35 / 49
第35話 大収獲祭ポルヒグ3
しおりを挟む祭りは鯨型の神輿が4つの祠を巡って祠にある妖精の像にお祈りをしてラプトの細かい砂のような粒を奉納して回る事が目的だ。
島の四方にあるこの祠は特別な結界を張って島に災いが入りこむのを防いでいると言われる。
神輿が4つ目の祠を巡って集会所前に戻ってくると祭りは最高調を迎える。
集会所に作られた祭壇兼舞台の上では神輿から降りた子供達が引き続き太鼓や鉦を鳴らし、笛を吹く。
それらを伴奏にして双子が歌う。
「くたびれたー。」
そう言ってナイクがゼデの隣に座る。
太鼓は他の子供と交代して来たみたいだ。
一度神輿に乗ってしまうと祠に着くまで降りる事が出来ないから大変だ。
くるりと丸くなって横になると本当に猫みたいだ。
ついぺたりと倒れた耳に触りたくなってしまう。
そっと触ったつもりなのにナイクのしっぽがぴんってまっすぐになった。
びっくりして手を離す。
「いいよ、さわっていて。落ち着くから。」
ナイクがそう言うとしっぽがふわりとゼデの膝に乗る。
「ちょっと驚いただけ。」
ナイクが目を細めて笑う。
日が暮れて沢山のランタン(天灯)が空にあげられる。
ランタンにはいろいろな願いが書かれていてそれを天の神さまに伝えるために高く上げる。
元はひとつだった月が二つにわかれたときに離れ離れになった月の住人が連絡を取り合う為に行ったものらしい。
それでもランタンはそれぞれの大気圏を出るほどの高さに上がれるわけではない事は知っていただろう。
僅かでもお互いのつながりが欲しくてただ願いを込めて繰り返されて来たのだろう。
この星サイディカに伝わったのは月から移住した人が少なからずいた為だろう。
現在でもサイディカと月の間には転移魔法陣があると伝えられている。
集会所の周りにはたくさんの露店が出ていて美味しそうなにおいがする。
「すごく賑やかなお祭りだね。」
小さな男の子が話しかけてくる。
「この島でも美味しいうどんが食べられるんだね。」
男の子の子はどんぶりと箸を持ったままナイクとは反対側のゼデの隣に座る。
この島でも帝国の転移魔法陣とつながることで物流が劇的に変化した。
帝国にあるもので島にないものは無いぐらいだ。
「おぬしがラプザーラに行った子じゃな。」
ちっちゃいのに長老みたいに年寄りくさい話し方をする。
と言っても長生きしたエルフでもなさそうだ。
「ああ、わしはユートじゃ、おぬしの事はムートから聞いているぞ、シュルツテルツの子よ。」
「えーっと、なんでそんな事知ってんの?」
「クラリスがおぬしを拾った時に島中に自慢して回ってたから誰でも知っとるぞ。」
「でもシュルツテルツって....。」
「そんなのおぬしが入っていたカプセルに書いてあったじゃろう。」
なんだ秘密でもなんでもなかったのか。
「おぬしシュルツテルツの事は知っているのか?」
「ほとんど知らない。まだ、生まれてまもなかったから。」
「じゃがおまえのプミルは何か知っているのじゃないか?」
まるで我慢しきれないといった様子でラプテスがプミルから出て来る。
「勇者はシュルツテルツを知っているの?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる