蒼穹のゼデ

第43話 捕鯨 1

「物見の者がザウリリの群れを見つけたってよ。」

リットがいう。

「いよいよ捕鯨だね。」

「ゼデにとっては初めての捕鯨だね。」

前回から3年、ゼデが成人して初めての捕鯨が始まる。

ザウリリ(空鯨)の群れはなぜか3年に一度の周期でプミタス(空族)達の拠点となっているドルツリア大陸の東方の外れの洋上にある小島群ラウバル諸島の近くまで近づく。

まさに天の恵みだ。

プミタス達はこの時はギルドのあるトリコピ島に集う。

ギルドにはドリアゼラ(捕鯨母船)がありザウリリの捕鯨には欠かせない。

ザウリリの体長はおおよそ20m前後。
プギアゼラで運ぶには無理がある。

ドリアゼラは全長が200mあり捕らえたザウリリを冷凍保存出来る格納庫を備えている。

近いとはいえ捕鯨の現場は空路で3日かかる。

ドリアゼラはプギアゼラを10機搭載できるのでみんなは3機のドリアゼラに分乗して現場に向かう。

「あんた少しは大きくなったの？」
エルテがゼデの脇に手を入れて持ち上げる。

女子の方が先に大きくなると言ってもこのくらいの歳になれば男の子も大きくなるんだが、ゼデは小柄なようだ。

「まあプギデに乗るのに大きさは関係ないだろう。」

ずいぶんと背も伸びてイケメンになったマチスが苦笑する。

「返せ。」

ナイクがゼデをエルテから引き離そうとする。

「何よ少しぐらいいいじゃないの。」

ナイクとエルテがゼデの引っ張り合いを始める。

「やーめてー。」

ゼデが悲鳴をあげる。

「おまえらゼデはぬいぐるみや猫じゃないんだぞ。」

マチスが見かねて2人からゼデを引き離す。

「そんなこと言ってあんたその手はなんなのよ。」

エルテが不満そうに言う。

「あー、いやー、これはー、だってサラサラで気持ちいいぜ。」

無意識だろうか？マチスはいつの間にかゼデの頭を撫で回していた。

「バカ。」

ギルドのドギアゼラの談話室では現場に到着するのを待つ同級生のプミタス達が捕鯨の前の高揚する気持ちを抑えられずにいた。