そのAIゴーレムっ娘は猫とプリンの夢をみる

第36話 子供達

「どうしてこんな事が？」

領内の調査を始めてすぐの事。

沢山の孤児が施設にまとめられているとツッピが教えてくれた。

調査の事ならとチェリ、ツッピ、テト、そしてアディッサがペトロニウス・グローヴ卿に許可を得て手伝ってくれたのだ。

ネズミ型の調査用ゴーレムを作ろうかとも考えたんだけれど彼女達が手伝ってくれるのならその量とネットワークは圧倒的だから頼ることにした。

元は孤児院だったらしいんだけれど大量の子供達とその残酷な状態の為に野戦病院の様になっている。

こんな事ペトロニウスが知っていたらあっという間に直してしまうだろうに何故放置されている？

前の領主を滅ぼしたのもこの子達を助けだしたのもペトロニウスのはず？

自分の領地の事なのだから自分でなんとかしろって事？

ユウトがいっぱいのエリクサーをインベントリに入れてくれたし。

魔導治癒機もあるから僕でもなんとか出来るけれど。

ほとんどの子供が体のどこかを欠損していたり、物凄く衰弱している。

前の領主が何かの儀式のための生贄として集めて、手足を刻み、目鼻や耳を刻んだのだ。

コージはその残酷さに眩暈を感じる。
チャオもマヨネも連れて来なくて良かったと思う。

とりあえずは全部治そう。

魔導治癒機にエリクサーを充填して稼働させる。
エリクサーは魔導機によって強化されて部屋中に拡散する。

施設の職員達に子供達の衣服や食事を用意させる。

食事が用意出来た頃には50人程いた子供達は欠損した部位を取り戻し、癒された。

「手が、手が生えて来た。」

「見える、見える様になった。」

と子供達の声がする。

だが、身体が治ればそれでいいというわけではない。

与えられた絶望と痛みは深く心に刻まれる。

それは癒えることはないかもしれない。

コージが考え込んでいると施設の中もそうだが施設を覗き込んでいた人々の歓声がうなりの様にコージの周囲に湧き上がる。

「奇跡だー。」
「神だー。」
「何という慈悲の心。」
「聖者様じゃ。聖者様が私達の領主として降臨なされたのじゃー。」

と勝手に盛り上がっている。

違うし、貰いもんのエリクサーだし。
錬金術師だし。
なに騒いでんの。

他にもいくつか同じ様な施設があると言う事なので次に行く事にする。

そそくさと浮動機に乗るコージの後ろで人々の盛り上がりはおさまらないようだ。

それから5件程の施設を回るがどこも同じ様な感じだった。

猫舌屋に帰りつく。
トラが迎えに出て来てローブを受け取る。

「今日はカレーライスだよ。」

とハチが言う。

「そうだ！学校を作ろう。宿舎付きの学校を。」

コージは今日回って来た施設の子供をどうしたらいいかずっと考えていた。

あの子供達も領民だし、ただ体を治せば終わりと言う訳にはいかない。

ひとり立ち出来る迄は学校で面倒を見ればいい。

でも前世で行く事も出来なかった自分が学校？

自分でもいける様な学校にすればいいんだよ。

自分で作るんだし。

なんだかグッドアイデアの様で自分でも盛り上がって元気になって来た。

急にコージの表情が明るくなったのをみてみんなもほっとする。

チェリやツッピ、テトもなんだかほっとしている。

「ペトロだとへこんだらそのまま引きこもっちゃうからドキドキするのよ。」

アディッサとマヨネって並んだらよく似ている。

大きさも年齢も同じ様に見える。
かわいい。