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第64話 コウテン山2
しおりを挟む「なんだか金になりそうじゃねえか。大人しくしていれば痛い目に合わないからな。」
そう言ってコージに剣を突きつける。
「脅しのために武器を人に向けるのはやめておいたほうがいい。」
コージは静かに言う。
「なんだ?びびってんのか?」
そう言って剣先でコージを突つく。
コージの腕から血が流れる。
マヨネがコージにつかまれているてを振り解こうとして動き始める。
チャオの雰囲気が険悪になる。
マッテオが通りかかり男達に声をかける。
「やめろ、おまえ達。死にたいのか?」
男達はヘラヘラ笑いながらマッテオ達に剣を向ける。
「何言ってんだ?」
男がそこまで言ったところでコージがインベントリから何か取り出して男達に向ける。
パン パン パンと音がなる、
男達が弾ける様に倒れる。
「武器を向けたら躊躇なく使わないと反撃のチャンスを相手に与えてしまうよ。」
そう言ってコージは後の2人も容赦なく撃つ。
たちまち男達は制圧されてしまう。
コージはグロックのマガジンを抜いて使った分の弾を補充してインベントリにしまう。
コージは剣士のスキルを持っていないので剣を使うためには自分にスキルを付与する必要がある。
とっさの時には役に立たない。
その点では拳銃は簡単だ。
何のスキルもいらない。
狙ってトリガーを引くだけでいい。
この武器は弱い者こそが持つべきものだ。
「俺らの出番はなしか。」
マッテオが言う。
「祭りの警備の依頼を受けてたんだ。あんな奴らがまだいるとはな。」
マッテオやこの世界の人々はまだ銃の存在を知らない。
ストーンビュレットなど類似した魔法があるのでそれに類した魔法か魔道具だと思っている。
コージもこの武器をこの世界に伝えるつもりはない。
だいたいマッテオの様な剣士たちは他の武器に無関心だ。
弾丸など避けたり切ってしまえばいいと思っている。
商人の馬車などを襲う盗賊はセキュリティ付き浮動機の普及でめっきり減ったらしい。
この世界では盗賊や犯罪者はその場で処断される。即死刑だ。
裁判なんかない。
被害者や助太刀、通り掛かった冒険者誰が執行しても問題ない。
盗賊になると言うのは非常にリスクが高いはずなのだ。
それでもなくならないのは何もしなければ飢え死にしてしまう境遇が普通にあるからだ。
この世界は人によっては非常に過酷なのだ。
最近はまた人さらいが増えている。
邪神を召喚して勇者に対抗する事を考えるギェダ・グズムンドソン教団が暗躍しているのだ。
これには権力に執着する貴族が関わっている。
エウルチグでも以前これに関わった者達が根こそぎペトロニウス・グローヴズ公爵に滅ぼされている。
ポンっと音がしてアデッサが現れる。
続けて3匹の白ねずみ。
チェリ、ツッピ、テトが、
そして目の前の空間にひずみができて黒いローブを着た少年が現れる。
暗冥の王 ペトロニウス・グローヴズ公爵だ。
くるりと周囲を見渡す。
「ギェダ・グズムンドソン教団に雇われた人さらいどもか、チェリ片付けて。」
どこからか大量のネズミが現れる。
たちまち倒れた男達を包み込みネズミ達が去った後には何も残らない。
「いい子だったかい。」
そう言ってペトロニウスはマヨネの頭を撫でて手のひらに飴玉をのせる。
コージはペトロニウスに話す。
「マヨネに限らずゴーレム達がなんだか感情を持った人間みたいに感じるんだ。僕の頭がおかしいのかな。」
ペトロニウスは語る。
「この世界には魔法や生霊、魔物に天使に神が普通に存在しているんだ。」
「なんでも科学で証明しようとする前世とは違うんだよ。」
「ホムンクルスは知っているだろう?タンパク質で作り上げた人形だ。」
「ゴーレムは土塊などの無機物で生成する。」
「ホムンクルスに魂が宿るのは普通に受け入れられている。」
「でもゴーレムの生成も素材が違うだけで人の形を作る作業はそんなに変わらないだろう?」
「じゃあ、わかっててマヨネを作ったの?」
「ううん、後付けの理屈さ。実際、僕もユウトも戸惑っているのはコージと同じだよ。」
「魔法と同じ、望めば、認めればなんでもありの異世界なんだよ、ここは。」
チャオがマヨネの口の周りを拭いている。
溶けた砂糖でベトベト。
天灯は舞い上がり続ける。
ひとときの光を灯しながら。
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