魔法大全 最強魔法師は無自覚

第38話●メルデギド弟子団1

「ねえ、パーシコ。僕いらない子だから孤児院にいる の？」

ユヴォサは6歳になったところ。
2歳の頃から孤児院にいる。
孤児院の扉の前に置かれていた。

パーシコは9歳。
4歳の頃冒険者だった両親がスタンピード阻止の依頼を受けて帰ってこなくなった。

「ユヴォサ、親にもいろいろ事情があるのさ。それにそんなこと言ったらレンツィやザヴェロやビリダル達だって同じだろ、ユヴォサはあの子達がいらないって思うかい？」

ユヴォサは首を左右にふる。

孤児院にいるぐらいだから言葉に出来ないぐらいの不幸や不運に見舞われてそれでも運良く孤児院に辿り着いたって子供ばかりだ。

この異世界は力を持たないものに対して冷酷で過酷な世界だ。

元々がゲームの設定なんだからそんな配慮なんてされてないのかもしれない。

そして彼らは15歳になると否応なく孤児院から出される。

それまでに生きる力を持つ必要がある。

商会に奉公に行ったり、冒険者になったり、兵士になる者もいる。

いずれにしろなんらかの教育が必要だ。

読み書きや剣術、体術はシスターが教えてくれる。

あと実践的なのは冒険者ギルドや商人ギルドで子供向けの簡単なクエストを受けて経験値を上げる。

この孤児院にいて運が良かった、そう本当にただの運。

ギドがそばにいるって事。

まだ他にもヴェンチェ、ラオコル、スレン、ジュリス、ヴェリー、アーメド、ヴィルック、チアーノ、ウォド、ケポパ、ナタチー、ダヴー、カッサーニ、ケリーサ、ラガトとたくさん孤児がいる。

この子達、それからまだこの孤児院にやって来る子供達はこの後メルデギド弟子団と呼ばれるようになる。

彼らはまだ15歳に満たない。

パーシコとユヴォサはマジックボックスと体力強化、ヒールが使えるので冒険者の臨時ポーターとして働いている。

子供なので2人組にして雇って貰った。

近隣に初心者向けのダンジョンがありそこで魔核を集める仕事だ。
浅い層ならスライムやコボルト、ゴブリンぐらいしか出てこない。

パーシコとユヴォサが雇われたパーティは戦士と剣士と斥候、魔法使いの男女それぞれ2人づつ。Cクラスだからまあまあベテランだ。

既に中階層に至っており魔核もそこそこ集まって帰りどきだ。

「ご苦労様、じゃ預けた魔核を出しな。」

戦士の男が言う。

「えーっと、ギルドに戻るまでが仕事ですよね？」

パーシコが言うとパーティのみんなが笑う。

「あなた達はもうギルドや孤児院に帰らなくていいのよ。もっといい所に行くのよ。」

ダンジョンの中で人が居なくなっても魔物にやられたと思うしかないからだ。

ただこのところ女の子や子供がいなくなることが多すぎた。

パーシコ達はギルドの依頼で囮役になっていたんだ。

パーシコはユヴォサと目を合わせてうなずく。

「当たりだね。このパーティが奴隷商人の手先だったんだ。」

ユヴォサが探索魔法を展開する。
もうじき10人ぐらいの奴隷商人に雇われた人達が来るのがわかる。

「かかったね。」
ユヴォサがにっこり笑う。

パーティと奴隷商人に雇われた人達の周りにメルデギド弟子団の子供達が現れる。

この子達、既に転移魔法が使えるんだよ。

弟子団からの拘束障壁やバインドでたちまち人攫い達を捕らえた。

「今日はボアがお肉をドロップしたから美味しい料理をシェフに頼もうね。」

弟子団の子供達は「きゃあきゃあ。」とはしゃぎながら孤児院に帰った。