魔法大全 最強魔法師は無自覚

第26話●エルフ2

エタリスの使うエルフ特有の魔法すげー。

指先から飛んで行った粒が盗賊の額に当たると、粒は額にすっと吸い込まれる。
すると眼窩や鼻の穴、耳、口から植物の蔓や茎、葉がどっと生えてくる。
こーわっ。

「きゃーははは。」

笑ってるよー。

盗賊がエルフをターゲットにして攫っては奴隷にしては売り飛ばすってよく聞く話しだから怨みは深ーいのかも。

2階建てになっていて2階の屋根と壁が畳めるって魔法師砲台って感じでいけてるでしょー。

「盗賊っていったいどれだけいるのかしら？」

どんな家業でも相続できるのは長子だけ。

二男、三男は街にでて商家に奉公するか兵士になるか冒険者になる。

女子は嫁に行くか、貴族の屋敷に奉公に出される。

しかしそれも限られている。

耕作地が開墾される。
新たな産業が生まれる。
都市が発展する。

何かこの世界に変化があって雇用が拡大しなければこぼれ落ちる人はなくならない。

変化が無く停滞したこの世界では盗賊はなくならない。

冒険者になると言う手もあるが人に殺されるか、魔物に殺されるかの違いしかない。

どんな形であれ強くならなければ簡単に死んでしまう過酷な世界だ。

盗賊を駆逐するとギド達はまったりとお茶にする。

皆それぞれのインベントリやマジックポーチなどからビスケットやケーキなどを出す。

一方で食べて行く事も出来なくて命をかけて盗賊にまでなってそれでも簡単に殺される人間がいて。

その一方で悠々とお茶などを飲んでいる人がいる。

理不尽だが現実だ。

ギドは上機嫌で攻撃に使っていた魔法の制御について語っているレテの横顔を見て相変わらず綺麗だなと思う。

「何よ、ギド。このビスケットが欲しいの？」

「これ綺麗でしょ。王都では今は色をつけた砂糖や乾燥させた果物で飾り付けたものが流行っているのよ。」

「魔送手紙に画像を貼り付けて友達に送るのに『映える』のがいいのよ。」

この世界を理不尽だとか考えるのは転生者ぐらいなのかも知れない。

エタリスが入れたハーブティーが美味しい。

やっぱり植物による癒しと言えばエルフだよね。

ギドはエタリスのとがった耳にとっても興味がある。

レテがギドのほっぺたをぎゅっと掴む。

「何よ。エタリスばっかりジーっと見て。」

なんか怒っている。

「みーみみがーっ。」

ギドは言い訳をしようとする。

「あー。エタリスの耳ね。」

なんか納得したみたいだ。

「エタリス、ギドがあんたの耳触ってみたいって。」

えー、そんなストレートにいう？

「あら、いいわよ。」

そう言ってエタリスがギドを両手で持ち上げて自分の膝の上にのせる。

似たような年齢のはずだけどギドが小さいのかエタリスが大きいのか？

えらく簡単に返事した。

柔らかい。
ちゃんと軟骨の様な物がある。

「きゃーははは。くすぐったい。」

「お、俺も。」

そう言ってヴァシュが手を伸ばすとエタリスとイサンドロに手を叩かれる。

「あんたはダメ。」

声を合わせて言われた。