転生勇者の異世界見聞録

第54話 エルフの里と世界樹5

それにしてもこれはわしのせいか。

あの時砕けた月の破片が落ちて来て世界樹に穴を開けたのか。

いずれにしろわしがなんとかしなくてはならんのう。

とりあえずフタをして置こうか、樹液や魔力が溢れなくなればそのうち治るじゃろう。

ヒールが効くのか錬金で作るか併用するかと考える。

ふと思いついてインベントリからエリミリア金貨をザラザラと出す。

金で解決とか考えているわけじゃないぞ。

エリミリア金貨はオリハルコンとアダマンタイト、ミスリルに賢者の石の粉末を加えた合金に金メッキして作られている。

それでバカみたいに高い価値がある。

これを錬金術の材料にして錬成して世界樹の穴の空いたところに貼り付けてっと。

絆創膏を貼ったみたいになってしまったな、まあいいか。

裏っ側も同じ様にして出来上がりじゃ。

「ちょっと不細工じゃないの。」

ティルーンが言うが問題は解決じゃ。

ちょっと失った魔力を足してやろうと世界樹の幹に手を当てて魔力を流し込む。

とたんに世界樹全体が光り始める。

木の葉がざわめいたかと思うと一斉に花が咲いた。

真っ白の雪の様な花。

そして花吹雪が里を覆うように舞う。

「美しいのう。」

「バカー。やりすぎよー。世界樹の花は500年に一度しか咲かないのよ。前に咲いてから300年しか経っていないんだから。」

世界樹が花をつけたのを聞きつけて里のエルフ達が重箱に料理を詰めて敷物を持って花見に集まってきた。

その内露店なども出てお祭りの様になった。

「平和で良いのう。一件落着じゃ。」

どこかのご隠居様みたいじゃ。

だいぶエリミリア金貨を使ったじゃろうとメニュー画面を見ると相変わらず表示可能な金額のアッパーから変わっていない。

神様はどんだけインベントリに金貨を詰め込んだんじゃ。

こんなの使いまくったらインフレになってしまうじゃろうが。

露天でエルフの里名物世界樹饅頭を買って帰ることにした。

「また来てねパパ。」

「おじいちゃんまたねー。」

と見送ってくれるが微妙な気分じゃ。