾く出力を上げると、超高速の空気の弾丸が射出される。
 この世界では『速さ』が『重さ』になる。その比例された『重さ』がこの空気の弾丸の正体である。この『重さ』というのは『重さ』のこと。
-------------------


 認識していないタイミングで重い衝撃が鳩尾みぞおちに入る。先程まで飲食をしていた者なら当然吐く。
 
 

 人は歩く時、手の形はどうしてる?特に落ち着いている時なんかは指の関節を軽く内側に曲げ、手を楽にしていると思う。
 その手の平の中でアイテムボックスを出して、『空気』を射ち出しているとは誰も思わないし、誰も思えない。

 そうして俺は邪魔な男Bを排除した。

「ん?レヴどうした?」
 
 レヴは俺のことを後ろから見ていたはずなんだが俺が何をやったのか理解できていないらしい。まぁ、どうでもいい。レヴが周囲のやつらと同じくポカンとした顔でただつっ立って俺を見ていた。

「いや、どうした?じゃないでしょ!」

 俺は威勢の良いツッコミに思わず笑ってしまう。っていうか、嘲笑。

「ハハッ。ほら、さっさと登録しに行くぞ。」

「…。うぅ。はいはい、わかったわよー。どうせ聞いても何やったか教えてくれないだろうし。」

 レヴはツッコミ疲れか急に頭を垂れ、素直になった。最後の方の言葉は小声だったため良く聞こえなかった。まぁ、その内教えてやるさ。


 忘れていただろうけど男Cと男Dがまだ残っている。酷く狼狽うろたえている様子だ。それも仕方がない。彼らは先の2人よりも弱いからだ。だが、男Cが動く。

「お、お前!何しやがった!」

 激情に駆られる。仲間2人がやられたことによる逆恨み。いや、この場合は逆ギレというやつか。強く当たる。ただし、言葉で。足がすくんで動けない。いや、動かない。だが、そんなのは虚勢を張って自分を騙《だま》す。震えで声がうわずった。

「このやろ…っ。ガッ!…ぐフッ!…おえっ。」

 俺は口をけた男Cに空気の弾丸をぶち込んだ。なんかうるさくなりそうだったから早めに黙らせた。
 男Cは膝をつき、苦しそうにえずく。男Dはそれを見て腰を抜かして地べたにへたりこむ。

 俺とレヴはようやく受付にたどり着いた。入り口から受付までの距離はそうないのだが、ちょっとしたアクシデントのせいで時間が掛かってしまった。
 俺は登録用紙を受付に出し、受付のお姉さんに登録をお願いした。


「これで冒険者登録を頼む。」
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