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第71話 エンドロール
しおりを挟む猫形態で散歩しているチャオにちょっかいをかける人間は少ない。
小さな子供が「ねこーっ。」と言って遅い足で追いかけてくるぐらい。
そんな時チャオの機嫌が良ければわざと追いつかせて撫でさせてあげる。
いい天気の日はストレイフ邸に附属する魔導具ショップ猫舌屋の軒の上で日向ぼっこするのも良い。
「チャオー。」
コージが呼んでいる。
コージは自分が仕事をしている時は周囲の事に無関心なのに手が空いてチャオが近くにいないとずっと探し続ける。
見つけたからと言って何か用事があるわけでもないのだけれど。
軒から降りて店のショーケースの上に飛び乗る。
コージと目が合う。
安心したのかコージはカウンターの奥の椅子に座る。
マヨネも作業が終わったのかコージの後を追ってくる。
マリタお嬢様も同じ。
ずっと店頭のテーブルで音楽のなる魔道具に耳を傾けていたヘルミーネお嬢様が顔を上げる。
「ん?こいつ?おーっ。ビヌソンじゃねーか。本当か?ハゲに戻っているじゃん。誰だかわからんかったぞ。」
常連客の一人が言う。
「おう。もうハゲでもいいかと思ってな。やたら毛が生えるってのも鬱陶しいっていうか面倒くせーって。」
「まあ、毛があろうがなかろうがおまえはおまえだしな。」
「うははー。」
とか笑い合っている。
「でよー。八百屋の奥さんおめでただって。もう大喜びでよー。」
ビヌソンが言う。
「そんでおまえも買いに来たの?」
毛のある方の常連客が健康ドリンクを手に取る。
二人とも健康ドリンクを買って店を出て行く。
歩きながら話しをしている。
「んでよー。この間うちの浮動機がいなくなってよー。」
「それ、うちの浮動機となんか話ししてたぞ。」
「それからなんか調子がいい様な気がするんだ。」
「おう、うちのも。」
浮動機が放し飼いになっているようだ。
チャオはまた軒の上で日向ぼっこしている。
通りを行き交う浮動機が挨拶を交わしている。
日々の大半がそのように、なんの変わり映えもなくすぎてゆく。
争いも戦いもずっと前に終わった。
ここはエンドロール後の異世界だから。
またアップデートするその時まで。
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