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第67話 未来を覗き見
しおりを挟む「で、出来た。」
「今度は何を作ったの」
ヘルミーネがワクワクしている。
「未来が見える眼鏡」
コージが言う。
「そんな事出来るの?」
「過去はアカシックレコードに記録されているからアクセスすればすぐに見られるんだ。」
「という事はー。時空を捻じ曲げて未来に記録されている情報にアクセスすれば未来が見えてしまうって訳。すごいだろ。」
ふーん。って聞いているけどヘルミーネお嬢様はなーんにもわかっていない。
だいたいコージの説明も説明になってんのそれって感じだ。
「これ、この眼鏡をかけた人だけしか見られないの?」
マリタお嬢様も興味があるみたいだ。
「このモニターの線を眼鏡につないだら他の人も一緒に見られるよ。」
「コージ、お客さんが呼んでいるよ。」
トラが店頭で叫んでる。
「設定とかあるから戻ってくるまで触っちゃダメだよ。」
コージはそう言ってお店の方に行ってしまった。
ヘルミーネお嬢様が何かつぶやいている。
「触っちゃダメ、触っちゃダメ、触っちゃダメ、触っちゃダメ、触っちゃダメ、触っちゃダメ、触っちゃダメー。ううー。ああー。」
ヘルミーネお嬢様はダメって言われるとよけいに我慢出来ないタイプの子みたいだ。
「えーっ、ダメって言ってたじゃない。」
マリタお嬢様が言うけどヘルミーネお嬢様はもう何かに取り憑かれた様になって魔道具を手にとって眼鏡をかける。
眼鏡に映る映像がモニターにも投影されている。
マリタお嬢様の目もモニターに釘付けになっている。
モニターには少し大人になったコージの顔がアップで映っている。
少しほっぺたが赤いし息も荒い。
なんだかコージの顔が小刻みに上下している。
女の子の声が喘ぐ様に聞こえる。
この声ってヘルミーネお嬢様を少し大人っぽくした感じ。
少し大人のコージの顔が切羽詰まったような表情になってきた。
ヘルミーネお嬢様の声も....。
プチっと映像が消えた。
「触っちゃダメって言ったでしょ。」
コージの顔が真っ赤だ。
「あああ、ううう。ごごごごめんなさい。」
と言いながらもヘルミーネお嬢様は満足そうだ。
マリタお嬢様は顔を真っ赤している。
少し名残り惜しそう。
多分自分の声じゃなかったのが少し気に入らない。
コージが何を考えたのかわからないが二人を一緒にしてキュっと抱きつく。
このくらいの年頃って女の子の方が育ちが早くて大きい。
側から見るとちっちゃな弟がお姉ちゃんに抱きついているみたい。
「ダメって言われたら余計に触ってみたいよね。」
笑いながらまた店頭に行ってしまった。
コージが部屋を出るとマリタお嬢様も眼鏡をかけた。
設定してある時期がそうなのかヘルミーネお嬢様と同じような映像を見る事になる。
マリタお嬢様も赤い顔をして何やら満足気だ。
二人が微妙な表情をしているのを見ながら部屋に戻って来たコージは眼鏡をかけて設定を始める。
この頃になるとエウルチグの街もかなり様変わりしている。
多分100年後ぐらいかな?
既にコージはいないので視点はチャオになっている。
とりあえず誰かが見た記憶って事なんだ。
視点が低いのは猫形態になっているからだろう。
お姉ちゃんモードのマヨネが小さな男の子を抱き抱えている。
多分ダイニングにいるのだろう。
たくさんの人がいる。
子供もたくさんいてマヨネやチャオにじゃれついている。
子供達の親もたくさんいる。
多分コージとマリタお嬢様、ヘルミーネお嬢様の子孫達。
コージは眼鏡を外して満足そうな顔をしている。
「この魔道具は、もういいかな。」
と言ってインベントリにしまい込む。
珍しくハンネス子爵とダクマルガ男爵が夫人を伴って揃ってやってきた。
多分お嬢様方の結婚についてのお話しかな?
お嬢様それぞれの部屋で前打ち合わせしている。
「あら、まだ妊娠もしていないの。
妊娠どころか、まだ全然手付かずなのね。」
ヘルミーネのお母様は言う。
まだ婚約中なのに?
この異世界では婚約中ってお試し期間なの?
「ヘルミーネに興味がないのかしら?大丈夫なの?よそに嫁ぐ?」
貴族にとっては深刻な話しだ。
血と縁を結んで家を強くして守る。
ある意味残酷で重要な貴族の娘としての責務なのだ。
夫人もその様にして男爵に嫁ぎ家を守って来た。
ヘルミーネには兄が3人、妹が2人いる。
お母様からすればコージがヘルミーネを気に入らなければ2人の妹のどちらかでも問題ないのだ。
ヘルミーネお嬢様が珍しく青ざめた顔になった。
「でもでも、私、まだ15歳になった所だし。」
ジロっとお母様に睨まれた。
「もう立派な大人のはずよ。」
そう、この世界の貴族ではそう見なされる。
これって多分マリタお嬢様も同じ?
転生者のコージは前世の常識や概念が強く残っているのでお嬢様方も自分も未だ全然子供になってしまうのだ。
コージは年下でまだ13歳だし。
ヘルミーネお嬢様ピーンチです。
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