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第53話 エルフの里と世界樹4
しおりを挟む侍女らしい人が木の器を運んでくる。
ざるそばじゃないか?
「この里の名産よ。勇者が蕎麦打ちに最適な水が湧く泉を掘ったのよ。」
「うん、うまい。」
「麺も美味しいし、このつけ汁もいいわ。」
「レティシアは今までに蕎麦を食べたことあるのか。」
「初めて食べたわ。フエツの街や王都では見た事ないわ。」
リルとムートは既に食べ終わって少し物足りないと言う顔をしている。
「なんだか里が落ち着かない様子じゃが?」
さっきからティルーンが何か言いたそうなので話しを振る。
「私達の問題だからあなたに言ってもどうかと思って。」
とティルーンは言いにくい様子。
「わしは家族だったんじゃないのか。」
苦笑いをしながら話し始める。
「3日前に星が落ちて来て世界樹の幹に穴が空いたの、今はそこから魔力や樹液が流れ出しているのよ。」
「それで何か問題でもあるのか?」
「世界樹が弱くなると、守られて来た木々も弱ってしまうわ。それは里が失われてしまう事につながるの木々や森と共に生きてきたエルフにとっては死活問題なの。」
「エリクサーなら里にいくらでもあるじゃろう。それで治せばいいんじゃないか。」
「それが治らないのよ。今までどんな怪我や病気でもエリクサーで治して来たからエルフには他の手立てがないわ。でも世界樹はエリクサーでは治せないの。」
「うーむ、困ったのう何でエリクサーが効かんのじゃ。」
「世界樹に空いた穴から溢れている樹液あれがエリクサーよ。」
「あれっ?エリクサーって世界樹の葉と賢者の石と月の雫で錬成するんじゃなかったっけ。」
「それで出来ない事はないけど、そんなややこしいことしなくても幹に傷をつければ出て来るのよ。」
「むやみに世界樹に傷をつけたくないから里の一部の者しか知らないけれど。」
「お土産物屋で売ってたもんな。」
「なんでそんなことは覚えているのよ。私のことは分からなかったのに。」
「あのお土産物屋は勇者専用よ。エリクサーなんてアイテムと見たらなんでもかんでも目いっぱい買おうとするあのバカしか買わないし買えないわ。」
うう、バカって言われた。
ゲームじゃドット絵だったからリアルで見ても一致しないんじゃ。
勇者はこの里のいいカモだったのか。
とりあえず現場に来てみた。
とてつもなく世界樹はでかい。
幹だけでも両端が見えない壁のようじゃ見上げるとかろうじて先が細くなって木だということがわかる。
そして空を覆う枝葉。
これが影をつくって周囲では紫外線に弱い草やキノコなどの菌類が育っている。
幹のなんとか見えるくらいのところから樹液が滝のように流れ風で霧のようになって舞っている。
それはそれできれいじゃな。
ユリアが石ころみたいなものを見せる。
「これが空から落ちて来て世界樹を突き抜けたの。」
と言う。
それなら幹の反対側にも穴が空いているのか。
「あれっ、これ月の匂いがするぼくがいたルネリリーの方。」
ムートが話し始めるのを慌てて口をふさいでムートの頭を抱えて耳元で小さな声で
「しーっ、ムート内緒じゃ。」
と言うとムートは何か勘違いして嬉しそうにしっぽをパタパタさせている。
「あんた達何やってんのよ。」
とティルーンとレティシアに呆れられる。
リルはさっきから世界樹の周りを人化を解いて走り回っている。
まあリルの散歩に来たんじゃから丁度良いか。
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