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第19話●ダンジョン

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「いっぱい魔石が採れるわね。」

レテがドロップしたアイテムを掃除機みたいな魔法で拾い集めてギドに渡す。ギドはそれをインベントリにしまう。

スライムにコボルト、ゴブリンやオークまあ手頃な魔物がゴロゴロいる。

ルトラウデが抱えたピコが「ガーウ。」って威圧をかけただけで魔物がポンポンと光の粒になって魔石や素材等のアイテムをドロップして消えてしまう。

ダンジョンでは魔物を捌いたり死体の処理をしなくていいから楽ちんだね。

ギドが吹き飛ぶ。

レテが少し驚いて飛ばされたギドを目で追っている。

あ、大丈夫って判断したみたいだ。
意識を切り替えてルトラウデを包む障壁を強化している。
判断が素早い。

体の周囲に作った障壁に損傷はないけれどぶつかってきた物との質量差でギドの方が障壁と一緒に跳ね飛ばされたようだ。

ちょっと油断した。

ギドは空中で体をひねってぶつかって来たものに視線を向ける。

ミノタロウスか? 確かにこんな浅い階層に出て来ちゃいけない奴だ。

高圧縮タイプのファイアボールをぶつけてやると結構素早く避けようとする。
追尾式なので避けられてもミノタロウスをつけまわす。

ファイアボールを避けるためにウロウロしている所にアイスビュレットをぶつけてやる。

これは避けられなかったようだ。

ミノタロウスは光の粒になって消えた。

「いい感じの魔石をドロップしたわ。」

レテってあっさりしているんだね。

あのクラスの魔物になるとピコの加減した威圧では効かないようだ。

とはいえブレスを使うと何もかも燃え尽きてダンジョンがなくなってしまうので使い所が難しい。

グリフォン、マンティコアと階層に合わない魔物が続く。

この階層でこんなのが出て来ちゃランクの低い冒険者はたまったもんじゃないよね。

階層が深くなるに連れて出て来る魔物のレベルが極端に上がっていく。
そして出て来る頻度が高くなる。

このレベルの魔物が2体とか3体同時に出て来る設定にはなってないはずなのに。

「困るんだよね。まだ準備中なんだから。」

ギルドであったおっちゃんがいる。

おっちゃんと言っても25歳ぐらいかな?すらりとしたかっこいい青年。

鑑定してみると『ジュ』の使徒 レベルが200 人間にしては異常に高い。

「せっかく用意した魔物を片っ端から魔石にされちゃ計画が台無しだよ。」

おっちゃんそう言いながら剣を抜く。

そこにレテがアイスビュレットを放つ。

おっちゃんは飛んできた氷の粒を剣で弾く。

「詠唱なしかよ。あぶねーな。全く魔法使い相手って面倒くさいな。」

「昔は魔法を発動しなくするアーティファクトがあって仕事しやすかったらしいがな。」

などと独り言を言う。

ギドがポケットから何か玉のようなものを出して話し始めようとする。

おっちゃんとレテがギドを見る。

「ああ。」

「そのアーティファクトなら作ってみた?なんでそんなもの作るのよ。」

「ソッペ・カヤ神教の神官さんが言っていたので面白そうなので作ってみた?」

「お、おい。なんてタイミングでそんなもの出すんだ。」

おっちゃんの背中に白い羽が伸びてきた。

魔法で人間に化けていたみたいだ。

「お前、そんな事したらお前の魔法も使えねだろうが。」

ギドはもう片方の手をポケットから出す。

レテが喋り出す。

「さっきのは魔法の発現を阻害するアーティファクト、こっちは魔術の発現を阻害するアーティファクト」

「どっちも一緒に起動するとお互いに共鳴を起こしてなんの機能もしなくなる」

「かつて魔法しかない頃には使えたかも知れないけれど今は魔術もあるから役に立たないって。」

「いや、今そんな解説いるか?」

「うう。」

「興味があるんじゃないかなって。いや、私もおっちゃんに賛成よ。今はまだ、もう、なんていうか闘いなのよ。」

「すまんなぼうず、オレも興味はあるが今じゃないって思うぞ。」

ギドがつまらなそうにアーティファクトをしまう。

おっちゃんが上段から剣を振り落とす。

ギドの手にパッと剣が現れおっちゃんの剣を弾く。
おっちゃんは弾かれた剣を慣性の法則を無視してそのまま引き戻して切り付けてくる。
剣を振りながらストーンビュレットを放って来る。
おっちゃん凄い。

くるりと回転してかわすと同時に風圧を当てておっちゃんを押し退けて距離を取りその背後からサンダーを発動させる。

おっちゃんが膝をつくとフォローするようにガーゴイルが3体おっちゃんの周囲に現れる。

間髪を入れずにエクスプローションをかけるとガーゴイルとおっちゃんがちりぢりに吹き飛ぶ。

倒れたおっちゃんに剣を突きつける。

「この時期にオールドマスターの完全版の登場って勘弁して欲しいね。悪いが今日はここまで。スタンピードはもう止められないと思うぜ。」

シュっと言っておっちゃんが消えた。

『ジュ』って?使徒ってなんだ?









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