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最終章 魔王編

初戦闘?

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 魔大陸、それは出現する魔王によって様変わりする不思議な所だった。前回は平和そうな平原だった。進むにつれて土地が荒れ地になっていき、魔王城はまるで廃墟のようだった。
 
 しかし今回の魔大陸は・・・。

「すごい。魔素が充満してる・・・」
「ですね。魔術師にとっては最高の環境でしょう」

 魔法を基本使わないメリーでさえ感じる魔素の濃さ。魔法の素と書いて魔素。その名の通りだ。

「不気味」
「だねー。それにこの風景・・・」

 森のような場所だった。しかし、木々は枯れて、草は紫色に変色している。地面はごつごつしていて石の上を歩いてるようだ。

「魔素が浸透して、生態系が変わってんのかもな。あそこの泉見てみろよ。毒々しい色してるな」

 紫色の泉がポコポコと音を立てて空気を排出している。まさに異界という感じだった。

「うへぇ・・・気持ち悪い」
「それよりエル」
「分かってますよレイ」

 そういうとエルは地面に魔法陣を描き始める。転移魔法が使えるかの確認だ。これが使えるか使えないかで討伐作戦の難易度が変わってくる。
 書き終えるとそこに乗り、エルの姿が消える。そしてすぐに現れる。

「どうだったー?」
「ええ問題なく使えます。これなら補給に帰るのも簡単です」
「荷物をもっていかなくていいのはありがたいな・・・ん?」
「どうかしましたカイ様?」

 じっと後方右側に視線をやる。しかしそこには何もない。

「んー視線を感じた気がするんだが・・・気のせいか」

 別に敵意を感じたわけではないからいっか。

「行きましょうカイ様」

 エルに手を引かれて歩きはじめる。

「む。エルはあざとい」
「ねー。まあ私はそんなに焦らないからいいけど」
「いいなぁ長命の種族は。ねねここは私に先を譲るという話はない?」
「「ない」」
「むぅー!」

 まるで緊張感のないパーティー一同。さながらピクニックに来ているようだった。
 まあロケーションは最悪、右を見ても左を見ても気味が悪いが・・・。

 まあどうせ当分ただただ探索しつつ魔王城を探す旅だ。前回は探し出すのに一年も要したし、気長に行こう。
 
 そうしてしばらく枯れ木に印をつけながらまずは周辺の探索から始めた。







「しかし・・・何もないですね」
「うーん。確かに前回は魔王以外の生物はいなかった」
「そうなの?」
「つまんない」
「楽に進めるのは歓迎だけどねー」

 前回は魔王城に到達するまで戦闘はなく、まさに万全の状態で魔王と対峙することができた。しかし・・・。

「俺なりに色々調べたんだが、歴史を振り返ると、魔物が跋扈していたり、魔王四天王とかいたり、まさに軍と言えるほどの規模の魔王軍がいたりしたそうだ。だから油断はできないな」
「何が来ようと、カイ様に傷一つつけさせませんけどね」
「お?森を抜けるみたい」

 枯れた木々が生える森を抜けると、真っ黒い草が生い茂る平原に出た。この魔大陸は常時夜のようで、真っ暗な世界が目の前に広がる。

「!?避け――」

 と俺が声を出す前に、飛んできた何かをメリーがカカカァン弾く。

「敵かな?」

 いつの間にか二刀の刀を抜き臨戦態勢に入っているメリー。
 しかし敵は姿を現さず、ひたすら何か棘のようなものが飛んでくる。

「ストーンウォール」

 俺たちの四方に分厚い石の壁が現れる。エルの魔法だ。
 石壁に音を立てて弾かれていく棘。前方だけでなく、四方八方から飛んできている。

「どうします?一体を更地にもできますが・・・」
「んー・・・塵も残さないのはまずいな、出来れば姿を確認したいし」
「じゃあ私が」

 スゥゥゥゥっと息を吸い込み続けるレイちゃん。吸い込み終わるとバンッと音を立てて飛びあがる。
 囲まれた壁を上から飛び出たレイちゃんに無数の棘が飛んでくるが・・・。
 吐き出される冷気のブレスに、棘は凍り、途中で落下する。

「エル」
「はい」

 エルが魔法を解除し、石の壁が消える。すると・・・周りの全てが凍っていた。まるで時が止まっているかのように・・・。

「カイ。これが正体」

 ポイッとレイはこちらに氷を投げてよこす。氷の中には黒いハリネズミの様な動物がいた。

「魔物・・・だよな?」

 まじまじと見る。大きさは尻尾も合わせた全長60㎝ほどだろうか。黒い禍々しい棘が印象的だ。

「なんか・・・可愛い顔してる」
「棘がなかったらペットにしたいなーコレ」

 うん。確かに少し愛くるしい感じがあるな。目とかめっちゃつぶらで可愛い。

「でも所詮魔物です。倒しておきましょう」

 スッと氷漬けになったハリネズミに手を翳すエル。

「まぁまぁ!ちょっと待とうよエル」
「そうだねーこんな可愛いんだし・・・」

 スッとエルを遮るように前に出るシノとメリー。

「エルが手を出さなくても、もう死んでる」
 
 レイが指をパチンっと・・・鳴らしたかったのだろうが、カスッという音がすると共に、氷と共に魔物が粉々になる。

「「「ああ~~~!!!」」」

 と悲鳴が三つ聞こえる。みっつ?

「貴様ら・・・!よくも我配下を!!」

 スッと俺たち五人は即座に臨戦体勢に入る。
 目の前には黒肌の筋骨隆々な男がいた。額には二つの小さなこぶ。目の色は赤く、怒り心頭でこちらを睨んでいた。

「誰だお前は・・・」
「我か?我こそはかの至高の魔王様に仕える親衛隊!百八天王が一人!飛針の―――ぎゃあああ!!」
「あれ?斬っちゃまずかった?」

 名乗りを上げている途中でメリーが斬りこみ、下半身と上半身がお別れした。

「いや・・・まあ隙がある方が悪い。でも今度からはちゃんと名乗りを終えてから突っ込もうな?」

 なんか俺たちが悪いことをしてるみたいで後味が悪いし・・・。

「お・・おのれ・・・勇者め・・・だが我は・・・百八天王でも最弱・・・・第二第三の刺客が・・・お前たちを・・・」

 と言ったところで飛針さんは黒い煙となって消えた。

「あんなのが108人もいるのか・・・」
「そうですね。あんなのが108人程度しかいないなら、安全に魔王城まで行けそうですね」

 エルさんが辛辣である。つーか普通四天王とかじゃないの?多すぎても天王の意味が消えている気がする。

「油断はだめ」
「そうだよエル。いくらあれがスライム並みに弱かったとしても、次がそうとは限らないんだから」
「私出番あるのかなー?」

 まあお世辞にも強かったとは言えないが・・・。喋ってる間もなんかポージング決めてたし・・・。
 なんやかんや魔大陸での初戦闘は大勝利を収めたのだった。

  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「なに!?飛針のハイリがやられた?」
「はい。通信が途絶えたので間違いないかと」
「ふむ・・・まあ奴は所詮我ら百八天王の中でも最弱。やられたところで痛くも痒くもない」
「私共がやられたとしても、魔王様さえ無事でいれば・・・」
「ああ。まさしくその為だけに我らがいるのだ。ぬかるなよ?最善を尽くし、勇者を亡き者にせよ」
「はい。他の百八天王にも伝達しておきます」

「我らが魔王様に、願わくば多くの幸あらんことを」

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