転生勇者の異世界見聞録

第21話 カーラ2

屋敷の裏側は崖が切り立っていて階段で砂浜に降りられるようになっている。

風もなく凪いでいる。

「カーラは何が使えるんじゃ？」

「ファイアーボールとデバフとヒールぐらい。後は生活魔法。」

生活魔法は水を出したり、光りを灯したり汚れを落としたりする便利な魔法。

それだけ使えればこの世界では魔法使いとしてはかなり優秀じゃな。

そして生活魔法と言うのは実はいろんな魔法に発展させる可能性がある。

水が出せるのじゃから後は強さを変えるだけで攻撃や防御魔法になる。

光りや汚れを落とすことも一緒で浄化や強化に転換することができるのじゃ。

ファイアーボールはレベルが上がればその強さも変わるからわかりやすい。

魔法はイメージが大切。

イメージの具体性がないと形にならない。

そこでまずファイアーボールにバリエーションをつけて見せる事にした。

ファイアーボールを細かくたくさんの粒にして飛ばしたり。

板状にして盾にして見せた。

「魔力の制御が難しいわ」

それでもカーラは見よう見まねで魔法を形にしている。

「なかなかすじがいいぞ。」

「ユウト、その魔法の制御はどうやってするの。」

ああ。うう。言葉で表現するのは難しいのじゃ。

「こうやってぎゅーっとしてぐーっとしたのをむわーってさせてバーンじゃ。」

「ぎゅーのぐーのむわーのバーンなのね。できたわー。」

うそー。あれでわかるんかい。

「じゃあ、このキーンときてふやふやをするーっときてぱーっはどう。」

「それはわかりやすいわ。キーンのふやふやするーのぱーね」

「あんた達何を言っているのかさっぱりわからないわよ。」

と見ていたレティシアがあきれている。

「でもそれで通じ合うのってなんだか羨ましいわね。ちょっと悔しいわ。」

そう言いながらわしの両頬をぎゅーっとつかむのはやめてほしいのじゃが。

砂浜のテーブルセットでお茶を飲んでくつろぐ。

メイド達が運んでくれたのだ。

なんだかカーラが来た時より明るくなって見える。

少し自信が持てるようになったのかも。

「よーし。ちょっとすごい魔法を見せてやろう。」

空に向けてなら誰にも迷惑をかけないじゃろ。

海上に水蒸気を集めて凍らせ光りを当ててキラキラと光らせる。

それに龍の形をさせてぐるぐると舞わせる。

光りの粒を炎に切り替えて空高く舞い上がらせたら龍の翼を大きく広げ何度か羽ばたかせる。

龍の形から球体に収束して炎の色が白くなるまで高温にする。

「いけー。」

と白い炎の玉を空の彼方に飛ばす。

レティシアとカーラ、それからお茶を入れてくれたメイド達が目を見開いている。

「どう。かっこいい。」

「あ、あの月のはじっこが欠けたわ。」

少し日の傾いた空の白い2つの月の片方の端っこが欠けて飛び散っていくのが見えてしまった。

ちょっとやり過ぎた。

しばらくの間街では巨大な龍が襲ってくる。

とか月が落ちてくる前兆だとか騒がれていたらしい。