転生勇者の異世界見聞録

第76話 アリシア3

あのポンコツの鑑定の魔道具でもわかる範疇だしなー。

いっそ鑑定出来ないぐらいレベルアップしちゃうかな。

まあ、いいか。

来た時と同じにムートに乗ってロイス邸に帰るのだがその時もアリシアはわーっとかきゃーっとか言って楽しんでいた。


ロイス邸の中庭でお茶を飲みながらアリシア大丈夫かなと考えていた。

アリシアはテスト前の休みが終わったので学校に帰って行った。

その頃魔法学校では。

「アリシア戻ってきたのか。試験なんか受けてもどうせ落第だぜ。」

学年の成績トップを鼻にかけて事あるごとにアリシアに突っかかってくるジュナス侯爵家のヘンリックだ。

ヘンリックは学年で同じ爵位の者がいる事が気に入らない。

学校内で爵位は関係ないとはいえ気にしない者はいない。

しかも同じ爵位でもロイス家は王家に近しい、ヘンリックには我慢がならない。

なんとかアリシアが自分で学校をやめて行くように仕向けたいのだ。

だがアリシアは一向に彼に取り合わない。

ある意味アリシアは心が強い。

成績の優劣や他人の悪意などには関心がなかった。

アリシアが入学して王都の学生寮に入るのと入れ替わりの様にロイス家に勇者が来たと言う知らせを聞いた。

それから勇者のことだけがアリシアの関心事だった。

なのでヘンリックの嫌がらせなんて気付きもしなかった位だったのだ。

ヘンリックにとってはそれが余計に癪にさわった。

「アリシア、アリシアのクセに俺を無視すんな。」

ヘンリックはアリシアを突き飛ばしたはずだったが気がつくと飛んだのは自分で上着の襟が木の枝に引っかかってぶら下がっていた。

取り巻きの子供達になんとか木から降ろされても自分に何が起こったのかさっぱりわからなかった。

アリシアが魔道具か何かを使って自分を木に引っかけたに違いないと思い込む事で自分を納得させた。

実技の時間になり魔法障壁で保護された体育館のような建物に生徒たちが集まる。

10m程離れた所に的が並べられている。的には受けた力を表示する魔道具が取り付けられている。

ヘンリックがファイアーボールを的にぶつけると300と表示される。

他の生徒が50から100位なのでダントツで強い。

アリシアは休暇で家に帰る前は的に当たりさえしなかったのだ。

「的にぐらい当てろよな。」とヘンリックが言うと取り巻きの子供達が笑う。

アリシアはその事は全く意に介せず魔力を練り小さく圧縮したファイアーボールを的に向けて放つ。

的はチュッといって一瞬の内に溶けた。

その背後の障壁に丸い穴を開けてその後ろにあった建物にも穴を開けまたその後の壁に穴を開け､､､。

まあ後ろにあったもの全てを突き抜けた。

ヘンリックは真っ青な顔をして立ち尽くしていた。