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第60話 スタースコーピオン狩り
しおりを挟む畳に布団だし、ちゃんと人数分敷いてあるのにどーいうありさま?
ヘルミーネお嬢様はマリタお嬢様を抱き枕にして部屋のたたきに落ちている。
マヨネはもうおきていてアデッサを抱えている。
チャオは部屋の隅に積み上げてある座布団の上で丸くなって寝ている。
お嬢様方の寝相が凄すぎて普通に寝ていられないようだ。
帰りは大荒野を通ってダリオスに行こうかな。
汎用型の魔導装衣ゴーレムMS -28ファーマーや穴掘りに特化したMS-36ディガーがたくさん働いている。
ここはどちらかというと帝国よりの大荒野の入り口といったところ。
大荒野深部になると開発には過酷すぎるので当分手をつけることはできないだろう。
それでも大荒野のほんの一部にでも手をかけられるのは大進歩だ。
実質帝国は新しい領地と資源を手に入れた。
この新鉱山はダリオスのようなすり鉢型ではなく、ハーフパイプのような形状で段々畑に似ている。
鉱脈の形状によってはまた鉱山の形状も変わっていくのだろう。
掘り始めたばかりなのでまだ底部も浅いし傾斜も緩やかだ。
それでも今まで手付かずだったので鉱物の産出量はそこそこあるようだ。
基本的に作業する人間は搭乗するタイプの魔導装衣型ゴーレムの中だし、移動は浮動機なので歩いているのはゴーレムばかりだ。
そのゴーレム達も大型の掘削機のオペレーションをしていて、少し前のようにツルハシやネコのようなものを持って作業しているゴーレムはいない。
鉱山の底にクレーンで何か釣り下げている。
何をしているんだろうと思って見物していると覚えのある声がした。
「コージ、久しぶりだな。」
マッテオさんとそのパーティだ。
「マッテオさん。お元気でしたか。」
「ふーん。知り合いの男の人とは普通に話せるのね。」
ヘルミーネお嬢様が意地悪を言う。
「あ、あの、あのね、それは...。」
コージがヘルミーネお嬢様に言い訳をしようとするけど言い訳にならない。
「ヘルミーネ、意地悪を言わないの、コージがヘルミーネの事をかわいい女の子って意識しているって事よ。」
マリタお嬢様が言う。
ヘルミーネが顔を真っ赤にして「ふーんだ。」と言ってそっぽを向く。
「おおい、俺が置き去りになってるぞ。」
マッテオが苦笑いしながら説明してくれる。
なんでも、最近鉱山に備えてある魔探(魔獣探知魔導機)でスタースコーピオンが発見されたらしい。
スタースコーピオンにはテリトリーがあって、テリトリーが空くと他のスタースコーピオンがやって来るそうだ。
それで鉱山では定期的にスタースコーピオン狩りをするらしい。
狩りは冒険者ギルドが請け負っている。
ゴーレムは基本的に戦わせることは禁じられているし命令しても拒否される。
危機的状況になると防衛はしてくれるけど。
なので相変わらず狩りは冒険者の仕事だ。
スタースコーピオン狩りは報酬も得られるし素材もいいから冒険者にとってはいい仕事だ。
以前に仕留めたスタースコーピオンの甲殻があるので切れる剣が作られている。
その場で働いていた魔導装衣ゴーレムがデータをとっていたので対応方法もマニュアル化されている。
例えばスタースコーピオンは素早くてハサミが強いのでしっぽの毒針はめったに使わないとか、しっぽの射程も正面の10mまでとか。
今回はマッテオのパーティとエーレーネのパーティが依頼を請け負った。
エーレーネがコージを見つけたようだ。
何かわからない歓声をあげてかけよって来てコージを抱き上げて頬ずりする。
「久しぶりー。伯爵様ー。」
いや、言っていることとやっていることにギャップが...。
猫とかぬいぐるみじゃないんだから。
そこにメンヒルデがやって来てエーレーネからコージを引ったくってやっぱり抱きしめて頬ずりする。
続いてユリアンネも。
「やめなさい。困ってるじゃないの。」
カーラがユリアンネからコージを引ったくって言う。
コージはぐったりして言う。
「カーラもな。」
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