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第91話●サバト3
しおりを挟む空一面を覆う無数の天灯。
魔国チェルゴスの王都アングリスからさらに西へ50km程離れたところに山頂が平になっている山がある。
このコウテン山がサバトの会場となる。
いつもなら二つの月ルネリリー、カタリリーのいずれかが満月の時に祭られる月祭。
この日は両方の月が新月。
3000年に一度の現象。
暗闇に星々ばかりがさんざめく中に煌々と燃える天灯が舞い上がり星々の光を打ち消してしまう。
いつもは祈りや願いが灯籠に書かれるのだけれど今夜は古代文字と思われる記号が書かれている。
既にたくさんの天灯が空を舞っている。
「おじさーん。これであってる?」
アルバイトの子が手引書と思われる古書を開いて書かれている記号を灯籠に筆で書いている。
「おーう。多分な。」
「次はこの文字を書いてそっちの方から揚げておくれ。」
コウテン神社の神主がアルバイトを指示している。
手引書そのものは古代文字で書かれていて、その翻訳書を引きながら作業をしているようだ。
翻訳には「安息祭の手引き」って書かれている。
古代の儀式なのだけれど儀式の意味については伝わっていないようだ。
儀式には本来は意味があったんだろうけど時間の経過と共に中身が抜け落ちて形骸化してしまったものも少なくない。
それでも手順どおりに式を執り行えば本来の現象を引き起こす可能性があるのが儀式というものなんだ。
手順に従って材料を用意して、手順どおりに組み上げる。
手引書通りに記号を書き込んで順番に決められた場所から点灯して舞い上がらせる。
神主は暦に従って式の準備をして執り行う。
それが仕事なので。
これは魔法と同じ、術式を組んで行使する。
舞い上がった天灯は夜空に魔法陣と同様の回路を組んで空中の魔素に指向性を持たせて力を生む。
光を明滅して信号を発しているようにも見える。
それに何の意味があるのかは神主にもわからない。
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